カイコの突然変異腎臓形卵の発現が卵巣の遺伝子型に支配されるのか, 体内環境の影響をうけ変更され得るのかを明らかにするため, 幼虫斑紋によって
kiホモ個体と
kiヘテロ個体が識別できる系統を作出して, この系統を用いて卵巣の移植実験を行った。5齢幼虫期に
kiヘテロ個体の片側卵巣を摘出し,
kiホモ個体からの卵巣を移植した場合移植卵巣が発育したものは全て
ki卵を形成した。逆に,
kiホモ幼虫に
kiヘテロ個体の卵巣を移植した場合, 移植卵巣では全て正常卵が形成され産下された。また
kiホモの雌蛹にピリドキサール塩酸塩の連続注射を行った場合, 全て
ki卵が形成された。これらの移植及び注射処理個体から得られた腎臓形の卵の胚の観察では, 全てに
ki型の胚が形成されていることが認められた。以上の結果から,
kiの卵形成と胚分化は卵巣の遺伝子型によって決定され, 幼虫及び蛹の体内環境には影響されないと判断された。
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