日本蚕糸学雑誌
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25 巻, 4 号
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  • 蠕動誘発物質の検索
    川瀬 茂実
    1956 年 25 巻 4 号 p. 257-262
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕蛾の血液中に, 卵管の蠕動を誘発する物質が存在することは福田によつて報告されていたが, その物質の本体についての検索を行なつた.
    1) 卵管の蠕動を誘発する物質として, Ca..にその作用があることが判明した.
    2)Ca以外の多くの塩類及び2, 3の有機物質について調査したが, Ca..に代るべきものはないことが判つた.
    3)蠕動作用は25~30℃の範囲で最も強く, 35℃, 15℃ で弱く, 10℃, 40℃では極めて微弱であり, 5℃以下及び40℃以上では殆んど起らない.
    4) 蠕動作用はCa..単独でもたらされ, Mg..は抑制的に, K.もやや抑制的に作用する.
    5)Ca..の濃度と蠕動作用との関係は, 0.1M NaCl50ml中に0.1MCaCl2を加えてゆくと0.02~0.8mlの添加で漸進的に増大し, 以後Caを増量しても蠕動作用は増大しない. また0.1MKCl中では, 0.1~1.6mlの添加で次第に増大し, 以後Caを増量しても増大しない.
  • 河合 孝
    1956 年 25 巻 4 号 p. 263-267
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    洗落用水の温度並びに洗落後の冷蔵温度の孵化に及ぼす影響並びに洗落時期と孵化の良否との関係を推計学的に検討するため紹興油と支122号とを用い用水温 (2.5°と20.0℃) と冷蔵温度 (2.5°と5.0℃) とを組合せて12月末より3月上旬までの間種々なる時期に洗落を行ない要因実験法を用いて調べた結果は次の通りである.
    1) 両品種共に洗落用水温及び冷蔵温度の二要因による孵化不良の程度に有意な差が認められ, かかる結果をもたらすものとして低温 (2.5℃) の水による洗落操作の主効果が最大で有意の圏内にあり, 冷蔵温度の主効果は有意性を有していなかつた.
    2) 洗落時期の差による孵化不良の程度の差は支122号では有意性は認められたが (1%) 紹興油では認められなかつた. 然し有意性はないまでも紹興油でも時期によりかなりの差が見られた.
  • 戸谷 和夫
    1956 年 25 巻 4 号 p. 268-272
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 単式冷蔵期間が長期に渉つた場合の孵化状態を観察し, 不孵化卵の解剖を行い, 胚子の致死階程を調査した.
    2) 孵化歩合は7月, 8月, 9月, 10月までと冷蔵期間が長期に渉るに従つて激減し, 10月, には支115号の1%を除いて他品種は殆んど或は全く孵化しない. 又, 冷蔵期間が長くなる程催青死卵が減つて潰死卵が多くなつた.
    3) 7月に出庫催青した旭光, 支115号, 雪花, 万華の4品種の不孵化卵を剖検したところ大部分の胚子が点青期以後まで発育し, しかも, 不反転の畸形胚子を多数見出した.
    4) 支115号の蚕種を7~10月の各月に出庫催青した場合に生じた不孵化卵を剖検し, 胚子の致死階程を調査したが, 大部分は剛毛発生前期から催青期まで発育していた.
    不反転の畸形胚子は7月出庫で11%, 8月出庫で43%, 9月出庫で68%と漸増し, 10月出庫では86%の多きに達した. 畸形の程度にも蟻蚕体を完成しながらたゞ反転し得ない軽度のものから甚だしい異常を呈する強度のものまでがあり, 冷蔵日数が長い即ち出庫の遅れる場合程畸形の程度も著しく, 10月出庫の不孵化卵には第10体節以後が強度に異常を呈した胚子が多く見られた.
  • 佐藤 広, 高見 丈夫, 北沢 敏男
    1956 年 25 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • 倉沢 恒夫
    1956 年 25 巻 4 号 p. 279-282
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 初秋蚕は5齢中に1個体は約7.0gの水分をとり5.3gの水分を排出する. このうち絹糸腺より脱水された水分は約1.2gであつた.
    2) 5齢期の絹糸腺の水分は5齢期間6日を要する初秋蚕において3~4日目に最大の増加量を示しその後熟蚕までは次第に減少する.
    3) 1個体当りの絹糸腺を除外した蚕体水分量は5齢期間中に次第に増加するが, 熟蚕期に急に減少する.
    4) 1個体当りの排出水分量は次第に増加し熟蚕期に最大となる.
    5) 5齢期間中の液状絹のセリシンとフイブロインの量を毎日測定し, 分泌時の水分量に換算した数字より実測値を減じて液状絹より脱水されることを証明した.
    6) これらより4~5日目より急激に増加する絹糸腺よりの脱水分は血液に入り糞や蒸散作用によつて体外に排出されることを知つた.
  • 西村 国男
    1956 年 25 巻 4 号 p. 283-286
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕の蛹期中に一部の神経節を摘出し或いは神経索の一個所を切断してから羽化させ, その蛾を解剖して幼虫期の第7神経節の存否及び位置を観察して大略次の結果を得。如何なる場合に於ても第7神経節が存在し, 変態中に退化消失しないことを再確認した。
    (1) 第3神経節及びそれより前方に存在する神経節を摘出し或いはその部分の神経索を切断すれば第7神経節は正常蚕の場合と全く同様な形態で而も同じ位置に存在する。
    (2) 第4神経節を摘出し或いは第4神経節と第5神経節との間の神経索を切断すれば第7神経節は第5, 第6神経節と合体して切断された神経索の先端に存在する。
    (3) 第5神経節を摘出し或は第5神経節と第6神経節との間の神経索をを切断すれば, 第7神経節は第6神経節と合体して切断された神経索の先端に存在する。
    (4) 第6神経節を摘出し或いは第6神経節と第7神経節との間の神経索を切断すれは第7神経節は単独で切断された神経索の先端に存在する。
    (5) 第7神経節より後方に存在する神経索を切断し或いはその部分の神経節を摘出すれば第7神経節は正常蚕の場合と全く同様な形態で而も同じ位置に存在する。
  • 稲神 馨
    1956 年 25 巻 4 号 p. 287
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕の眠及び化蛹期における還元性物質 (グルタチオン, システイン, アスコルビン酸) の消長を調べたところ, 眠期並びに化蛹期に著しく減少することが明らかになつた。
  • 長島 栄一
    1956 年 25 巻 4 号 p. 288-294
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 家蚕卵を低温催青及び高温催青した場合の孵化する蟻蚕斑絞のメラニン色素量をspectrophotometerによつて比較した。低温催青の条件下で孵化した蟻蚕は高温催青のそれよりもメラニン色素を多量に形成している。その原因は温度環境の差異による生体内の生理的及び生化学的差異によると思われる。
    2) 越年卵における漿液膜色素の移動は, 光線照射によつて影響され, 光線を照射したものは無処理のものに比べて色素の移動が早い。即ち温度環境ばかりでなく, 光線も漿液膜色素移動の一要因である。
    3) 一般に光線を照射することによつて, 卵内の3 hydroxykynurenineは減少し, 漿液膜色素の量は増加する。この現象は3 hydroxykynurenineから色素への移行に働く酵素の作用を光線照射が促進するためと考えられる。
    4) 発育初期の蚕卵に日光照射を行なうと, 供試系統によつて異なるが, それから孵化した蟻蚕の斑紋色素は減少する傾向があり, 青み卵期の照射はこの色素の形成を促進する傾向がある。これらの原因について2, 3の考察を行なつた。
    5) 卵の発育初期に日光照射を行なうと, 孵化の速度が早く, 青み卵期の照射は系統によつて異なるが, 一般に無処理との間に大差を認めない。
  • 赤熟色素の発現とその性状について
    川瀬 茂実
    1956 年 25 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    赤熟色素の性状並びにその発現機構を日1号を材料としてしらべた。
    1) 赤熟色素は4眠頃より若干出現し, 主として5齢3日目頃から皮膚の赤色色調は最も濃色となり熟蚕に至る。これは日122号の場合と発現の状態を異にする
    。2) 本色素に, 皮膚真皮細胞の基底部に赤色の色素粒として分布している。
    3) この色素の化学的性質は, 酸化により黄色に, 還元によつて紅色となり, 吸収曲線は450mμ 附近に吸収極大を持ち, Rf値は0.82を示す。以上はすべて+chrom-1の性質に一致しており, 本色素もtryptophan誘導体の+chrome-1群に属する色素と考えられる。
    4) 本色素の発現機構を知るために3-hydroxykynurenineの定量を行なつた結果では, 日122号に於けるような皮膚中での一時的増大は認められない。即ち, この場合は3-hydroxykynurenineが一方で形成されつつ, 他方で色素に変化していくのではないかと考えられる。
    5) 本色素の発現と変態ホルモンとの関係を追求したが, 両者の間に直接の関係はない様である。
  • 蝶類の翅に存在する数種の生化学物質について
    渡部 仁
    1956 年 25 巻 4 号 p. 300-302
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    蝶類の翅に含まれるプテリン類をペーパークロマトグラフイで識別し, 更に尿酸含量を測定して尿酸代謝とプテリン及びメラニンとの関係を調査した. その結果次のことが明らかになつた.
    (1) メラニンの多い翅には尿酸が少ない.
    (2) キサントプテリンの多い翅では尿酸が多い.
    (3) ロイコプテリンの存在する翅の尿酸含量は以上述べたものの中間にある.
    以上の関係は家蚕幼虫の皮膚で明らかにされたものと似ている.
  • 家蚕「赤々赤」皮膚における二, 三の性状について
    渡部 仁
    1956 年 25 巻 4 号 p. 303-306
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    「赤々赤」皮虜に存在する赤色色素の性状及び色素形成状態と他の色素形成との関係につき, 生体, 剥皮標本及び切片標本を用いて観察し次の知見を得た.
    (1) rb皮層の赤色色素は第2次外皮層中央に不定形の赤褐色顆粒となつて存在する特殊な外皮色素である.
    (2) rbの赤色色素形成はps, rbホモ個体の黒縞部分では全く抑えられ, 白色部分にのみ見られる.これに対しps, ch, rbホモ個体では黒縞部分に或る程度形成されるが, 白色部分には殆んど形成されない.
    (3)lem, rbホモ個体に於ては赤色色素形成がかなり妨げられ, 一方lemの黄色色素であるキサントプテリン-Bはlemに比して減少する.
    (4) oc, rbホモ個体では赤色色素の形成が見られ, oc, lem, rbホモ個体の赤色色素形成状態はlem, rbホモとoc, rbホモの中間に位する.
    以上の結果から「赤々赤」皮唐の赤色色素形成とメラニン色素形成及びキサントプテリン-B形成との間, 更に尿酸代謝との間に密接な関係があると想像した.
  • A. GUBELLS, M. A. BATEMAN, 後藤 和夫, 林 貞三, 宮入 和夫, 青沼 茂, 高木 春郎, P. A. MARS ...
    1956 年 25 巻 4 号 p. 307-311
    発行日: 1956/08/28
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    休眠中の家蚕卵に及ぼす温度の作用の研究
    クイーンランドの果実蠅Dacus tryoniの蛹の脱皮の週期に及ぼす光と温度の影響
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