日本蚕糸学雑誌
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45 巻, 3 号
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  • III. 冬期間の呼吸速度と温度の関係
    村上 毅
    1976 年 45 巻 3 号 p. 193-199
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1年生桑枝条における冬期間の呼吸速度と気温の関係について検討を加えた。その結果を要約すれば次のとおりである。
    1. 1年生桑枝条の冬期間の呼吸速度は, 気温によって大きく支配されるが, 12月から翌春3月上旬までの間はかなり安定した水準にある。
    2. 冬期間の桑枝条の単位表面積当りの呼吸速度 (Y1, mgCO2/m2/hr.) と気温 (X, ℃) の間には,
    Y1=12.0520e0.0745X
    で示される関係がみとめられた。
    3. 枝条の乾物重量をベースに表示した呼吸速度 (Y2, mgCO2/kg/hr.) と気温 (X, ℃) の間には,
    Y2=10.0279e0.0900X
    で示される関係がみとめられた。
    4. 前報で明らかにした枝条部位による呼吸速度の差は, 枝条長の2分の1程度以上の実験材料をもちいて測定した場合, ほとんどマスクされてしまう。したがって, 圃場実験の場合には, 乾物重量をベースに呼吸速度を取り扱っても支障がなく, むしろ好都合な場合がある。
    5. 気温と相対呼吸速度の関係は, 前報の場合とよく一致した。したがって, 冬期間の桑枝条の呼吸速度の気温に関する補正は, 前報にのべた方法によって, 相対呼吸速度 (Rr) と気温 (T) の関係を示す実験式,
    Rr=19.9898e0.0733T
    をそのまま利用出来る。
  • 西出 照雄
    1976 年 45 巻 3 号 p. 200-204
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繰糸中の生糸繊度の情報を実時間的に検出し, その情報に基づいてアナログ量で演算処理を行ない, 生糸繊度を計測制御する新しい繊度制御装置を目指して装置の試作を行なった。またその装置の構成と特性について基礎的な検討を行ない次の知見を得た。
    1. 本装置は比較的簡単な構成でアナログ量による繊度制御が行なえるとともに, 飛び繊度防止が可能である。
    2. 繊度糸を採取することなく, 繰糸中, 実時間的に生糸繊度が推定できる。
    3. 繊度情報信号の波形整形と雑音除去の目的から低域滬波回路を設定する必要があり, その時定数は約0.3~0.6秒が適当である。
    4. 差動増幅を行なうことによって繊度制御の精度を上げることができる。
  • 生稲 雄成, 船野 照子
    1976 年 45 巻 3 号 p. 205-210
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹タンパクのチロシン, アミノ基および水酸基を化学的に封鎖した試料に, スチレンモノマーを乳化重合法でグラフトさせ, 絹タンパクの末端基とグラフト率との関係を検討し, つぎの知見を得た。
    チロシンおよびアミノ基を封鎖した試料のグラフト率は, 無処理に比して著しく低下したが, ホルマリンで水酸基を封鎖した試料のグラフト率の低下は, 比較的僅少であった。
    以上のことから, 乳化重合法では, 絹タンパクとスチレンとのグラフト反応にチロシンおよびアミノ基は強く, セリン等の水酸基は弱く関与していると考察された。
  • II. 蛇紋岩土壌におけるニッケルおよび高分子物質の作用特性
    北野 実, 渡辺 昌
    1976 年 45 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蛇紋岩土壌とニッケルおよび高分子物質との相互作用を検討するため, 粘土粒子の界面電位におよぼすニッケルおよび高分子物質の影響を限外顕微鏡電気泳動法により調べた。また高分子物質による土壌処理と種々の方法による土壌中ニッケルの溶出との関係を併せて検討した。
    1. 蛇紋岩土壌粘土にニッケル (硫酸ニッケル, 硝酸ニッケル) を添加した場合, 粘土サスペンジョンのpHが7.0でも添加ニッケル水溶液のpHを調整しないときはNi2+で挙動し, 粒子の負のゼータ電位を中和する。pH7.0に調整したときは一部分はNi2+で挙動すると考えられ, pH8.1ではほぼ完全にNi(OH)2に変化した。
    2. 粘土サスペンジョンにポリアクリル酸ソーダまたはセリシンを添加すると, 粘土粒子の負のゼータ電位はpHが上昇するほど増大し, 粘土粒子にこれらの物質が吸着されることが確認された。また高分子物質添加後, ニッケルを加えると, ニッケルによる粒子の負のゼータ電位の中和が緩慢になる。
    3. 高分子物質による土壌処理と土壌から溶出されるニッケル量との関係を検討した。土壌からの溶出ニッケル量は水抽出法の4ppmからN/5塩酸抽出法による72ppmの範囲にあり, 抽出法によって異ったが, 溶出濃度は水抽出法<N-酢酸アンモニウムpH7.0<N-酢酸アンモニウムpH4.5<N/10塩酸<N/5塩酸の順である。
    ベントナイト-PVAおよびセリシン複合体粉末の2%, 4%を処理した場合, 水抽出されるニッケルはほとんどなかった。またベントナイトによる土壌処理も同等の効果を示した。
  • 有賀 勲, 村上 昭雄
    1976 年 45 巻 3 号 p. 219-224
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの5齢2日目および7日目の雌幼虫にエチルメタンサルフォネート (EMS) を投与して, 卵子形成過程において遺伝子の組換えが誘発されるか否かを調べ, また, これを先に報告したマイトマイシンC (MC) による結果と比較した。
    EMS処理は注射法により, 0.25%, 0.50%または1.00%の濃度のEMS溶液を1頭あたり0.025ml宛投与した。
    EMSによって誘発された組換え型の頻度は, 濃度並びに投与時期によってわずかな差異はみられたが, 対照区との間に有意な差は認められなかった。この事実はMCが組換え型の頻度を著しく高めるのと対照的である。しかしながら一方において, EMSには倍数体やモザイック変異体の出現頻度を高める作用のあることがわかったので, 組換え型の頻度を高め得なかったのは, EMSの量が少な過ぎて卵母細胞のDNAに作用しなかったためではないと考えられる。以上の事実から組換え型の誘発はMCが持っているようなDNAの2本鎖を同時に切断する bi-functional な作用によって起こり, EMSの持っているようなDNAの1本鎖のみを切断する mono-functional な作用では起らないものと推論した。
  • 大槻 良樹, 森 精, 神田 俊男, 北沢 敏男
    1976 年 45 巻 3 号 p. 225-231
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの胚発育の過程を光学顕微鏡および電子顕微鏡によって観察し, 胚脱皮について形態学的な検討を行った。胚脱皮の過程ならびに胚から離脱する膜の微細構造について得られた結果は次のようであった。
    胚が上唇突起発生期に達すると, 外胚葉組織の外側に膜状の構造が現われ, これは短縮期になると胚から離れた1枚の膜として識別できるようになった。頭胸分節期には, 新しい第2の膜が胚の外側に認められ, この膜は反転期に胚から離れ, 第1の膜に接するようになった。胚が剛毛発生期に達したときにも胚を包む2枚の膜が観察された。また2枚の膜はいずれも幼虫のクチクルあるいはエピクチクルにおけるような微細構造は示さず, 一種の限界膜様の構造であった。また膜の電子顕微鏡像では, 第1の膜に比へて第2の膜の電子密度が高いことを除くと両者の間の差異は明らかでなかった。膜の厚さは部位による多少の差はあるがともに約200Åであった。
    胚脱皮と幼虫脱皮あるいはカイコ以外の昆虫の胚脱皮とを比較し, その相違点からカイコにおける胚脱皮の特異性について考察した。
  • 村越 重雄, 瀧口 義夫
    1976 年 45 巻 3 号 p. 232-237
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1975年3月12日よりタビラコ葉を用いた蚕の飼育を行ない, 次の結果を得た。
    1. タビラコ葉をそのまま給与した場合, 稚蚕期の生育は比較的良好であったが, 4齢よりしだいに生育不良となり, 5齢ですべての幼虫が死亡した。
    2. タビラコ葉をクロラムフェニコール水溶液に浸漬してから給与すると, 死亡する蚕は減少して多くの幼虫が結繭した。支那種と交雑種では半数以上が化蛹したが, 日本種では少なかった。
    3. 全齢飼育日数は25℃で22~24日, 繭重は0.90-1.16g, 繭層重は13.4-17.6cg, 産卵数は350-480粒であった。
  • 大山 勝夫, 返田 助光, 佐藤 光政, 岡 成美
    1976 年 45 巻 3 号 p. 238-244
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑の乾物生産に及ぼす摘葉の影響を明らかにするために, 生育中のポット植桑苗に対して葉面積を基準にして, 摘葉量と部位を考えた処理を行ない, 処理前および処理後の乾物総生産量を調べた。処理区は, 無摘葉区, 上半部1/5, 2/5, 3/5, および4/5 (全葉面積に対して) 摘葉区, 下半部1/5, 2/5, 3/5および4/5摘葉区, ならびに全摘葉区 (5/5) の10区であった。結果の大要はつぎのとおりである。
    1. 摘葉摘芯処理後の再発芽の状態は, 上半部摘葉では摘葉量が多いほど発芽伸長する再発枝が多い。これに対して下半部摘葉では摘葉量に関係なく先端部の数芽が発芽伸長した。全摘葉区では当初の発芽数は多かったが, その後の再発枝の伸長は劣っていた。
    2. 乾物生産量は無摘葉区が最も多く, 摘葉量の増加にともなって処理後の乾物増加量が少なかった。
    3. 上半部摘葉区は下半部摘葉に比較して処理後の乾物増加量が少なかった。
    4. 乾物増加量の各器官に対する分配率は摘葉量が増加するにつれ新葉に多く, 株や根に対しては逆に少なくなった。
    5. 摘葉処理前とその後の個体当りの桑葉の総生産量は無摘葉区が最も多く, 下半部摘葉ではやや減少した。また, 上半部摘葉ではさらに減少した。
    6. これらの結果を通じ, 摘葉後の乾物生長に対する残葉の役割として第一に残葉の光合成能に関連する要因と, 第二に残葉が処理後の再発芽に関連している要因の二つが考えられた。
  • 宮島 成寿
    1976 年 45 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本報では家蚕の細胞質多角体病ウイルス (CPV) の血清学的性状について検討した。CPVの系統のうち, 4角形の多角体を形成するもの (TC) と6角形の多角体を形成するもの (HC) について, また, 蚕の他のウイルスである核多角体病ウイルス (NPV), 軟化病ウイルス (FV)およびCPVと同じ2本鎖RNAウイルスのイネ萎縮ウイルス (RDV) との血清学的関連性を, 重層法, 交差吸収反応, 中和反応で調査した。得られた結果は次の通りである。
    1. TCとHCについて, 重層法, 交差吸収反応, 中和反応を行った結果, 相互に血清学的な相違は認められなかった。
    2. CPVはNPV, FV, RDVのいずれのウイルスとも血清学的な反応を示さず, 共通抗原は認められなかった。従って, CPVはこれらのウイルスとは血清学的にも全く異なるウイルスであるという結果が得られた。
  • 宮島 成寿
    1976 年 45 巻 3 号 p. 251-257
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕細胞質多角体病ウイルス (CPV) の理化学的処理に対する耐性について実験を行い, 次の結果を得た。
    1. CPVを熱処理後蚕に接種して不活化温度を求めると, 0.01Mリン酸緩衝液 (pH6.8) 中で85℃, 10分間であったが, 50℃, 30分間処理では感染力の低下は認められなかった。また, ARRHENIUSの式より活性化エネルギーを求めると, 84KCal/molであった。凍結融解処理を10回以上行うと, 感染力の低下が認められた。
    2. CPVはエーテル, デソキシコール酸ナトリウム, 酸およびトリプシンに対して耐性であった。
    3. 以上のCPVの理化学的性状および性状に関する報告を総合すると, CPVは動物ウイルスの分類によるレオウイルスと同じグループに位置するものと推定された。
  • I. 接緒時繭糸繊度分布の推定
    三浦 幹彦
    1976 年 45 巻 3 号 p. 258-264
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    原料繭の特性, 特に繭糸繊度曲線と解じょ糸長分布のパラメータから接緒時の繭糸繊度分布の特性を推定する方法について考察した。1粒繰りデータの分散分析により不時落緒繭が生ずる範囲においては繊度と糸長は2次多項式で十分に近似できることが知られ, この結果と不時落緒繭の解じょ糸長分布とを用いて接緒時繭糸繊度の平均値, 分散と原料繭パラメータとの関係を与える式を導いた。
  • 平林 潔, 荒井 三雄
    1976 年 45 巻 3 号 p. 265-266
    発行日: 1976/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1976 年 45 巻 3 号 p. 290a
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1976 年 45 巻 3 号 p. 290b
    発行日: 1976年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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