日本臨床麻酔学会誌
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29 巻, 1 号
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日本臨床麻酔学会第27回大会 シンポジウム—神経筋接合部を意識した筋弛緩投与法とモニタリング—
  • 岩崎 寛
    2009 年 29 巻 1 号 p. 1
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
  • 笹川 智貴, 岩崎 寛
    2009 年 29 巻 1 号 p. 2-14
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      プロポフォールやフェンタニル, レミフェンタニルなどの静脈麻酔薬が, TCIの使用によりその効果部位濃度を意識して投与されるようになり, コントロールが容易になった中, 筋弛緩薬に対して同様の意識をもって投与する者は少ない. ベクロニウムにおいて, 理論上TCIは十分可能であるが, その際障害になるのはその代謝産物3-desacetyl vecuroniumの存在である. 3-desacetyl vecuroniumはベクロニウムの80%の力価をもち, その薬物動態も考慮しなければ一定の筋弛緩効果を得ることは難しい. この代謝物を無視したTCIは実際の濃度と大きな差異を生じ, 覚醒遅延を引き起こす原因になりうる. ロクロニウムはこのような薬理活性をもつ代謝物を産生せず, よりTCIに適した薬物であるといえる.
  • 白石 義人
    2009 年 29 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      筋弛緩薬の効果判定モニタリングのスタンダードはTOF (train of four) である. 神経筋接合部とアセチルコリン作動性ニコチン受容体に影響を与える薬物は多く知られている. 2007年より使用が開始されたロクロニウムは作用発現時間が短いことが特徴である. 筋弛緩薬の拮抗はこれまでは, 抗コリンエステラーゼによって神経伝達物質であるアセチルコリンの濃度を上昇させて, 間接的に筋収縮力の回復を図るものであった. しかし近い将来, シクロデキストリン (スガマデクス) の登場により, ステロイド骨格をもつ非脱分極性筋弛緩薬は効果的に血漿濃度を減少させる. この合成物は水溶性で, 疎水性の内腔をもち, 筋弛緩薬 (特にロクロニウム) と錯体を形成 (包摂現象) する. 神経筋接合部に影響する因子として, 非脱分極性筋弛緩薬同士あるいは脱分極性筋弛緩薬との相互作用, 吸入麻酔薬, 抗生物質, 局所麻酔薬, 利尿薬, 抗痙攣薬, リチウム, 電解質などがあげられ, 広い意味では体温も影響する. その他, ガンタクリウムは非脱分極性筋弛緩薬であるが, 作用発現時間, 持続時間ともに短時間であり, 将来有望である.
  • 成松 英智, 新谷 知久, 並木 昭義
    2009 年 29 巻 1 号 p. 23-34
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      筋弛緩状態評価を行う際には, 神経筋病態が筋弛緩モニター情報に及ぼす影響を考慮する必要がある. 重症筋無力症やLambert-Eaton症候群等の神経筋接合部疾患では, 神経筋伝達機能低下のため筋弛緩薬の作用が増強される. Duchenne型筋ジストロフィーや筋緊張性ジストロフィー等の筋疾患や敗血症病態では筋線維のみならず神経筋接合部も障害されることがあり, 筋弛緩薬の作用増強がみられることがある. また筋収縮力が微弱な場合, 単収縮が長時間持続する場合, 興奮収縮連関に異常がある場合も, 筋弛緩モニター情報が不正確になることがある.
講座
  • 有田 英子, 小川 節郎, 花岡 一雄
    2009 年 29 巻 1 号 p. 35-42
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      痛みは主観的な感覚であり, その測定・評価は難しい. 痛みの強さの測定についても, visual analogue scale (VAS) など, これまでにいくつかの評価法が提示されているが, いずれも主観的な測定法であった. この度, 患者がもつ痛みを, 痛みを伴わない異種感覚に置き換えて定量評価する知覚・痛覚定量分析装置が考案された. これにより, より客観的に痛みの強さを測定することができ, 患者間の痛みの強さや, ある患者の長期にわたる痛みの強さの比較・検討が可能になると考える. VASと比較した臨床データの一部を提示する.
  • 国沢 卓之
    2009 年 29 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      超音波診断装置が広く普及し, 超音波 (US) を利用した中心静脈穿刺を行える環境が整った施設も増えてきた. USガイド下中心静脈カテーテル (CVC) 留置は, エビデンスに基づいて強く推奨されているが, 利用するにはその習得が必要である. USがもたらす恩恵は大きく, 患者の安全に貢献できるが, 誤った使用が合併症を引き起こす可能性もある. 本稿ではUSガイド下CVC留置のコツと落とし穴を解説し, US利用開始のきっかけや, US習得の手助けになるとよいと考える.
  • 柏崎 美保, 加藤 実, 小川 節郎
    2009 年 29 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      脳神経外科開頭手術を行う際, 病変が言語野・運動野などの機能野またはその近傍に存在する場合, awake craniotomyが選択されることがある. このawake craniotomyは脳の機能を温存するという点では有用であるが, 術中, 重大な合併症が起こる可能性があり, 患者側からすれば多くの苦痛やストレスを伴う. 麻酔科医としては, 手術の適応を脳外科医とともに十分検討し, 麻酔管理法および術中起こりえる合併症の対策を念入りに計画する必要がある. 麻酔管理に関しては各施設でさまざまな工夫が紹介されている. 麻酔管理上のポイント, 当院で施行している方法について述べる.
原著論文
  • 鈴木 昭広, 山本 邦彦, 山本 純子, 阿部 展子, 三田村・南・小百合 , 岩崎 寛
    2009 年 29 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      顔面・頭部外傷の際, 気管挿管時に頸椎への負担を軽減する目的で行われる用手的頸部正中位固定 (manual in-line neck stabilization: MILNS) が, エアウェイスコープ® (AWS) による気管挿管に与える影響を60人の予定手術患者で調査した. MILNSによりマッキントッシュ型喉頭鏡では喉頭展開所見が有意に悪化したが, AWSでは全例でCormack grade 1の所見であった. 気管挿管に要した時間は平均27秒で, 挿管の難易度を示すIntubation Difficulty Scaleは全例で0点と容易な挿管が行えた. AWSを用いる場合, MILNS操作は後屈と開口を制限するため通常のAWSの挿管操作よりもブレード挿入に時間を要するものの, 良好な喉頭所見を得たうえで容易な挿管ができることが明らかとなった.
症例報告
  • 徳嶺 譲芳, 照屋 孝二, 比嘉 達也, 渕上 竜也, 須加原 一博
    2009 年 29 巻 1 号 p. 61-64
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      狭心症の精査のため行った冠動脈造影に使用した造影剤により急性腎不全を起こし, さらにうっ血性心不全となった患者に, 中心静脈路および急性血液浄化のためのブラッドアクセスを超音波ガイド下に確保した. 起坐呼吸のため内頸静脈の穿刺体位は, 約45° の頭高位で行わざるをえなく, 空気塞栓が懸念されたが, 超音波診断装置を用いて内頸静脈が約45° の頭高位でも著明に拡張し, 吸気時の血管虚脱もなかったことを確認後, 安全にラインを確保できた. 頭低位になれない患者でも, 超音波ガイド下で安全に内頸静脈穿刺を行えることがあり, 中心静脈の穿刺困難が予想される患者では, 超音波ガイド下穿刺を行うことが安全管理のうえで重要である.
  • 桑原 淳, 椎名 恭子, 伊勢崎 尋美, 石川 むつ子, 森岡 宣伊, 尾崎 眞
    2009 年 29 巻 1 号 p. 65-68
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      症例は1歳, 男児. 赤飯を食べさせた際咳き込み, その後喘鳴出現. 胸部X線写真, CTにて気管支異物と診断され異物除去術施行となった. チオペンタール, セボフルランにて導入. 術中は筋弛緩薬を投与し, 調節呼吸下に管理した. 3.1mm気管支ファイバーを用いた吸引操作にて異物除去に成功した. 摘出異物は硬く, 関東の赤飯に入れられることの多い「ささげ豆」であった. 術後肺炎症状, 炎症所見を認めず3病日で退院した. 一般的に気管異物除去時には, 自発呼吸を残したまま管理することが推奨されている. しかし気管支鏡操作時のバッキング等が出現してしまう危険性があり, われわれは筋弛緩薬を用い, 調節呼吸下に管理し良好な結果を得た.
  • 谷瀬 智美, 福崎 誠, 田邉 孝大, 一ノ宮 大雅, 三浦 耕資, 寺尾 嘉彰
    2009 年 29 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      悪性高熱症 (MH) の3家系を経験した. A家系: 35歳, 男性. MHの既往歴あり. 上腕骨骨折手術を全静脈麻酔で行った. 患者と父親にCICR速度亢進とRYR1遺伝子変異, 弟らにも同様の変異を認めた. 弟の娘の鼠径ヘルニア根治術も全静脈麻酔で行った. B家系: 66歳, 男性. MHの既往歴あり. 腰部椎間板ヘルニア手術を脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔で行った. 患者と長男にCICR速度亢進を認めた. C家系: 75歳, 男性. MHで死亡の家族歴あり. CICR速度の亢進は患者では認めず, 妻, 次女らに認めた. S状結腸癌手術は全静脈麻酔で行った. MH素因者には診断確定が望まれ, MH患者に準じた麻酔を行うべきである.
短報
第14回硬膜外麻酔研究会
  • 眞下 節, 高橋 亜矢子
    2009 年 29 巻 1 号 p. 78-84
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      全身麻酔は意識消失, 不動化, 鎮痛などさまざまな要素が組み合わさった現象である. 近年の麻酔メカニズム研究では, 麻酔薬は神経細胞表面の受容体蛋白質に作用し, その効果を発揮すると考えられている. 神経細胞にはさまざまな受容体蛋白質が存在するが, その中でも特にGABAA受容体は麻酔メカニズム研究の中心的存在である. 最近, GABAA受容体を介する抑制性電流にはPhasic電流とTonic電流の2種類が存在することが明らかにされ, 特にTonic電流は麻酔メカニズムの新しいターゲットとして非常に注目を浴びている. 本稿では, Tonic電流を含むGABAA受容体を中心とした麻酔メカニズム研究の新しい知見についてまとめる.
  • 村川 和重, 森山 萬秀, 柳本 富士雄, 中野 範, 福永 智栄
    2009 年 29 巻 1 号 p. 85-92
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      硬膜外脊髄刺激療法 (SCS) の鎮痛作用は, 侵害受容には影響を及ぼさず, 神経障害性および虚血による痛みに有効である. また, SCSによる鎮痛作用が発揮されるには, 後索から神経根線維への逆行性の賦活化が必要であり, これらの神経伝導路が温存されていることが不可欠である. SCSが有効な神経障害性疼痛は, 末梢神経および神経根の病変であり, 外傷後, 糖尿病性, 神経根の引き抜きを伴わない神経叢損傷, PHNやFBSSなどの神経根障害などが原因となる場合である. SCSに伴う合併症の発現頻度は, 同様な有効性が想定される治療法のなかではきわめて低く, システムの除去により治療の中断が可能であり, 破壊的な手段に先んじて考慮すべき治療法と位置づけられる.
  • 土井 克史
    2009 年 29 巻 1 号 p. 93-98
    発行日: 2009/01/15
    公開日: 2009/02/07
    ジャーナル フリー
      近年, 超音波ガイド法の神経ブロックへの応用が普及してきた. 硬膜外麻酔では脊柱の存在が超音波の応用を困難にしているが, 小児患者の場合は, かなり鮮明な画像が得られてきた. 超音波ガイド下神経ブロックには, 診断装置の知識, 超音波解剖学の知識などが必要である. また腰部硬膜外麻酔と仙骨硬膜外麻酔ともに, まず施行前に脊椎の構造を確認して, 穿刺部位, 針の方向, 深さを確認することが重要である. また, 穿刺時に硬膜外腔に注入された薬液やカテーテル走行の確認も可能である. 超音波ガイドによって, より安全な硬膜外麻酔が施行できる.
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