子のう殻の発育段階を6区分し, 外部形態と内容との関係, さらに各発育段階の経過日数と温度との関係を調べた結果は次の通りである。
1) 子のう殻が乳白色を呈し, 50-60μ の肉眼でやつとみられる大きさ (段階▽I) では, 内部に顆粒もほとんどみられない。
2) 子のう殻が淡黄色を呈し, 130-150μ の大きさとなると (段階V), 内部で子のうの分化がみとめられる。
3) 子のう殻が濃黄色を呈し, 付属糸の基部の分化がみとめられる段階IVで大きさは最大値200-220μ に達する。
4) 子のう殻が濃黄色から褐色になり, 網目模様がみられ, 付属糸がやや伸長した段階IIIではまだ子のう中に子のう胞子の分化はみられない。
5) 子のう殻が褐色から黒褐色に変化し, 周囲に冠毛がみえ始めるが, 付属糸は充分伸長していない段階IIでは内部ですでに子のう胞子の分化が始まつており, 圧潰すると子のう胞子の入つた子のうが逸出する。
6) 完熟した段階Iでは子のう殻は黒色乃至黒褐色に変り, 付属糸は充分に伸長して子のう殻の1.2-1.5倍の長さに達する。内部では子のう胞子は十分成熟して鼠色を呈し, 井水中で圧潰すると子のうの膜壁は破れて, 子のう胞子のみが逸出する。
7) 9月18日の接種では, 潜伏期間は14.7日, 潜伏期間の終りから子のう殻が発育段階VIに至るまでに平均7日を要する。VIからIVまでは約10日, IVからIまでは約7日を要する。結局VIから成熟までには約17日を必要とする。
8) 子のう殻の発育の最適温度は15℃Cと20℃ との間にあり, 25℃ では子のう殻の発育は途中で停止する。10℃ では発育速度が非常に遅くなる。
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