Zairyo-to-Kankyo
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59 巻, 4 号
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展望
解説
  • 上田 隆雄, 宮川 豊章
    2010 年 59 巻 4 号 p. 111-116
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    コンクリート構造物は,塩害や中性化,アルカリ骨材反応といった様々な劣化機構によって,経時的に性能が低下していく.このような構造物を適切に維持管理していくためには,まだ種々の問題があるのが現状である.本稿では,コンクリート構造物の劣化問題を概観するとともに,コンクリート中の鉄筋腐食問題を中心に,今後の維持管理システム構築にあたっての取り組みの現状と,解決すべき問題点を示す.
  • 鳥居 和之
    2010 年 59 巻 4 号 p. 117-120
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    コンクリートのASR膨張によるコンクリート構造物の鉄筋破断の事例が40ほど報告されている.鉄筋破断が発生したコンクリート構造物のリハビリィテーションに関連して,土木技術者は鉄筋破断が発生した構造物の調査診断や維持管理に重大な関心を払ってきている.著者は石川県能登有料道路のASR劣化橋脚の補強工事に長年携わってきた.本稿は鉄筋破断が発生したASR劣化橋脚の実態とその対策の適用例について紹介するものである.
  • 望月 紀保
    2010 年 59 巻 4 号 p. 121-128
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    コンクリート中鉄筋の塩害による腐食防止対策としてカソード防食が適用されている.本稿では,現在適用されている主な通電方式と防食基準,および大気環境下という防食電流の供給が困難な状況下で有効に機能している原因について解説した.
    コンクリート環境下において防食基準をクリアする十分な防食効果が得られているのは,カソード電流の供給による鉄筋表面の環境改善,すなわちpHの上昇および塩化物イオン濃度の減少によって自然腐食速度の低減効果によるところが大きい.
    コンクリート中鉄筋のカソード防食においては,当初防食基準未達であっても,経時的に防食基準を満たすことが十分考えられる.防食の設計および維持管理方法についても経時的な変化も考慮した手法を検討する必要がある.
論文
  • 小林 正人, 西方 篤, 水流 徹
    2010 年 59 巻 4 号 p. 129-135
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    低ひずみ速度引張試験によってアルカリ骨材反応を生じたコンクリート模擬環境での炭素鋼の水素脆化を調べ,破断ひずみ量に及ぼすひずみ速度と水素発生電流の影響を検討した.その結果,十分小さなひずみ速度においてごくわずかな水素発生電流でも破断ひずみ量の低下が起こることが分かった.破断面には水素の影響と思われる擬ヘき開破面が観察された.動的ひずみ下では,最大応力以降の絞り変形が生じている状態で侵入する水素が脆化に最も関与することが分かった.一方で,弾性変形領域や最大応力以前の塑性変形領域で鋼中に侵入した水素は脆化にほとんど影響しないことが確認された.
  • 小林 正人, 西方 篤, 水流 徹
    2010 年 59 巻 4 号 p. 136-142
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    コンクリートのアルカリ骨材反応 (ASR) による鉄筋の破断について,先在する亀裂をVノッチで模擬した試験片を低ひずみ速度試験 (SSRT) により調べた.水素のカソードチャージによって破断ひずみが減少し,破面は外周部から内側に向かって擬へき開,ディンプル,へき開破面の3つの異なる破面からなっていた.水素をチャージしない試料の破面は,ディンプルとへき開破面であった.これらのことから,鉄筋に侵入した水素が擬へき開を引き起こすと考えられる.いずれの場合にも中心部に見られたへき開破面は,試料が破断する直前に起こる急激な変形と破壊によるものである.ASRによる破断試料に見られたような鋭利なスリットを与えた試料に水素をチャージした場合は,ASRで破断した鉄筋と同様の破面構成を示し,鉄筋の水素による脆化が示唆された.
  • 樽井 敏三, 鳥居 和之
    2010 年 59 巻 4 号 p. 143-150
    発行日: 2010/04/15
    公開日: 2010/10/01
    ジャーナル フリー
    ASRによる鉄筋の破断機構を明確にするために,ASRによって破断した鉄筋の詳細な調査を行うとともに鉄筋の遅れ破壊特性,鉄筋の曲げ加工時の応力解析などを調査した.鉄筋のマクロ的な破断形態は,曲げ加工内面側の節付け根部から一次き裂が発生し,曲げ外面側に向かって二次,三次き裂が発生,伝ぱしていた.一次き裂は延性破面,二次,三次き裂はへき開破面であり,擬へき開破面は観察されなかった.また,鉄筋の表面疵,鉄筋内部には粗大な非金属介在物やボイドが散見され,鉄筋健全部のシャルピー吸収エネルギーは低かった.鉄筋曲げ加工部は,曲げ加工によるひずみ時効により表層部硬さが上昇していた.鉄筋の曲げ加工後の残留応力は曲げ加工内面側で引張残留応力であり,特に節付け根部の残留応力が高いことをFEM解析で確認した.定荷重の遅れ破壊試験では,切欠き試験片に0.97 ppmの水素をチャージしても,遅れ破壊が発生しなかった.ASRによる鉄筋破断は,鉄筋の曲げ加工によるひずみ時効硬化および粗大な非金属介在物やボイドに起因する破壊靭性値の低下と曲げ加工による引張残留応力およびASRによる鉄筋への引張応力の増加の要因によって,脆性破壊したものと考えられた.また,脆性破壊説で,二次,三次き裂の発生および伝ぱ挙動の説明が可能であった.
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