日本蚕糸学雑誌
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42 巻, 4 号
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  • 荒武 義信, 上野 博
    1973 年 42 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕消化液の核多角体病ウイルス不活化作用力について2, 3の調査を行ないつぎの結果を得た。
    1. 家蚕消化液の不活化作用力は蚕の発育段階によって差異がみられ, 4齢期よりも5齢期が, 同一齢期においては齢の末期が齢の初期よりも強かった。
    2. 飼育時期を異にした蚕の作用力はいくぶん異なり, 春蚕期飼育蚕の作用力がもっとも強かった。
    3. 消化液を-20℃で1年半凍結保存しても不活化作用力の低下はほとんどみとめられなかった。
    4. 原種の消化液の作用力は品種的に大きな差異がみられた。
    5. 交雑F1の消化液の作用力は一般に雑種強勢がみとめられ, とくに作用力の弱い品種と強い品種との交雑F1で顕著であった。しかし, 交雑F2および戻し交雑では交雑F1よりも作用力が低下した。
  • 金勝 廉介
    1973 年 42 巻 4 号 p. 285-292
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの消化液より硫安塩析, アミロペクチンとの共沈法, Bio-gel P-60によるゲルロ過およびCM-Sephadex C-50による分画法を用いてアミラーゼを精製し, 超遠心的に単一な標品を得た。
    さらに精製アミラーゼ標品を用いてその諸性質を調べたところ, 次のような結果を得た。
    (1) 沈降定数を5.30Sと推定した。
    (2) この酵素の至適pHは9.2で安定性の範囲はpH8.0~11.5である。
    (3) 55℃以下では温度に対して非常に安定である。また, カルシウムイオンによっていちじるしい安定化は受けないと推察した。
    (4) アミロースを基質とした場合, 活性化エネルギー値は0~25℃において17.0kcal, 25~40℃において3.8kcalである。Km値は2.57×10-3μM Glycosidic bond/lである。
    (5) ゲルロ過法により分子量を13,000~17,000の間にあるものと推定した。
    以上の諸性質を他のα-アミラーゼと比較した。また他生物のアルカリ性アミラーゼとの関連性を考察し, 関連はないと推定した。
  • (II) 各種突然変異蚕における幼虫斑紋の着色および体色の発現と幼若ホルモン
    木口 憲爾
    1973 年 42 巻 4 号 p. 293-299
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    さきに, 家蚕の半月紋および星状紋の着色ならびに幼虫体色の発現には, 眠期の体内の幼若ホルモン量が密接に関与していることを報告した。本報では, この現象が家蚕一般に共通してみられる現象であるか否かを検討するため, 多数の突然変異蚕を用い, CA摘出およびJH投与による新クチクラ形成期 (眠期) のJHレベルの変動と幼虫斑紋および体色の発現との関係を調べた。その結果はつぎのとおりである。
    1) 形蚕 (+P), 褐円 (L), 多星紋 (ms), 多重い形 (Eca), 黒色蚕 (pB), 暗色 (pM), 淡墨 (bd), 優性赤蟻 (I-a), 劣性赤蟻 (ch), ひので (U), およびかすり (q) などの各種幼虫斑紋は, JHの注射により著しく褐色化, 橙褐色化あるいは灰色化し, CA摘出によって著しく黒色化した。
    2) 虎蚕 (Ze), および黒縞 (pS), とくに後者では, CA摘出およびJH注射による顕著な着色変化はみられなかった。
    3) 斑紋部位にほとんど色素の存在しない姫蚕 (p) では, JHの注射およびCA摘出によってクチクラへの黒色色素の形成は誘起されなかった。
    4) 幼虫体色は, 体色の正常型とされている白色系のみならず, 油蚕系, rb系においてもJHの注射により黄褐色化し, 黄体色蚕 (lem) では濃黄色となった。
    5) CA摘出により, 黄体色蚕 (lem) では淡色化して淡緑黄色となった。また正常蚕でも体色が黄色を帯びている蚕品種では, CA摘出により体色は白色化した。
    6) 以上の結果から, 幼虫斑紋および体色の発現過程には, ともにJHの関与しているホルモン機構が存在し, しかもこの事実は単に形蚕のみならず, 家蚕一般に広く認められる現象といえる。
  • 礼との関連において
    布目 順郎
    1973 年 42 巻 4 号 p. 300-308
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    中国戦国時代の壺や〓, 豆などに鋳出されている採桑紋の中に採桑具である筐と鉤がみえる。一方, 中国宮廷において歴代伝えられてきた「躬桑礼」においてもこれらの道具が重用されていたことが典籍の記載によって明らかであることから, 前記戦国採桑紋は躬桑礼の原初的形態を描いたものであると推定した。日本においては, 江戸後期の養蚕家において鉤が用いられた例がある。
  • 白田 昭, 糸井 節美
    1973 年 42 巻 4 号 p. 309-316
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 桑胴枯病菌の2菌株 (D1, D3) および桑叉枯病菌の2菌株 (T1, T3) の生育にはチアミンが必要で, 両菌の生育に対するチアミンの最適濃度は5μg/lであった。
    2. 両菌のC源要求は良く似た傾向を示した。すなわち, 両菌ともペントースではL-アラビノースおよびD-キシロース, ヘキソースではD-グルコース, D-マンノース, D-ガラクトースおよびD-フルクトースで良好な生育を示した。二糖類のマルトース, サッカロースも両菌に対し良好なC源であった。しかし, L-ラムノース, ラクトースでは良好な生育はみられなかった。多糖類では両菌ともカンキツペクチン, デキストリン, 可溶性デンプンを良く利用したが, イヌリンおよびCMCは利用しなかった。多価アルコールではグリセリン, D-マンニット, D-ソルビットで両菌ともわずかに生育した。有機酸についてはD1はコハク酸をわずかに利用したが, その他のものは利用しなかった。T1は供試した5種類の有機酸のすべてを利用しなかった。
    3. D1は供試したアミノ酸の多くを利用したが, L-アスパラギン酸, L-アスパラギン, グリシンを特に良く利用した。T1はL-アスパラギン, L-プロリン, L-グルタミン酸, L-アスパラギン酸を最も良く利用した。しかし, L-アルギニンHClはわずかに利用されたが, 他のアミノ酸はほとんど利用されなかった。無機態N源については, D1はKNO3, NaNO3, (NH4)2HPO4を良く利用し, NH4NO3, NaNO2を利用しなかった。他方, T1は供試した6種類の無機態N源利用度は低かった。
  • 岡 成美, 大山 勝夫
    1973 年 42 巻 4 号 p. 317-324
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ (品種: 一ノ瀬) カルスの誘導方法とカルス形成に及ぼす培地条件の影響について検討した。新梢茎の先端部から切取った切片を, MURASHIGE and SKOOG の基本培地 (MS培地) に2, 4-D10-5Mを加えた培地を用いて, 28±2℃, 暗黒条件下で培養したところ, 7~10日で friable callus が, 14~20日で compact callus が誘導された。
    次に, 上記培地を基本として, 糖, 無機塩成分, 有機微量物質, オーキシン, サイトカイニンおよびイースト抽出物 (YE) 等の添加物について, 培地組成を変えてそれぞれカルス形成に及ぼす効果を調べた。その結果, 窒素源の種類, オーキシンの濃度およびYE等の添加は, カルスの形成量だけでなく, その性状にも影響を及ぼし, friable callus と compact callus の生成割合に差が生じた。
    friable callus が比較的早期に活性を失うのに対し, compact callus は移植継代培養が可能である。そこで培地組成に関する実験結果をもとに, compact callus 形成に適した培地になるように改変したMS培地 (修正MS培地) を用いて培養を行なったところ, 修正MS培地ではMS培地にくらべ compact callus の形成量が増加したが, この効果はYE1g/lの添加によって著しく促進された。
  • 漆崎 末夫
    1973 年 42 巻 4 号 p. 325-327
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    M/5ホウ酸緩衡液 (pH9.0) 中において粉末活性炭によるセリシンI, IIおよびIIIの吸着挙動を検討した結果, 次のことが明らかになった。
    (1) セリシンI, IIおよびIIIの吸着はいずれも FREUNDLICH の吸着等温式に従う。
    (2) セリシンI, IIの被吸着性はほぼ等しく, セリシンIIIのそれの約2倍である。その主な原因として分子構造の差異が考えられる。
    (3) セリシンI, II, IIIの粉末活性炭への吸着挙動の差から, セリシンIおよびIIの分子構造は類似しているが, IIIはこれらと比べて特異的であることが示唆された。
  • V. エリ蚕糸の直接染料による染色性について
    清水 滉, 会田 源作, 滝沢 令子
    1973 年 42 巻 4 号 p. 328-330
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    数種の直接染料によるエリ蚕糸の染色性について, 同じ条件での家蚕糸の染色性と比較した。その結果次のことが認められた。
    1. 酸性浴染色では両絹糸に対する染着率の相違が認められなかったが, 中性浴染色では家蚕糸への染着率が高かった。中でも Sumilight Supra Blue BRR conc. は, 両絹糸に対する染着率の差が大きいので, 両者の識別に利用できる。
    2. 熱湯による脱着試験で, エリ蚕糸へ染着した染料のほうがわずかに堅ろうであることが認められた。
    3. 耐洗たく性および耐光性は両絹糸の間の相違はほとんど認められなかった。
  • 荒武 義信, 栢村 鶴雄
    1973 年 42 巻 4 号 p. 331-339
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. ちらばる蚕
    (カイコ×クワコ) F1ヘカイコを戻し交雑した13区中に1区だけクワコのように拡散性のかなり強い区を見出し“ちらばる蚕” (Sca; Scattered) と名付けた。この系統の拡散性は普通のカイコのそれと画然たる違いを示し, 拡散値は普通蚕の15~90倍近くに達する。
    また拡散性は普通蚕との交雑F1で不完全優性的にあらわれるが, 交雑F2あるいは正常蚕をF1へ戻し交雑した場合はその優位性が殆んど消滅する。さらに拡散性は母親の影響を強くうけ, Sca 母体が Sca を雄にした場合よりも大きい拡散値を示した。なお, 本系統は顕著な背地性を現わした。
    2. 小蚕
    (クワコ×カイコ) F1ヘカイコを戻し交雑した後代にわい小蚕を分離することが見出され, “小蚕” (SS; small sized) と名付けた。この小蚕は体型の大小に相当の変異があり, ごくわい小なものも営繭, 化蛹, 化蛾し産卵するがその数は少なく, 不受精卵が多いので系統保持には普通蚕を用いている。小蚕と普通蚕との交雑F1は正常な体型を示すが, F2では小蚕を分離するので劣性の遺伝的要因によることは明らかである。しかし, その分離率は小蚕をどう区別するかによって異なる。この形質は第II, III IV, VII, IXおよび第XI連関群とは独立の行動をとる。
  • SU IL SEONG, KWANG E. PARK
    1973 年 42 巻 4 号 p. 340-345
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の休眠卵を浸酸あるいは冷蔵浸酸した場合における卵内遊離アミノ酸の変化をペーパークロマトグラフイにより定性分析を行ない, つぎの結果を得た。
    1. 産下後24~48時間の前休眠卵は胚の発育につれて Thr, Arg, Val, Try, Pro 等が増加したが, Cys は減少した。
    2. 産下2日目の蚕卵を5℃で40日間冷蔵した場合, Cys と Asp は徐々に減少し, Cys は遂に検出できなくなった。なお冷蔵した蚕卵を浸酸すると, 浸酸後24時間内には, アミノ酸の変化が見られなかった。
    3. 休眠した蚕卵は前休眠卵にくらべて Cys と Asp が著しく減少していた。
  • 1973 年 42 巻 4 号 p. 346
    発行日: 1973/08/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Bacillus thuringiensis のδ-endotoxin IV 家蚕幼虫中腸組織のイオン調節に対ずるδ-endotoxin の効果
    核多角体病ウイルスとガガンボ虹色ウイルスによる節足動物細胞の2重感染
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