日本蚕糸学雑誌
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27 巻, 5 号
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  • 大場 治男
    1958 年 27 巻 5 号 p. 303-311
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 柞蚕およびエリ蚕の液状絹の分泌について研究した。
    2) 柞蚕およびエリ蚕の絹糸腺は中川のいうテンサン型に属し, 前部糸腺は導管, 中部および後部糸腺は分泌管であるが, 後部はまた貯絹にも役立つている。
    3) 両種とも中部と後部糸腺の境界は組織学的に区分され, 中部糸腺からセリシン, 後部糸腺からフィブロインを分泌する。
    4) 中部糸腺から分泌するセリシンはS1およびS2に区別され, 前区 (主として前方の部分)からS2, 後区 (主として後方の部分) からS1を分泌し, 中間の混合分泌帯からは少量のS1およびS2を分泌する。従つて中部糸腺の腺腔における液状絹の排列は前区ではF→S1→S2, 後区ではF→S1であるが, 組織学的にはこれらの境界を区別しがたい。
    5) 柞蚕およびエリ蚕では家蚕に見られるS3に相当するセリシンを分泌しない。
    6) 中部糸腺後区の部分においてS1に混じてセリシン様物質の分泌を認め, 仮にSαとよんだが, その本体は不明である。
    7) フィブロインは粘性物質と顆粒質に富む2様の基礎物質から成るものと認められる。
    8) 腺腔の液状絹のフィブロイン層には無数の気泡を含むが, その発現機溝を研究して, これらは粘性フィブロインの分泌過程に生ずること, また柞蚕およびエリ蚕等の繭糸に見られる空気溝とよばれる線条はこの気泡に由来して生ずることを知つた。
    9) エリ蚕のフィブロイン層の表面には鉄ヘマトキシリンによつて濃染される部分が存在するが, 柞蚕にはない。
  • (1) 繭重平均値の推定方法
    水田 美照
    1958 年 27 巻 5 号 p. 312-320
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    In this paper, I report sampling experiments for estimating the population mean value of silkworm cocoon (Bombyx mori).
    The materials were obtained from cocoons of Shi 122×Nichi 122 (1000 individuals for each sex). Measurements were carried out using a balance which was properly prepared for weighting cocoons, the scale being read by every 1cg.
    The results obtained are as follows:
    1. The frequency distributions of the cocoon weights are shown in Table 1. It is shown in Table 2 that the distribution types of the cocoon weights in the population are not the normal ones.
    2. The distribution-types of the sample mean value are shown to be normal ones in Table 4. and Table 5.
    3. Various formulae deduced from the normal distribution can be safely applied to the cocoon weight values through the central limit theorem, for example the calculated values are almost equal to the observed ones with regard to the standard deviation of the sample mean values.
    4. The size of the sample (the number of cocoons) can be computed using the formula (4), where σ represents the standard deviation of the population distribution; σx, the standard deviation of the sample mean value distribution; N, the number of cocoons contained in the population; n, the number of cocoons contained in the sample. The values of K are 2.58 and 1.96 in the cases of confidence-coefficients being 99% and 95% respectively. It seems adequate to determine the value of b as 2.5cg. for σ cocoon weight.
  • (VI) 化蛹期における皮膚のチロシナーゼ及びフェノール物質に関する組織化学的観察
    川瀬 茂実
    1958 年 27 巻 5 号 p. 321-326
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 化蛹期における皮膚中のチロシナーぜ並びにフェノール物質について, 凍結乾燥法を用いて組織化学的に調査した。
    2. 化蛹期における皮膚中のチロシナーぜ作用力の推移は, 最初幼虫外皮の exocuticle の部分が最も強く, 化蛹直前頃においては真皮が最も活性度高く, 化蛹直後には新蛹外皮が最も強い。
    3. 4眠期と化蛹期におけるチロシナーゼ分布の相違は, 前者においては該作用力は真皮細胞の基底部に中心を持つのに対して, 後者では真皮細胞の全般あるいは外皮側において強い点である。
    4. フェノール物質の観察には, ジアゾ化パラニトロアニリン (P. N. A.) 反応が最も良い結果を示した。すなわち化蛹数時間前頃から, 旧外皮の下縁 (真皮細胞側) 及び新蛹皮となるべき部分が顕著なフェノール陽性反応を呈し, 該部分にフェノール類の蓄積しているのが認められた。
    5. 化蛹期におけるチロシナーゼ, フェノール物質について, 蛹皮色素形成と関連して若干の考察を行つた。
  • (VII) 化蛹期の皮膚中にみられるフェノール物質について
    川瀬 茂美
    1958 年 27 巻 5 号 p. 327-332
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 家蚕の化蛹期の皮膚並びに脱皮殻中のフェノール物質について, ペーパークロマトグラフィー, 紫外部吸収曲線その他の方法で調査した。
    2. 化蛹期の皮膚中にはフェノール物質として既知のチロシン, 3ヒドロキシキヌレニンの他に未知の4物質が存在することを見出し, それぞれRf順にP1, P2, P3およびP4と仮称した。
    3. P1は還元力を持たず, P2は還元力を持つフェノール物質と考えられ, またP3はフェノール酸と推定される。
    4. P4は塩化第2鉄で緑色を呈し, 炭酸ソーダ添加で赤色に変ずること, 種々の溶媒に対するRf値が protocatechuic acid のそれと常に一致すること, 紫外部吸収曲線, 呈色反応も protocatechuic acid と一致するので protocatechuic acid と考えられる。これは化蛹直前, 直後の皮膚よりも, 貯蔵した化蛹脱皮殻中により多く検出できる。
  • (IV) 桑葉精油のアルコール性成分について
    渡辺 忠雄
    1958 年 27 巻 5 号 p. 333-336
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 桑葉を水蒸気蒸留して得た精油を分留し, 各留分について3・5・dinitrobenzoate を作りアルコール性物質の分離を試みた。
    2. アルコール類の3・5・dinitrobenzoate を作り, これをケイ酸定着滬紙でリグロイン:エーテル20:1で展開しRf値を定めた。
    3. 以上の方法を用いて桑葉精油中にn-butanol, β-γ-hexenol, n-sec-octyl alcohol, benzyl alcohol の存在することを認め, さらに phenylethyl alcohol の存在することを推測した。
  • 青木 襄児
    1958 年 27 巻 5 号 p. 337-341
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    浸透性殺菌剤 (PCP剤およびPMF剤) による蚕具材内の麹かび病菌の殺滅および同菌の材内への侵入を阻止する効果について杉, 松および竹の材片について検討した。
    1. 薬液浸漬15分間の場合, PCP剤は400倍で, PMF剤は4000倍で材内潜在の本病々原菌を殺滅する。
    2. 従来の消毒剤 (高度サラシ粉100倍液, ホルマリン7倍液) は消毒後24時間で既に本病病原菌の材内侵入阻止効力を失つている。
    3. 浸透性殺菌剤による本病々原菌の材内侵入阻止効力持続期間は, 杉および松材ではPCP 800倍液で100日間以上, PMF剤1000倍液で約80日間である。また竹材では100日間以上持続させるにはPCP剤の200倍液を要し, PMF剤は1000倍液で約25日間である。
    4. 本病々原菌の材内侵入阻止に有効な浸漬時間は, PCP剤400倍液およびPMF剤2000倍液では, 杉および松材に対しては5分間, 竹材に対しては15分間以上である。
  • (I) 越冬源としての子嚢殼について
    青木 清, 中里 泰夫, 石家 達爾, 鈴木 弘子
    1958 年 27 巻 5 号 p. 342-347
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑裏白渋病菌の越冬源を究明する目的で, 各種条件下の子嚢殻につき調査観察を行い次の結果をえた。
    1) 桑条に於ける子嚢殻は, 条基部より10~70cmに比較的多く, とくに30~50cmにおいて分布密である。
    2) 桑条附着子嚢殻は月日の経過に従い除々に落下し, 5月中旬以降はそれ以前より落下著るしいが, 7月上旬でもなお残存する。
    3) 秋期葉より採取し乾燥条件下に保存した子嚢殻 (保存子嚢殻) と桑条附着子嚢殻との間には, 水浸後並びにアルカリ浸漬後の性状に明瞭な差を認めた。
    4) 子嚢殻に湿気を与えると, 保存子嚢殻は枝上子嚢殻状に変化し, 両子嚢殻とも, 子嚢は17日間で殆んど変質する。
    5) 野外において, 落葉上子嚢殻は5月以降には全く検出されなくなるが, 枝上子嚢殻は6月まで正常状態で多数残存する。
    6) 古い立木桑の樹肌に於いて, 発芽子嚢胞子を内蔵する子嚢殻を多数発見した。
  • 中川 房吉, 北村 愛夫, 古谷 歌子
    1958 年 27 巻 5 号 p. 348-351
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    煮熟繭を夏季の気温30~35℃の温度の水中で1夜 (16時間)~2昼夜 (48時間) 保護するに当り, 煮熟繭の腐敗を防止するために, 防腐剤として第4級アムモニウム塩を主成分とするカチオン活性剤およびホルマリンを使用して, その防腐効果について調査した。
    1. 煮熟繭を30~35℃の水中で1夜間放置するときは腐敗し始め, 1昼夜放置するときは腐敗して, 繭層は繰糸困難となる。
    2. 防腐剤としてホルムアルデヒド (0.005%) を添加した水中では, 煮熟繭は1夜間までは完全に防腐できる。またこれを0.0075%以上の濃度で使用するときは, 約2昼夜まで防腐できる。
    3. カチオンPB, カチオンM2, ラザール, 逆性石鹸ミヨシ等のカチオン活性剤は, ホルマリンよりも防腐の効果は小さいが, いずれも0.01~0.02%の濃度で水中に使用すれば煮熟繭を1夜間, 0.03~0.05%の濃度に使用すれば1昼夜防腐できる。
    4. カチオン活性剤の種類による煮熟繭の防腐効果には大きな差はない。
  • (VIII) 繭糸の検査糸長と定粒生糸の繊度偏差との関係
    嶋崎 昭典, 坪井 恒, 笠井 忠光
    1958 年 27 巻 5 号 p. 352-355
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    (6.3) 式により繭糸の繊度偏差σlと生糸の繊度偏差σlK) との関係が明らかにされたので, 検査糸長hl (h=1.2.…) のときの生糸の繊度偏差をσlから知るための考察を行つた。その結果, 検査糸長hl (h=1.2.…) の変化に伴うK粒生糸の繊度偏差σhlK), 繭糸の繊度偏差σhlは隔差iの自己相関係数ρiを求めることにより,
    σhlK)/σlK)=σhll
    =1/h[h+2∑h-1i=1(h-i)ρi]I/2
    により推定できることが明らかになつた。したがつて第VI~VIII報までの結果から, 繊度特性が原料―工程を経て形成される過程は完全に解析された。
  • (IX) 定粒生糸繊度の系列現象の解析, 特に短糸長の斑について
    嶋崎 昭典, 坪井 恒, 笠井 忠光
    1958 年 27 巻 5 号 p. 356-360
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 生糸の繊度特性は一般に平均繊度, 繊度偏差, 自己相関係数によつてあらわすことができる。
    2. 定粒生糸の短い部分の糸斑の異状変動は, 多く落緒―接緒に原因している。
    3. 繊度の長期変動は, 繭糸繊度曲線の影響をうけている。そのため特性の解析には, 平均繭糸長程度の糸長について調査する必要がある。
    4. 1m検査糸長により求めた繊度偏差の値と, 20m検査糸長の繊度偏差の比率は0.94程度であつた。
  • (X) 定粒生糸繊度の系列現象の解析, 特に長糸長の斑について
    嶋崎 昭典, 坪井 恒, 笠井 忠光
    1958 年 27 巻 5 号 p. 361-365
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    100回繊度糸によつて, 定粒生糸繊度の系列変動を解析し次のような結果を得た。
    1. 生糸繊度の系列現象の周期的変化は繭糸繊度の連続性によつてあらわれる。この特性はコレログラム, スペクトル解析によつて検出できる。
    2. 生糸繊度の系列現象には, 解舒糸長のモードを周波長とする力が最も強く作用し, 次に生糸を構成している繭糸繊度の連続性にもとづく合成, 干渉の作用因によるものが大きく, この波長は4000m以上である。一方700m以内の波長は認められない。
    3. 繰糸方法によつて生糸繊度の連続性は著しく変化する。それゆえ適当な繰糸条件によつて均一な生糸を繰製することは可能である。しかし生糸繊度は繭糸の連続性の影響を強くうけるので, かなりの調整作業を行わなくてはならない。
    4. 落緒の出現性と生糸繊度の連続性とは密接な関係を有している。これは解舒糸長特性を媒介にして関連づけられているものと考える。
    5. 検査糸長に伴う生糸繊度隔差の変化は既報の結果に一致した。しかし周期性が強いときは検査糸長hを1周期の長さにとれば繊度偏差極小になり, しかもσ1/√hσhとなることもある。ただしσhh検査糸長のときの繊度偏差。
  • 1958 年 27 巻 5 号 p. 366
    発行日: 1958/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1958 年 27 巻 5 号 p. e1a
    発行日: 1958年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1958 年 27 巻 5 号 p. e1b
    発行日: 1958年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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