蚕の消化液に多量存在するD(-)-2, 3-ジアミノプロピオン酸 (D-DAPA) (Wada and Toyota, 1965) の役割を明かにするため,
in vitro で抗細菌性を検討した。5齢起蚕消化液のD-DAPA量は, 桑葉育蚕は1.372μmol./ml, 人工飼料育蚕はほぼ半量の0.724μmol./mlであった。D-DAPAの
Streptococcus faecalis-S. faecium IFO 12368の液体培地中での増殖に対する完全抑制濃度は10mM, 部分抑制濃度は5mMであった。また
Bacillus thuringiensis subsp.
thuringiensis, Serratia marcescens は50μl添加量のディスク紙を用いた平板培地での検定では, 2.5mM液で僅かに感受性を示し, 5mM, 25mM液添加によって増殖阻止帯の形成が認められた。この検定でも,
B. cereus IFO 3001,
Staphylococcus aureus IFO 3060, および
Escherichia coli K12は全く感受性を示さなかった。以上からD-DAPAは単独では抗細菌性は弱く, 蚕の消化液中では他因子との協力で働いている可能性が考えられる。
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