日本蚕糸学雑誌
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29 巻, 2 号
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  • 渡部 仁
    1960 年 29 巻 2 号 p. 113-119
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    交雑F1と両親原種における体重および繭質の変異について, 雌雄別あるいは雌雄混合集団て比較調査し, つぎのような結果を得た。
    1) 雌雄別集団の場合, おのおのの交雑F1の5令起蚕体重, 蛹体重, 全繭重および繭層重の変異係数は, 両親原種よりも小さかつた。
    2) 雌雄混合集団においても, 交雑F1の4令起蚕体重と上記諸形質の変異係数は両親原種より一般に小さかつた。しかし特に蛹体重と全繭重の変異係数では, 交雑F1と両親原種の差異は雌雄別の場合程明瞭なものでなかつた。
    3) 発育に伴う体重の変異係数の変動は, 雌雄別集団では余りみられなかつたが, 雌雄混合集団では発育に伴い大きくなる傾向がみられ, 特に蛹期で大きかつた。これは体重の雌雄差が発育に伴つて大きくなることに原因しており, 4令起と5令起で正規曲線を示していた体重の変異曲線は, 蛹になると雌雄差にもとづく二頂曲線で示された。この二頂の傾向は原種よりも交雑F1で著しかつた。
    4) 交雑F1の示す体重や繭質におけるヘテローシス程度の大小と変異係数の大小との間には, 一定の関係がなかつた。
    以上の結果について, developmental homeostasisの観点より考察を行なつた。
  • (XI) フィブロイソ生合成に関与する体液中の遊離アミノ酸の種類
    福田 紀文, 亀山 多美子
    1960 年 29 巻 2 号 p. 120-124
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 本実験は一定量の各種のC14アミノ酸を与えた蚕が生産したフィブロインの放射能の比較からフィブロインの生合成に関与しているアミノ酸の種類を明らかにし, ついでフィブロイン生合成の素材分子の性格を規定するために実施された。
    2) 0.5μc/頭のC14アミノ酸 (グリシン-1-C14, DL-アラニンー1-C14, C14-L-セリン, DL-チロシン-2-C14, DL-アスパラギン酸-2-C14およびDL-グルタミン酸-1-C14) が5令6日目の蚕 (日支交雑種) に経口的に与えられたのち, これらの蚕は桑葉をもつて繭をつくるまで飼育された。繭繊維から分離されたフィブロインを湿式酸化法により分解し, そのC14放射能を炭酸バリウムとして測定した。
    3) C14アミノ酸の種類によりフィブロインの生成に用いられる割合が著しく異なつている。フィブロインの生合成にはC14グリシン, ついでC14セリン, C14アラニン, C14チロシン, C14アスパラギン酸およびC14グルタミン酸の順に利用される。この順位はフィブロインを構成しているアミノ酸の含量の順位とアラニソを除き比較的よく一致している。アラニンは後部糸腺細胞で生成されることが明らかにされてきた。
    4) これらの事実はブィブロインが後部糸腺細胞でアミノ酸から直接生成され, 必要なアミノ酸は体液中に遊離状態で存在するアミノ酸と後部糸腺細胞で生成されるアミノ酸から由来するのであつて, 生合成の過程に特定の蛋白質およびペプチドの直接的関与をとくに必要としないことを暗示している。
  • 横川 正一, 岡部 房之
    1960 年 29 巻 2 号 p. 125-128
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    中腸型多角体病の発生に, 不適当な蚕卵の取扱が関係するかどうかを, 浸酸を行う場合の蚕卵の保護温度, 経過時間, 及び催青温度等をいろいろ変えて, 中腸型多角体病発生率を比較した。その結果, 即時浸酸の場合の産卵後浸酸までの時間が, 24℃ で保護し20時間以上長くなるに伴い孵化が悪くなり, 本病が多発した。同様のことを浸酸後長期冷蔵のものについても調べたところ, 同一の傾向がうかがわれた。さらに冷浸の場合に, 出庫後浸酸までの時間が, 1~2時間のような短い場合にも本病が多発するようである。次に催青温度30℃ は25℃ より, 反転期前の30℃ は反転期後の30℃ より, いずれもC型の発生が多く, さらに孵化についても, C型の発生の多いものは悪い。
  • 横川 正一, 持田 正彦
    1960 年 29 巻 2 号 p. 129-132
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    中腸型多角体病の発生機構を知ろうとして, 2, 3の実験を行つたところ次のことを知り得た。1) 1956年及び1957年に, 夫々同一蚕品種を用い, 0.5%炭酸ソーダを以て10-3に稀釈した精製中腸型多角体を蚕児に食下させたところ, 春蚕に最も少く, 初秋蚕これに次ぎ, 晩秋期に最も高い発病率を示した。2) 精製または精製しないC型多角体の濃度を変えたものを, 蚕児に添食したところ, 高い濃度ほど発病率が高い。3) C型多角体を食下させた蚕児を, 健康蚕と混合飼育したち, 添食蚕が発病するのは勿論であるが, 無処理蚕も発病した。4) C型多角体により汚染された箱を以て, 蚕児を飼育したところ本病が発病し, 消毒して使つたものは発病が低率となつた。5) モリブデン酸アンモニウムを, 桑樹1株1g施与したもの, 及び0.1~10p.p.m.稀釈液を1昼夜水上げした稚蚕全芽を以て稚蚕飼育したが本病の発病に対する働きの正負についてはいずれとも結論できない。
  • 横川 正一, 山口 邦友
    1960 年 29 巻 2 号 p. 133-136
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    農薬によつて中腸型多角体病が誘発されるかどうか, 殺虫剤, 殺菌剤各10種, 抗生物質殺菌剤5種, 除草剤2種, 生長抑制剤1種について, 夫々の実用濃度及び薬害出現以下の濃度のものを, 少いもので1回多いもので8回, 桑葉に塗布して添食し, 本病蚕発生率を無処理区と比較検討した。
    その給果, 実験時期並びに蚕令により差はあるが, 実用濃度の石灰硫黄合剤, 三共ボルドー, ブラスト粉剤, 三共ダイセソ粉剤, リオゲンダスト, ニツカリンT等, 及び薬害出現の限界濃度のBHC乳剤, フヅソール, 武田メル, MH-30等は誘発効果があると認められる現象がみられた。次に飼育時期についてみると, 同種同濃度の薬剤処理でも, 初秋期に比し晩秋期には誘発率が高い傾向が見られ, また4令と5令では後者において発病率が高い。
    以上のことから, 病害虫防除剤の中の或る種のものは, これらが附着している桑葉を蚕児が連続食下することにより, 葉質その他環境条件の悪い場合は, C型多角体病の誘発要因となり得るので, 本病予防上注意する必要があると考えられる。
  • (I) 樟蚕の体腔型多角体病について
    石川 義文
    1960 年 29 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    自然状態下において樟蚕の多角体病を確認し, 病徴, 多角体の形状, ウイルスの病原性等について調査した。
    1) 1949年から1959年の間樟蚕の幼虫及び蛹が, 自然状態下でウイルス病に罹る事実を認めた。特に1959年度においてはこの幼虫 (壮蚕期から末期にかけて) の多角体病発生は激烈であつた。
    2) 壮蚕期に発病したものは一般に体の緊張を欠き, 体が軟弱となり, 皮膚は変色する。病の末期になると, 縞状の病斑を現わす場合も少くない。蛹体では皮膚の弾力性を欠いて軟弱となり, 梢黒味を帯びる。
    3) 樟蚕多角体病の多角体は, 大きさ1.0~2.0μ のものが多いが, 4.0μ 程度のもの及び0.9μ以下のものも混在する。その形状は三角形, 四角形のものが多く, 五角形のものは少い。病の末期には, これら多角体が血液中に充満し, ために血液は膿汁化する。皮膚は概して破れにくいが, 蛹においてその傾向がある。
    4) 樟蚕の核型多角体病ウイルスは樟蚕及び樗蚕に対しては, 強い病原性を有するが, 家蚕に対しては病原性を有しない。
  • 神岡 四郎
    1960 年 29 巻 2 号 p. 141-148
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    カイコの第5令幼虫の咽頭をin situの状態におき, これに種々の自律神経毒を滴加してその運動の変化の機械曲線を求めた結果, つぎのような結論に達した。
    1) アドレナリンは何等の効果もない。
    2) アセチルコリンは多少の抑制的効果をもつているようにみえるが, いろいろの点からみてその効果は明らかでない。
    3) ヒロカルヒンは10-6~10-4の濃度では運動を増強するが, 10-3というような高い濃度では逆に運動を抑制する。
    4) エゼリソは10-6の濃度では効果がなく, 10-4で運動を増強するが, 1分~数分後にはその刺激効果は失われて痙攣的収縮が起る。このように一旦収縮した咽頭は, エゼリンを洗い流しても元の運動を回復しない。恐らくこれはエゼリンが咽頭筋に対して毒性を有するためであろう。なおEserinizationはみられなかつた。
    5) アトロピンは10-6の濃度では一且運動を増強し, ついで抑制するが, 10-4では加用後間もなく抑制される。このときアトロピンを洗い落せば運動は元に戻るところからみて, アトロピンは咽頭に対して毒性を有するものでなく, 咽頭を麻痺させるものであろう。なおアトロピンとピロカルピンとの間の拮抗作用およびエゼリンに対するアトロピンの拮抗はみられない。
    咽頭運動に対する各種の自律神経毒の作用は以上のとおりであるが, これらの作用はみな自律神経毒が咽頭筋に直接作用して起つたものであり, 副交感神経の未梢を刺激したために起つたものとは考えにくい。したがつて本実験の範囲内では咽頭は筋原性のように考えられる。
  • 近藤 義和
    1960 年 29 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1. 家蚕生蛹3.4kgの遊離アミノ酸画分から, 1N塩酸処理活性アルミナカラムクロマトグラフィーでジカルボキシルアミノ酸画分を分離し, これをDowex50カラムクロマトグラフィーにかけてL-シスタチオニン0.6gを得た。
    2. シスタチオニソの家蚕における含量をイオン交換カラムクロマトグラフィーによつて調査した。このアミノ酸は幼虫体液に最も多く, 蛹, 蛾にもやはり含まれている。
  • 針塚 正樹, 小林 勝利, 山下 幸雄
    1960 年 29 巻 2 号 p. 153-161
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    F型軟化病蚕および健康蚕の中腸の前 (噴門部に近接した部位), 中 (中腸のほぼ中央部), 後 (幽門部近接した部位) の3部について組織学的ならびに組織化学的観察をおこなつた。
    病蚕の中腸皮膜組織で健康蚕のそれともつとも大きな差異のみられる部位は中腸前部であつた。この部分の盃状細胞のGobletの内腔には有形的内容物が充満していたが, 同様な所見は中腸中部の盃状細胞でも観察された。また病蚕中腸の円筒細胞の分泌活動は健康蚕のそれより劣る。
    健康蚕および病蚕の中腸皮膜には単糖類, グリコゲン, ビアルロン酸, 炭水化物, リポイド類, DNAおよびRNAの反応がみられたが, とくに単糖類, DNAおよびRNAの反応には健康蚕と病蚕の間に差異がみられ, 病蚕ではその反応が低下した。
  • (III) 潜伏期間並びに寄主体侵入時間について
    糸井 節美, 久保村 安衛, 中山 賢三
    1960 年 29 巻 2 号 p. 162-168
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    桑裏白渋病の潜伏期間と気象並に接種時期との関係および寄主体侵入時間を追究する目的で行つた実験結果は次の通りである。
    1) 一ノ瀬, 市平ともに8月6日に接種したものが潜伏期間は最も短かく, 平均して前者は8.7日, 後者は8.4日である。
    2) 一ノ瀬は8月6日以前の潜伏期間は比較的長く12-14日であるが, 8月6日以後は10-11日と短かくなる。このことは寄主の本病に対する感受性が時期につれて変化することを意味する。
    3) 市平では一・ノ瀬にみられるような潜伏期間が時期につれて変化する関係はみられず, 7月10日から9月7日にかげて終始安定した値を示している。
    4) 9月5日頃では, 接種後約48時間に寄主体侵入を完了するが, 9月22日頃では接種後約60時間を要する。なお発芽管の分岐がおこれば寄主体侵入は完了したと考えられる。
  • (IV) 子のう殼の発育について
    糸井 節美, 久保村 安衛, 中山 賢三
    1960 年 29 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    子のう殻の発育段階を6区分し, 外部形態と内容との関係, さらに各発育段階の経過日数と温度との関係を調べた結果は次の通りである。
    1) 子のう殻が乳白色を呈し, 50-60μ の肉眼でやつとみられる大きさ (段階▽I) では, 内部に顆粒もほとんどみられない。
    2) 子のう殻が淡黄色を呈し, 130-150μ の大きさとなると (段階V), 内部で子のうの分化がみとめられる。
    3) 子のう殻が濃黄色を呈し, 付属糸の基部の分化がみとめられる段階IVで大きさは最大値200-220μ に達する。
    4) 子のう殻が濃黄色から褐色になり, 網目模様がみられ, 付属糸がやや伸長した段階IIIではまだ子のう中に子のう胞子の分化はみられない。
    5) 子のう殻が褐色から黒褐色に変化し, 周囲に冠毛がみえ始めるが, 付属糸は充分伸長していない段階IIでは内部ですでに子のう胞子の分化が始まつており, 圧潰すると子のう胞子の入つた子のうが逸出する。
    6) 完熟した段階Iでは子のう殻は黒色乃至黒褐色に変り, 付属糸は充分に伸長して子のう殻の1.2-1.5倍の長さに達する。内部では子のう胞子は十分成熟して鼠色を呈し, 井水中で圧潰すると子のうの膜壁は破れて, 子のう胞子のみが逸出する。
    7) 9月18日の接種では, 潜伏期間は14.7日, 潜伏期間の終りから子のう殻が発育段階VIに至るまでに平均7日を要する。VIからIVまでは約10日, IVからIまでは約7日を要する。結局VIから成熟までには約17日を必要とする。
    8) 子のう殻の発育の最適温度は15℃Cと20℃ との間にあり, 25℃ では子のう殻の発育は途中で停止する。10℃ では発育速度が非常に遅くなる。
  • (I) 絹質脆化の防止について
    野口 新太郎, 土屋 幾雄
    1960 年 29 巻 2 号 p. 177-182
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • 青沼 茂
    1960 年 29 巻 2 号 p. 183-186
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    従来比較的困難とされていた繭層断面の作製法について研究し, ポリライトNo.8150A (ポリエステル系樹脂) によつて良好な結果をえた。本法の特色は次の如くである。
    1) 包埋剤が常温のもとで繊維集合体間隙によく浸透し, 試料の状態もそこなわずに正確な断面を作製することができる。
    2) 試料の状態に応じて樹脂のゲル化時間を調節することができ, 包埋操作が簡単である。
    3) 試料の硬さに応じて包埋剤の硬度を調節することができる。
    4) 包埋剤である樹脂はそのゲル化前後の容積変化が殆んどないので, 封入試料を変形する心配が少ない。
    5) ゲル化後樹脂の硬度は殆んど一定であるので, 試料を包埋した樹脂ブロックは必要に応じていつでもそのまま切片の作製に供することができる。
    6) 従来の断面作製法と同程度の経費で行うことができる。
    なお本法は各種繊維集合体の断面・構造等を研究する上にも広く応用できる方法である。
    目下本法により煮繭の立場からみた繭殻構造の研究を続行中である。
  • 有間 正三, 杉浦 秀穂, 竹脇 潔, 針塚 正樹, 深谷 昌次
    1960 年 29 巻 2 号 p. 187
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    眠中温度の調整による飼育日数の短縮と繭質向上法について
    実験形態学新説
  • 有間 正三, 杉浦 秀穂, 竹脇 潔, 針塚 正樹, 深谷 昌次, T. D. C. GRACE, R. C. WALLIS, D. A. ...
    1960 年 29 巻 2 号 p. 187a-188
    発行日: 1960/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    眠中温度の調整による飼育日数の短縮と繭質向上法について
    実験形態学新説
    ドクガ卵巣の組織培養における多角体の誘発
    マイマイガ幼虫の多角体病発病と相対湿度の影響
    糸の摩擦と帯電現象の研究装置
  • 1960 年 29 巻 2 号 p. 190
    発行日: 1960年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
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