日本作物学会紀事
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57 巻, 1 号
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  • 古屋 忠彦, 松本 重男, 嶋 正寛, 村木 清
    1988 年 57 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ダイズの成熟異常個体が発生する過程を明らかにする一環として, 成熟異常個体の出現頻度の高い寒地品種(ナガハジロと刈系73号)と出現頻度の低い暖地品種(オリヒメ)を用い, 地上部諸器宮の成熟および稔実莢の登熟経過について比較調査した. 主茎葉の落葉(成熟)経過についてみると, オリヒメは各葉位で落葉が早く, 収穫期にはすべて落葉した. ナガハジロと刈系73号の成熟異常個体では下位葉の落葉は遅く, 頂葉から2~3枚の葉の落葉が著しく遅延した. 成熟正常個体と成熟異常個体とにおいては, 特に成熟に伴う茎の水分減少経過に差異が認められ, 茎の水分含有率の高い品種ほど葉の落葉が不完全で個体の成熟・枯死も遅延した. また, 稔実莢の登熟経過にも大きな差異が認められた. すなわち, オリヒメでは開花日の異なる各英ともほぼ揃って, 短期間に登熟を完了した. 一方ナガハジロと刈系73号では, いずれの開花日の莢においても莢の登熟日の変異は大きく, 最初の登熟莢の出現から最後の登熟莢まで10~14日も要した. このように成熟正常個体では, 莢実の成熟に伴ってすみやかに地上部諸器官が枯死したのに対して, 成熟異常個体では, 程度の差はあるものの, とくに茎の成熟が遅延したが, 個々の稔実莢の登熟日数は品種本来の登熟期間を示した. 以上の結果から, 今後, 著者らは, 成熟に伴いダイズ構成器宮(葉, 葉柄, 茎, 根, 莢殻, 子実)の成熟が同調的に進行する(オリヒメ)現象を成熟整合, 非同調的に進行する(ナガハジロ, 刈系73号)現象を成熟不整合と呼称する.
  • 川島 長治
    1988 年 57 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    主稈葉数が中程度であるトヨニシキの主稈各要素根の分枝根の生育について検討した. 1. 2・3次根は1次根の伸長終了とほぼ同時ないしその直後に伸長を終了した. 2・3次根の最終の長さは第IX要素根またはそれよりやや下位の要素根でもっとも長く(下位根と上位根, 分枝根の種類によって若干の違いがある), それより上位の要素根では短かった. 2. 細い2次根と大い2次根を合計した2次根数は1次根の基部を離れるにつれて多くなり, ある部位から何cmかにわたって最大値の部分となり, さらにそれより先端寄りでは減少した. 最大値の部分の2次根数は下位根では第VII~第IX要素根でもっとも多く, 上位根では上位要素根ほど多く, その上・下位根間差は上位要素根ほど大きかった. 1次根1本当リ2次根数は第VIII, 第IX要素根付近でもっとも多かった. 1次根長1cm当リ2次根数は下位根では1本当リ2次根数と同様の傾向であったが, 上位根では上位の要素根において多かった. 3. 太い2次根長1cm当り3次根数は下位根, 上位根ともに, 最上位付近の要素根で多かった. 4. 分枝根の直径は最上位付近の要素根で細い傾向があった.
  • 川島 長治
    1988 年 57 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    平均的な要素の分げつである分げつVIIの各要素の分枝根の生育は, 主稈の第IXより上位の要素根間の差の傾向に類似し, 生育のすすんだ段階で発生した分げつほど, より下位の要素根から"より上位要素根的"な生育を示すことがわかった. その根拠となったデータはつぎのとおりである. 1. 伸長を終了した2・3次根の長さは, 分げつVIIでは上位の要素根ほど短い傾向があったが, 分げつ間差は明瞭ではなかった. 2. 細い2次根と太い2次根を合計した2次根数をみると, 分げつVIIでは最大値の部分の2次根数, 1次根1本当りおよび1次根長1cm当リ2次根数ともに, 上位の要素根ほど少ない傾向があった. 分げつ間では, 下位根における最大値の部分の2次根数, 1cm当リ2次根数, および上位根における1本当リ2次根数はV/分VI>IV/分VII>III/分VIIIであり, 上位根における最大値の部分の2次根数および1cm当リ2次根数はV/分VI<IV/分VII<III/分VIIIであった. 3. 太い2次根長1cm当リ3次根数は, 分げつVIIでは上位の要素根で多かった. 分げつ間では, 下位根においてはV/分VI<IV/分VI1<III/分VIIIであったが, 上位根では分げつにより異なった. 4. 分枝根の直径は, 分げつVIIでは上位の要素根で細かった. 分げつ間では, 下位根の2次根においてはV/分VI>IV/分VII>III/分VIIIであったが, その他は分げつにより異なった.
  • 川島 長治
    1988 年 57 巻 1 号 p. 26-36
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲1個体または1株の分枝根を含む根の数, 長さ等の根系形成の推移について検討した. 1. 根の数や長さ等は下位根と上位根により, あるいは分枝根の種類により様々な推移を示したが, 下位根と上位根の, しかも1次根と分枝根の合計の推移はつぎのとおりであった. 出穂期前32日における根系の形成率は, 根数, 長さなどの項目によって若干の違いがあるが主稈で40%前後, 分げつVIIで20%前後であった. 形成率はその後20日余りの間に著しく増加した. 2. 主稈, 分げつVIIともに出穂期の直後には根系形成を終了した. 3. 形成を終了した根系は, 主稈で根数:ほぼ120,000本, 長さ:1,100m, 体積:24cm3, 表面積:3,600cm2であり, 分げつVIIで根数:50,000本, 長さ:460m, 体積:11cm3, 表面積:1,500cm2であり, これらから推定される株当り根系は根数:1,280,000本, 長さ:12,000m, 体積: 270cm3, 表面積:39,000cm2であった. 4. 以上のほか, 各要素根における1次根1本当りの分枝根の数, 長さ, 体積, 表面積の推移, その最終値の要素間差, および全根系に占める1次根, 2次根等の種類別割合を検討した.
  • 川島 長治
    1988 年 57 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    主稈葉数の異なる品種の根系形成について, 第2, 第3要素根に着目して検討した. 1. いずれの品種のいずれの要素根においても, 分枝根は1次根の伸長終了と同時ないしその直後に伸長を終了した. 2. 伸長を終了した分枝根の長さはイシカリで長かった. 3. 1次根1本当リ2次根数はイシカリ>トヨニシキ>レイホウで多かったが, 1次根長1cm当リ2次根数は分枝根の種類, 下位根と上位根により品種間差が異なった. 4. 大い2次根長1cm当リ3次根数はレイホウとトヨニシキの上位根に多かった. 5. 分枝根の直径の品種間差は明瞭ではなかった. 6. 生育を終了した各要素根における1次根1本当り分枝根の数, 長さ, 体積, 表面積はイシカリ>トヨニシキ>レイホウで大であった. 7. 第2と第3要素根を合計した1次根の長さ, すべての分枝根の数, 長さ, 体積, 表面積の推移をみると, イシカリ<トヨニシキ<レイホウの順で出穂期に先立つ日数が多いうちから形成率が高く, 形成を終了する時期が早かった. 最終の値はイシカリ>トヨニシキ>レイホウで大であり, 形成終了末期の新しい根系の割合はこの順で大であった. 8. 根系形成に関して品種間に差の生じた要因, 本研究の結果と各品種の全根系との関係, 分枝根の生育に関して前報と異なる点, 主稈葉数の異なる品種の分枝根の生育の特徴について考察した.
  • 山下 正隆
    1988 年 57 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    本報告では断根強度が根の再生力に及ぼす影響を明らかにするとともに, 最も効果的な処理強度を検討した. 断根処理は9月下旬に行い, 強度は株元からの処理位置を変えることにより処理I(最強:最も株元近く)~V(最弱)の5段階に設定した. 断根処理による根の切除率は全根重の約20%~80%の範囲であった. 地上部に対する処理強度の影響は比較的小さかった. 掘り取り調査時の根を木化根と白色根とに分けると, 木化根重はいずれの処理区も対照区を下回り, 処理間では, I, II区がIII~V区をかなり下回った. これに対し, 白色根重はいずれの処理区も対照区を上回り, 処理間では, III区が最も大きく, I, II区は最も劣った. このような白色根の増加は深耕部すなわち切断部付近だけでなく, 株元部においても顕著であった. この結果, 全根重に占める白色根の比率は対照区に比べて10~20%高まり, III~V区ではT-R率も対照区以下であった. 断根後の根の再生力を比較した結果, 木化根の切断部付近における白色根発生数は太い根ほど多かったが, 単位木化根当りの発生重量はIII区が最も大きく, I, II区が最も小さかった. また, 株元部の白色根についてみた単位木化根重当りの重量も同様な傾向を示した. このような根の再生力の大きさは処理初年目の一番茶生産力とも密接に関係すると思われた. 根群の更新を目的とする断根では, 処理強度も更新効果を左右する要因の一つであり, 十分な効果をえるためには適切な処理強度の選択が必要である.
  • 高橋 肇, 中世古 公男, 後藤 寛治
    1988 年 57 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    外国および日本産品種(1985年12品種, 1986年23品種)を短稈, 長稈品種群に分け, その収量性, 収穫指数の差異を明らかにするとともに, 1986年では登熟期間中における稈の組織構成成分(細胞壁構成物質と細胞内容物質)の消長について比較, 検討した. 短稈品種群は長稈品種群に比べ全乾物重(成熟期)が小さく, 収穫指数が高い傾向を示したが, 両群の子実収量は年次により異なり, 乾燥気味に経過した1985年では全乾物重の大きい長稈品種群が, 播種期が遅く, 湿潤気味に経過した1986年では収穫指数の高い短稈品種群が多収を示した. 乳熟期における稈の乾物重, 細胞壁構成物質重およびその割合は長稈品種群が有意に大きく, いずれも全乾物重(成熟期)と正の相関を示した. 一方, 細胞内容物質重は短稈品種群に高い値を示すものが多く, 全乾物重との間には弱い負の相関が認められた. 細胞壁構成物質は開花直後に最大となり, その後ほとんど変化しなかったが, 細胞内容物質重は乳熟期に最大となり, 成熟期にかけて減少し, 稈に蓄積された貯蔵養分が子実へかなり転流していることが示唆された. 細胞内容物質の変化から, 貯蔵養分の子実生産に対する貢献度を推定したところ, 貯蔵養分の貢献度は全品種を平均すると30.8%であったが, 一般に短稈品種群で高い(33.9%)傾向が認められた.
  • 後藤 雄佐, 星川 清親
    1988 年 57 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    幼穂発達期の水稲(ササニシキ)を青刈りした場合に, 後に出現する高節位分げつ(NS)の特徴について調べた. 前報と同一の材料から, 8月7日(IV), 14日(V), 21日(出穂始め:VI)に青刈りした区を用い茎穂の諸形質を調査した. ほとんどの高節位分げつは, 2~3枚の本葉を展開して出穂した. 3枚の本葉をもつ分げつ(NS[3])は主に低刈り(7.5cm刈り)区に生じ, 穂長, 1次枝梗数, 籾数は本葉2枚の分げつ(NS[2])と同程度であった. 止葉をbL1とすると, NS[2]の葉身長はbL1>bL2で, NS[3]ではbL2>bL1>bL3であった. 止葉節をbN1として, bNnに着生する分げつをbTn(分げつ芽はbTBn)とすると, 出現した分げつはほとんどがbT3かbT4で, 特にNS[3]はすべてがbT4であった. また, bTB2は母茎に刈り残されていてもほとんどが分げつとして出現しなかった. また, 青刈り処理をしない対照区の出穂茎において, bTB1の存在は確認できなかった. 高刈り(15cm刈リ)区では, 青刈り時期に2週間のずれがあっても, 各区のNSが同様に2枚の葉を展開して出穂した. このことから, 出穂期が異なる品種について, 青刈り処理を活用することにより出穂を揃えることが可能と考えられ, 広面積の圃場で, 出穂期の異なる品種を掛け合わせる一代雑種品種の種籾を生産する技術に応用できると推察した.
  • 巽 二郎, 山内 章, 野々山 利博, 河野 恭広
    1988 年 57 巻 1 号 p. 65-70
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物の根の乾物重の測定精度におよぼす土壌の混入の影響を調べるために, ポット栽培した数種のイネ科作物の根を採取して洗浄し, そのサンプル中に混入した土壌の量を灰化法によって測定した. また, 根の洗浄法の違いが土壌の混入に及ぼす影響について検討を加えた。地上部をつけたままで洗浄した場合の根のサンプル中への土壌の混入率は, 登熟期の各作物で63.8%~13.7%, 平均32.8%(乾物重べース)と高い値を示した. また栄養生長期における根のサンプルへの土壌の混入率は5.6~14.3%, 平均9.0%であった. 以上のことより, 根を地上部につけたままの洗浄方法では根のサンプル中へのかなりの土壌の混入が避けられないことが明らかとなった. また土壌の混入率は洗浄するサンプルの根量に左右されることが示唆された. 次に, 洗浄方法について検討した結果, 地上部を切り離して根を短く(2.5cm)切断して洗浄すると混入率が5%以下にまで低下した. しかし根の損失が約33%増加した. 以上より, ポット実験の場合地上部から切り離したのち, 根を短く切断して洗浄し, 更に洗浄による根の損失を防止すれば土壌の混入による誤差を5%程度のレベルにまで抑えることが出来ると推察した. しかし土壌の混入の程度は, 土壌の性質や生育条件などによって変化するので, 実際には根の灰化処理を行ってこの点をチェックする必要があると考える.
  • 杉本 秀樹, 雨宮 昭, 佐藤 亨, 竹之内 篤
    1988 年 57 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水田転換畑で栽培したダイズ(タマホマレ)の生育各期における土壌の過湿処理が, 乾物生産と子実収量に及ぼす影響について調査した. 処理は花芽分化期, 開花期および登熟中期にそれぞれ8-10日間, 畦間に5-8cmの深さに水を溜めて行った. 乾物生産と子実収量に及ぼす過湿処理の影響は, 生育時期が早いほど著しかった. 花芽分化期処理では主茎の伸長, 葉面積の拡大, 乾物重の増加が著しく抑制されるとともに, 莢数, 稔実莢歩合が低下することによって減収した. 開花期処理では, 栄養器官の生長抑制は軽減されたが, 莢数が低下することによって減収した. さらに, 登熟中期処理では, 黄葉期と落葉期が早められた結果, 乾物生産が減少して, 粒重の低下という形で減収した.
  • 杉本 秀樹, 雨宮 昭, 佐藤 亨, 竹之内 篤
    1988 年 57 巻 1 号 p. 77-82
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報の材料で, 生育各期における土壌の過湿処理が, ダイズ(タマホマレ)の出液, 気孔開度ならびに無機成分の吸収に及ぼす影響について調べ, これらと乾物生産, 子実収量との関連について考察した. 出液, 気孔開度ならびに無機成分の吸収に及ぼす過湿処埋の影響は, 処理時期が早いほど著しく, これらの傾向は前報でみられた乾物生産と子実収量に対する処理の影響と同様であった. なかでも花芽分化期のような繁茂度が小さい時期に土壌過湿に遭遇し, その後降水量が少ない場合は, 処理中に発生した新根が障害を受けて湿害のみならず干害をも被り, 被害がさらに大きくなることが明らかとなった. したがって, 生育初期の湿害には十分注意する必要があるし, もし湿害を受けた場合は以後の干ばつを回避するために灌水をすることが肝要と思われる.
  • 中谷 誠, 小柳 敦史, 荻原 英雄, 渡辺 泰
    1988 年 57 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    サツマイモ苗の5-10日間の取り置きが活着, 塊根形成, 収量に及ぼす影響をコガネセンガンと高系14号を用い, ポリエチレンフィルムマルチ栽培で1985-86年の2か年3作期にわたり検討した. 取り置きは約14℃, 相対湿度約80%, 弱光の条件下で行い, 以下の結果を得た. 挿苗直後, 対照区では葉身や茎頂が地表まで垂れ下がっているものが多かったのに対し, 取り置き区では茎や葉柄が立っているものが多く, 挿苗1, 2週間後の展開葉数や蒸散速度はいずれの作期, 品種でも取り置きにより増加した. 塊根形成期ではいずれの作期でも取り置きにより塊根数や塊根乾物重は増加した. また全乾物重や葉面積も増える傾向を示した. 収穫期の上いも収量は取り置きしたものの方が高い値を示した. 1985年には有意な差がなかったが, 1986年には有意な差があり, 上いも数, 上いも1個重とも増加した. 全乾物重や収穫指数も取り置きしたものの方に高い傾向が見られた. 以上から, 5-10日間の苗の取り置きは活着や塊根形成を促す効果を持つことが明らかになった. また, これらの点が全乾物重や収穫指数の向上につながり, 塊根収量の増大をもたらす可能性が強いことも判明した. さらに, 必ずしも増収に結びつかない場合にもサツマイモ栽培の安定性を高める効果が期待できると思われた.
  • 伊藤 浩司, 稲永 忍
    1988 年 57 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ネピアグラス(品種メルケロン)について, 東京及び宮崎における植え付け当年の乾物生産力及び生長パラメーターを比較する目的で実験を行なった. 東京では1985年5月20日, 宮崎では1984年及び1986年の5月1日に苗を植え付け, 多肥条件下で圃場栽培した材料につき, 初霜直前の時期まで, 生長解析を行なった. 栽培終期は, 東京では11月上旬, 宮崎では11月中旬であった. 植物体全乾物重の栽培終期における値は, 東京では39.3t/ha, 宮崎の1984年度では51.8t/ha, 1986年度では40.1t/haであり, 必ずしも常に宮崎の方が高いという傾向はなく, いずれも南九州以北の耕地における各種作物の生産力の最高位値に匹敵する. 6月下旬以前及び9月上旬以後の期間は, 宮崎に比べて東京の方が, 気温及び日射量が低く生産速度も低い. また, 秋の気温低下に伴って生産が殆ど停止する時期は, 東京の方が早い. しかし, 7月上旬から8月下旬にかけては, 両地域の気温はほぼ等しく, 日射量は東京の方が低いにも拘らず, 宮崎の両年度に比べて東京の方が, 葉面積指数の増大速度が高いとともに吸光係数が小さく, 純同化率は高い. そのため, 葉面積指数の増大に伴う個体群生長速度の増加勾配及び最高値はともに東京の方が高くなる. このことは, 東京における, 生産可能期間が短く栽培期間中の気温及び日射量が概して低いことに伴う生産力の低下を, 補償することとなる.
  • 佐藤 暁子, 末永 一博, 高田 寛之, 川口 數美
    1988 年 57 巻 1 号 p. 97-104
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    関東東海地域の4種類の畑土壌で, 2ヵ年, 同一施肥量でコムギ7品種を栽培し, 土壌の種類とコムギの生育・収量との関係を検討した. 生育は, 灰色低地土で最も旺盛であり, 赤色土では初期の茎数増は旺盛であったが, 1月下旬頃から茎数増が停滞し, 葉色が淡くなり始めた. 厚層多腐植黒ボク土と淡色黒ボク土では生育初期から茎数の増加が少なく, 葉数の増加も遅れた. 冬~春先の幼穂・稈の伸長は, 赤色土で早く, 厚層多腐植黒ボク土と淡色黒ボク土では遅かった. 平均収量は, 灰色低地土で649 g/m2と高く, 他の3土壌では500 g/m2以下だった. 赤色土では, 有効茎歩合の低下からくる穂数の不足と一穂粒重の低下, 厚層多腐植黒ボク土と淡色黒ボク土では最高茎数の不足からくる穂数の不足が低収の主な原因だった. 土壌の違いによるコムギの生育及び収量成立経過の差異は, 肥沃度との関係から赤色土では生育途中からの窒素の不足, 厚層多腐植黒ボク土と淡色黒ボク土では, 生育初期からのリン酸の不足からきていると考えられた. また冬~春先の幼穂・稈の伸長程度には, 冬期の地温の土壌間差も影響を与えていると考えられた. 土壌の種類によって多収の得られる品種が異なった. 肥沃な灰色低地土では, 有効茎歩合が50%前後で穂数を確保し, 穂数が多くても倒伏が少なく千粒重・一穂粒重を大きく低下させないアサカゼコムギが収量が高かった. 黒ボク土では, 茎数の増加が旺盛で穂数を確保した農林64号が収量が高かった. また, 赤色土では有意な品種間差が認められなかった.
  • 井上 吉雄
    1988 年 57 巻 1 号 p. 105-111
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物群落における葉身クロロフィル(Chl)濃度を遠隔推定するための基礎として, 数種作物について群落表層葉身群のChl濃度の面的分布および分光反射率の面的分布を解析した. 分光反射特性に基づいたChl濃度推定モデルの作成とその問題点についても検討した. 群落上層に位置する活動中心葉のChl濃度は, ほぼ正規分布に従った(第2図). ドラムスキャナによるカラー写真の光学的濃度解析からみた群落表層葉群の分光反射率は, 視野の取り方によっては2山型の分布となった. 分光反射率の分布は, 実際の葉群のChl濃度の分布特性とは一致しなかった(第3A~B図, 第4A~B図). 写真解析における光学的濃淡の平均値には, 特に葉影の有無が強く影響し, 一枚の葉の中でも角度によって濃度は微妙に変化した(第3C図, 第4C図). 影の部分をできるだけ避けるような視野を選ぶことによって, 平均値とモードの差は改善された(第4D図). トウモロコシとダイズにおいては, 550nmの分光反射率は葉身Chl濃度に対応して最も大きく変動し, 逆に750~1,050nmの反射率は群落のChl濃度に最も影響されなかった. 個葉Chl濃度と分光反射率比ρ850550の間には, トウモロコシでr=0.67, ダイズでr=0.83の相関関係が得られた. ρ850550と実測した葉身Chl濃度の関係は作物によって大きく異なり, 作物間の差には比葉面積(SLA)が強く関係していた(第1表, 第5図).
  • 平沢 正, 飯田 幸彦, 石原 邦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 112-118
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポットで土耕あるいは水耕栽培した水稲を用いて, 葉の水ポテンシャル(以下Ψlという)と空気湿度とをそれぞれ独立に変えて, 拡散伝導度, 光合成速度に対するΨlと飽差の影響を検討した結果, 次の点を明らかにし得た. (1)拡散伝導度, 光合成速度はΨlが約-1.5barから約-5barに低下するに伴って急激に減少し, それぞれ最大値のほぼ25~40%, 50~60%と著しく小さくなった. (2)Ψlが約-5barよりさらに低下するとΨlの低下に伴う拡散伝導度, 光合成速度の減少程度は小さくなった. (3)拡散伝導度, 光合成速度は, Ψlが高い時にはΨlが等しくても飽差が大きいと減少し, 空気湿度はΨlを介さず拡散伝導度, 光合成速度に直接影響した. (4)この空気湿度の直接の影響はΨlの高い葉身ほど大きく, Ψlが-5bar以下に低下すると認められなくなった. これらの結果と拡散伝導度と光合成速度との関係とから, 光合成速度は, Ψlが高く飽差の影響を著しく受けている時には主として気孔を通じての葉内へのCO2供給速度によって規制され,Ψlが低下し拡散伝導度が小さくなっている時には葉肉細胞における光合成系の活性の低下も加わって減少することが推察された.
  • 津野 幸人, 王 余龍
    1988 年 57 巻 1 号 p. 119-131
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    1. 水稲品種, 南京11号, 水原258号, アケノホシ, ヤマビコの4品種を供試し, 最大葉面積指数が5以下で, 穎花数を約4万個/m2確保した状態での穂重増加経過を追跡調査した. これらの品種間にみられる登熟程度の差異と, その原因について解析をおこなった. 2. 登熟程度の良否を粗籾千粒重/精籾千粒重(比重1.06以上)比で表現した. この数値でみるとヤマビコ, 南京11号, 水原258号, アケノホシの順に登熟程度は低下した. 3. 収穫時の粗籾千粒重は, すでに出穂後15日の生籾千粒重と1.0に近い相関係数を示し, 初期に決定されるところの玄米容積に規制されることがわかった. 4. 玄米容積を示す出穂後15日の生籾千粒重は, 出穂後5日の籾の蔗糖含量と高い正の相関(r=0.981)をもち, その糖含量の多少は籾あたりの葉面積および穂軸重でもって説明できた(重相関係数=0.936). 5. 出穂後20~40日間の穂重増加は, 稈・葉鞘部の貯蔵炭水化物量とその期間の光合成量に依存しており, 後者は葉面積/籾に支配されている. 出穂後40日における葉面積/茎と登熟期間の根の呼吸速度の平均値との間にはr=0.953という相関係数が得られた.
  • 〓 才忠, 平沢 正, 石原 邦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 132-138
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲品種の多収性機構や多収穫水稲のもつべき生理生態的諸性質を明らかにするため, 最近育成された多収性品種アケノホシと日本晴を用い, 両品種の収量および乾物生産特性について検討した. アケノホシは日本晴に比べて地上部乾物重が大きく, 1穂穎花数が著しく多いので単位面積当り穎花数も多く, 収量は170kg/10a以上多かった. アケノホシの地上部乾物重が大きい要因を生長解析によって検討したところ, アケノホシの個体群生長速度(CGR)が日本晴に比べてとくに登熟期に大きくなり, この両品種の相違は平均葉面積指数((LAI)^^^-)ではなく, アケノホシの純同化率(NAR)が日本晴より大きいことによってもたらされていることが認められた. NARは主として葉の立体的配列と関連する受光態勢および個体群の葉群を構成する個々の葉の光合成速度とによって規定されるが, 個体群構造, 吸光係数には両品種の間でほとんど相違は認められなかったことから, 両品種のNARの相違は葉の光合成速度にあることが推察された. なお, 収量に影響するもう一つの要因, すなわち, 穂における光合成産物の蓄積過程についてみると, アケノホシは乾物生産が高く穎花数が多くシンクが大きいだけでなく, 穂への光合成産物の蓄積能力が長く持続するのに対し, 日本晴はその能力が早く低下する, いいかえると穂の老化が早いことが認められた.
  • 〓 才忠, 平沢 正, 石原 邦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 139-145
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    前報において, 日本晴と最近育成された多収性品種アケノホシを用いて乾物生産過程を追究し, 日本晴にくらべてアケノホシの乾物生産量が多いことに葉身の光合成速度が関係していることを推察した. 本研究はこの推察の妥当性を検討するために行った. その結果, 展開完了直後の葉身の1日の最大の光合成速度にはアケノホシと日本晴の両品種でほとんど相違はなかったが, 葉身の老化に伴なう光合成速度の低下程度が異なった. すなわち, 展開後日数が経過した葉身の光合成速度および日中の光合成速度はアケノホシで大きく, アケノホシは日本晴に比べて品種の光合成能力(展開完了直後の葉身の最大光合成速度)に近い高い光合成速度を維持していることが認められ, 上述した推察が妥当であることが確かめられた. さらにアケノホシと日本晴のこのような光合成の相違の生ずる要因を根に着目して検討した結果, アケノホシは日本晴に比べて, 蒸散に伴って生ずる受動的吸水能力の指標となる水の通導抵抗が小さく, また能動的吸水能力を表わし根の生理的活性の指標となる出液速度が大きく, とくに両品種の相違は老化した葉身や生育後期に大きいことが認められた. さらにアケノホシの地上部重/地下部重, 葉面積/地下部重はいずれも日本晴に比べて小さく, アケノホシは根がよく発達していた. これらの結果からアケノホシでは根がよく発達するという性質が受動的, 能動的吸水能力を高め, 光合成速度を高く維持していると推察した.
  • 石井 康之, 玖村 敦彦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 146-156
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    水稲個体を構成する個々の茎別にシンクおよびシンク/ソース比形成上の特徴を明らかにする目的で本研究を実施した. 日本晴を1/2,000aポットで土耕し, 穂揃期の穂について, 1・2次枝梗と穎花の着生数と退化痕跡数を調べ, 枝梗・穎花の分化数と退化数を推定した. 出穂時の穎花数から"茎の強勢度"の順位づけを行い, これと調査結果との関連を検討して次の結果をえた. (i)穂当たり分化穎花数は茎の強勢度の低下に伴い減少した. この主因は2次枝梗をもつ1次枝梗の減少と1次枝梗当たりの2次枝梗の減少であった. (ii)分化穎花数に対する退化穎花数の割合は茎の強勢度の低下とともに増加した. 退化穎花の主要なものは茎の強勢度に対応して変化した. すなわち, 強勢な茎では2次枝梗とともに退化するもの, 弱勢な茎では1次枝梗とともに退化するものが主要なものであった. (iii)茎の強勢度の低下とともに生存穎花中2次枝梗に着生するものの割合が減少した. (iv)分化穎花数/出穂期葉面積比は茎の強勢度の低-下とともに顕著に増加した. しかし弱勢な茎では高率の退化が起こるため出穂期には生存穎花数/葉面積比が茎の強勢度にかかわらずほぼ同一となった.
  • 石井 康之, 玖村 敦彦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 157-162
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    第1報の材料のうち強勢度順位1, 5, 9の茎を用い, 枝梗・穎花の発育の様相を個々の1次枝梗ごとにその着生位置を考慮しつつ検討し次の結果をえた. (i) 茎の強勢度が低いほど1穂当たりの1次枝梗数と1次枝梗当たりの分化穎花数が少なく, このことが1穂当たり分化穎花数の減少をもたらした. (ii) すべての茎において, 1次枝梗, 生存1次枝梗上の2次枝梗, 生存2次枝梗上の穎花原基, 生存1次枝梗に直接着生する穎花原基およびひとつの1次枝梗上の全穎花原基の退化率は基部1次枝梗で最大で穂軸上における1次枝梗の着生位置が上昇するにつれて低下した. (iii) 対応する着生位置の1次枝梗を比較した場合, 茎の強勢度が低いほど1次枝梗と生存2次枝梗上の穎花原基の退化率は高かった. これに対し, 生存1次枝梗上の2次枝梗, 生存1次枝梗に直接着生する穎花の原基およびひとつの1次枝梗上の全穎花原基の退化率は茎の強勢度のいかんにかかわらず等しかった. しかし, 弱勢な茎では上位の1次枝梗-ここでは枝梗や穎花原基の退化がほとんど起こらない-が少ないため, 穂全体についての退化率は後3者のそれも弱勢な茎で高かった. (iv) 茎の強勢度の低下につれて全生存穎花に対する2次枝梗上の生存穎花の割合が各位置の1次枝梗でほぼ均等に低下した.
  • 山内 章, 河野 恭広, 巽 二郎, 稲垣 憲孝
    1988 年 57 巻 1 号 p. 163-173
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    カワムギ, ハダカムギ, コムギ, ライムギ, エンバクを湛水・湿潤・乾燥の土壌水分条件下で播種後7週間目から成熟期まで生育させた. そして, それらの生育, 乾物生産および蒸散係数の結果から, 耐湿性・耐早性の作物間差異を比較, 検討した. 生育は, いずれの作物においても, 湿潤条件下に比べ湛水および乾燥条件下で抑制されたが, 抑制程度は作物によって異なっていた. 乾物生産では, ハダカムギ, コムギ, ライムギ, エンバクは湛水条件下より乾燥条件下で, 逆にカワムギでは乾燥条件下より湛水条件下でより多く乾物を生産した. そこで, 前者を耐早性程度が耐湿性程度より大きい作物, 後者を耐湿性程度が耐早性程度より大きい作物とした. また, 湛水条件下または乾燥条件下における蒸散係数の, 湿潤条件下での蒸散係数に対する比が1に近いか, あるいはそれ以下になる場合, その作物は, それぞれ湛水または乾燥条件に対して安定であり, その比が1を上回るほど感受性が高いと考えた. その結果, 各作物は一様に乾燥条件に対して安定していたが, 湛水条件に対しては顕著な作物間差が認められた. 耐早性程度が耐湿性程度より大きいとした作物の中で, ライムギ, エンバクは湛水条件に対して著しく感受性が高く, またハダカムギ, コムギは比較的感受性が高かった. 一方, 耐湿性程度が耐早性程度より大きいとしたカワムギは, 湛水条件に対し安定していることが示された. これらの作物の耐湿性・耐早性を, 各土壌水分条件下での節根発生能力, 根系の生長・水分吸収力との関連で議論した.
  • 山内 章, 河野 恭広, 巽 二郎
    1988 年 57 巻 1 号 p. 174-183
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    イネ科作物の中で, 耐湿性程度の大きい陸稲(農林11号)と, 耐早性程度の大きいトウモロコシ(ゴールデンクロスバンタム)を, 湿潤(M区), 乾燥(D区), 湛水(W区)の土壌水分条件下で, 幼植物期から出穂期まで生育させ, その生長を生長解析によって比較, 検討した. 乾物量, RGRの推移によって, 両種の生長を比較すると, 陸稲は乾燥条件下よりも湛水条件下で比較的良い生育を示し, トウモロコシではその逆の傾向を示した. 陸稲のRGRの土壌水分条件による差異は, NARとLARの両方に, トウモロコシでは主にNARの差異によく一致した. そこでNARと関係の深い葉身中の窒素濃度を調べたところ, 両種のNAR, そしてRGRとの間に密接な関係が認められた. また, 根の機能を反映していると考えられる, 各個体の葉身の窒素含量の根数に対する比とNARを比較すると, それらは両種ともよく一致した. さらに根のRGRとNARとの間にも密接な関係が認められた. 以上の結果は, 陸稲とトウモロコシが湛水・乾燥条件下で示した特徴的な生長反応は, 両種の耐湿性・耐早性程度の違いをよく反映しており, そして, その生長反応は, 根の機能・生長に強く依存していることを示している.
  • 谷山 鉄郎, .スバイヤ S.V., ナラシマ・ラオ M.L., 池田 勝彦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 184-190
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    津野によって考案された簡易光合成測定法をインド, ハイデラバード地方における栽培水稲の光合成測定に応用した. 実験材料には, Vijayamahsuri, Sonamahsuri, Basmati, HR 59およびHR 35を用いた. Vijayamahsuriはアンドラプラデッシュ州の, またSonamahsuriはインド国立稲作総合研究所の奨励品種である. 香り米のBasmatiは市場価格も高く, アラブ諸国への輸出用として栽培されている. これらの栽培品種はインド・デカン高原で手植えの慣行法で栽培されていた. 光合成測定には, 慣行法で栽培されていた水稲の完全展開の葉身中央部約12cm2を用いた. 光源は自然光とし, 光合成測定と共に葉緑素含量も測定した. CO2飽和水を用いた温度-光合成曲線より最適温度は日本型水稲と同じ38℃であった. 改良品種のSonamahsuriとVijayamahsuriは在来品種のBasmatiに比較して光合成速度が高かった. また, 改艮品種は弱光域における光利用効率が高かった. 光飽和点は改良および在来品種ともに約20 klxであった. CO2飽和水の交換によって, 光合成速度は再び高い値を示した. 各葉位の光合成速度は葉緑素含量と密接な関係にあった. また, 光合成速度と葉緑素含量との間には高い正の相関関係が見られた. 簡易光合成測定法は, 簡便で, 安価で, しかも測定精度が高く, 現場で容易に適用しうることから, 赤外線ガス分析計等の測器の整備困難な事情のもとでの測定法として大いに役立つものと思われる.
  • ラディ サイド・ハッサン, 前田 英三
    1988 年 57 巻 1 号 p. 191-198
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    二培地法により, イネ分離根を培養した. 胚盤培地に12.5%の蔗糖を, 根培地にMS無機塩の1/4濃度を入れ, それぞれの培地にブラシノライドを添加した. ブラシノライド(10-8 M)を胚盤培地に加えたとき分離根の生長が促進されたが, 根培地に加えたときには阻害作用が見られた. ブラシノライドとフィガロンを共に胚盤培地に加えた場合, 種子根の生長は阻害されたが, 側根の生長は促進された. ブラシノライドとジベレリン酸を胚盤培地に混用したときには, フィガロンと混用した場合の如き阻害作用は観察されなかった.
  • 桂 直樹, 小泉 美香, 狩野 広美, 稲田 勝美
    1988 年 57 巻 1 号 p. 199-204
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    作物葉に含まれる光合成単位の量(P700量)は, 炭酸固定に心要な還元力(NADPH2)と高エネルギー化合物(ATP)の供給能力を, 光合成単位のサイズ(クロロフィル/P700比)は, 集光効率を示すと考えられる. 慣行的なP700の定量法は, クロロプラス卜を分離してP700の酸化還元差スペクトルを測定するため手順が複雑で, 測定時間が長く品種選抜に適用するためには不都合である. そこで本研究では, 閃光分光分析器を新たに開発し, 生葉片を用いて励起光照射によって703 nmに誘起されるP700の吸光度変化を非破壊的に測定してP700の含量を定量した. この手法で求められたP700の含量は, 慣行的化学的手法で求めた値とよく一致し, 測定に必要な時間が顕著に短縮された. さらに, クロロフィルa/b比の高い作物葉は, 光合成単位のサイズ(クロロフィル/P700比)が小さいことが明らかとなった.
  • 谷山 鉄郎, スバイヤキ S.V., ナラシマ・ラオ M.L., 池田 勝彦
    1988 年 57 巻 1 号 p. 205-210
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    調査には改良品種のVijayamahsuriとSonamahsuri, 在来品種の香り米のBasmatiおよびHR 59を用いた. また, 慣行法田植で深植(8.1cm)されたBasmatiを2.3cmの深さに植え直し, 両者の生育についても比較を行った. 改良および在来品種の草型や光の群落内への透過の状態について, 生産構造図を作成し, 検討した. 葉, 茎および根の乾物重はVijayamahsuriが他の3品種よりもすぐれ, LAIも改良品種のVijayamahsuri, Sonamahsuriの方が在来品種のBasmatiやHR 59よりも高い値を示した. Basmatiの浅植えでは, 各器官の乾物重やLAIが深植えに比較して大きかった. VijayamahsuriとSonamahsuriの吸光係数はともにK=0.29で短稈であり草型も日本型に類似していた. 在来品種の草丈は1m以上に達したがLAIは小さく, 群落内への光の透過は良好であったが, 節間が長く倒伏しやすい形態を示した. また, 根系の発達では, 浅植えした場合, 地中茎からの節根の発生は見られなかった. VijayamahsuriやSonamahsuriは根群の発達が良好で, かつ健全であり, そのために, 光合成速度および気孔開度がBasmatiやHR 59に比較して高かったものと考えられる.
  • 国分 牧衛, WARDLAW Ian F.
    1988 年 57 巻 1 号 p. 211-219
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    多様な温度環境に自生する大豆近縁野生種(Glycine属)を9/4~36/31℃(昼/夜)で育て, その温度に対する適応の特徴を栽培種(G.max)と比較した. 発芽の最適温度はG.maxとG.tomentellaでは約30℃, G.argyreaでは約22℃, G.clndestinaでは約20℃であった. 葉面積当りのみかけの光合成速度(NCE)に対する最適生育温度は18/13-30/25℃(昼/夜)の範囲にあり, この範囲内でのNCEの変動は小さかった. 最適生育温度(27/22℃)から順次低温に馴化させた場合, 9/4℃において大部分の種はNCEが0に低下したが, G.clandestinaはかなりの光合成速度を維持した. G.clandestina, G.latrobeanaおよびG.tomentellaは, 低温下では他い種よりも葉中により多くの澱粉を蓄積した. RGRの最適温度は30/25-33/28℃にあり, RGRは種および生育温度間においてNARよりもRLAGRとより密接な相関々係にあった. 熱帯に自生するG.tomentellaは高温でのRLAGRの低下が少なく, そのためRGRも比較的高く維持された. 冷涼な地帯に自生するG.clandestinaとG.latrobeanaは生育温度が低い場合, R/T比, SLWおよびクロロフィル含量を著しく高め, NCEの低下を最小にする傾向がみられた. これに対してG.maxは広い温度範囲において, NCEを犠牲にしながらも葉面の生長を優先させ, 後者に強く依存する生育速度を最大にする傾向が顕著であった.
  • プレマチャンドラ ニヤ-ナシリ. S., 嶋田 徹
    1988 年 57 巻 1 号 p. 220-224
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    小麦切除葉の水分保持能の遺伝的差異に関する知見を得るため春小麦と冬小麦それぞれ12品種, およびHoroshiri×CI-14106のF5の100系統, Chihoku×ValujerskajaのF4の70系統とChihoku×PI-173438のF4の70系統を供試し, 次の結果を得た. (1)切除葉の水分保持能の品種間差異は切除時の葉水分に対し11%から33%に低下する時点で明瞭に観察された. (2)水分保持能は低水分含有葉で高く, 冬期間生育した小麦は夏期間のものより高くなる傾向にあった. また対乾燥ハードニングにより葉水分保持能は強化される. (3)3栽培種の交配後世代系統の切除葉の水分保持能の変異分布から, 水分保持能はポリジーンによる量的遺伝形質であることが明らかとなった.
  • 遠山 益, 日比 佐知子
    1988 年 57 巻 1 号 p. 225-233
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    葉緑体の光酸化に関する研究は, ある種の除草剤処理によって誘発されたカロチノイド欠損幼植物を用いて行なわれてきた. 本研究は, 正常なイネの幼植物の葉緑体が光酸化を受けるとき, 光合成色素量と微細構造との変化に注目して行なわれた. 16.2W/m2, 23℃で18日間育てたイネの幼植物を162W/m2,23℃に連続暴露すると, カロチノイド色素が正常に含まれていても, クロロフィル含有量は減少を続け, 5日後には当初の量の半分に減少した. しかし, カロチノイド含有量はこの強光暴露を通して有意な変化を示さなかった. 12hの明暗周期の下で, 同じイネの幼植物を162W/m2に暴露すると, 第1日目は光酸化によってクロロフィル量がかなり減少したが, 第2日目の減少量はわずかで, 第3日目ではクロロフィルの光酸化は認められなかった. このように, 明暗周期下におくと, イネの幼植物は強光暴露に対して次第に馴化するようにみえる. 他方, 光酸化による葉緑体の微細構造的障害が電子顕微鏡によって観察された. RuBPカルボキシラーゼの結晶の出現, チラコイド膜の膨潤, およびグラナチラコイド膜(GM)の障害とプラスト顆粒(PG)の生成が特徴的な変化であった. とくに, GMの構成分が分解遊離するためグラナ部の電子密度が異常に増大する. これらの物質は膜間を移動してPGに結集するようにみえ, そのため光酸化の進行とともにPGは数・量ともに増大すると思われる. 幼植物を朝から野外で太陽光にさらすと, GMは光酸化によって一時的に上記のような障害を受け, PGは増加する. しかし, 夜間にはその障害が癒えるようにみえた.
  • 佐竹 徹夫, 李 善龍, 小池 説夫, 刈屋 国男
    1988 年 57 巻 1 号 p. 234-241
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    ポットで土耕栽培のイネを, 頴花分化期から小胞子初期までの期間(前歴期間)ファイトトロン自然光室(昼24/夜19℃)内で水温と水深を変えて栽培し, 小胞子初期に冷温処理(12℃3日間)を行って耐冷性を検定した. 小胞子初期のイネの耐冷性は前歴水管理によって大きく変動し, 水温25℃までは水温を高くするほど, 水深10cmまでは水深を深くするほど, 耐冷性が向上した. つぎにファイトトロン内のきびしい冷温条件(前歴期間の気温18℃, 水温21℃, および小胞子初期5日間の気温15℃, 水温18℃)の下で, 深水灌漑による冷害防止効果を実験した. 前歴期間10cmの深水灌漑を行うと小胞子初期の冷気温による減収が著しく軽減され, その効果は従来から唱導されてきた危険期20cmの深水灌漑のそれよりも大きかった. また前歴深水と危険期深水を組合せた場合の冷害防止効果は, 相加的ではなく相乗的であった. 以上の結果に基づき, 冷害防止のための新しい水管理法として, 頴花分化期から小胞子初期までの期間における10cmの深水灌漑を提唱した.
  • 今井 勝
    1988 年 57 巻 1 号 p. 242-245
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
    糸状菌に対して広範な抗菌スペクトルを示すグアザチンの酢酸塩(1,1'-iminodi [octamethylene] diguanidium triacetate, 商品名ベフラン(R))がコムギの収量を高めるという情報を基に, 人工光ファイトトロン中で栽培したコムギにその水溶液を噴霧して, 生育, 穂重・粒重, 光合成・蒸散に及ぼす影響を検討した. グアザチン0.025及び0.25%水溶液噴霧施用は幼植物の生育を促進したが, 根に対する効果はなかった. 穂ばらみ期の施用は1穂重を25-27%高めたが, それは主として1穂粒数の増加に基いていた. 開花期以降の施用は1穂重を20%高めたが, それは1粒重の増加のみに基いていた. 幼植物期及び開花期の葉の光合成速度はグアザチン施用により8-16%促進されたが, 蒸散に対する効果はほとんどなく, 結果的に水利用効率が最大15%改善された.
  • 山崎 耕宇, 阿部 淳
    1988 年 57 巻 1 号 p. 246-247
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
  • 鳥越 洋一
    1988 年 57 巻 1 号 p. 248-249
    発行日: 1988/03/05
    公開日: 2008/02/14
    ジャーナル フリー
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