ナイロン, アセテートおよび絹繊維を遠紫外光線に曝露して, 次記条件下における強力低下への温度の影響について試験した。
(a) 乾燥酸素および乾燥窒素中 (-60~+90℃)
(b) 関係湿度0および100%の空気中 (15~95℃) 試料は精製した未染色繊維を用い, ナイロンは艶消剤, 添加物等を含まない, Dupont de Nemours, 4-fold, 45 den. 13 fil. の繊維, アセテートはCourtaulds, 250 den. 48 fil. の繊維, また絹は精練した日本産190デニールの繊維を使用した。試料を石英の窓を持った, 各試験温度の気流が通過する真鋳製の仕切の中に入れ, 低圧水銀蒸気ランプの主として2537 Åの遠紫外線を照射した。
(a) の条件下では, 3種類の繊維は全て, 0℃以下の温度では強力減少がほとんど認められない。しかし, 0℃以上に温度が上昇すると, 急速に脆化が起り強力は減少し始める。
この強力の減少する傾向は, 絹, アセテート繊維については, 乾燥窒素中では乾燥酸素中におけるよりも相当に抑制される。
特にナイロンは乾燥窒素中では, 遠紫外線曝露下での温度上昇による強力の減少は0~90℃の間でもほとんど認められない。
これは, 酸素が存在しない時は, ポリアミドに光化学的な作用によって生成したfree radicalの, 広範囲な再結合があることによると思われる。(b) の条件下では, 遠紫外光線曝露下において, 絹, ナイロン繊維の強力減少は水蒸気により抑制されるが, アセテート繊維の強力減少は水蒸気により促進される。
これは, ある条件下では光化学的に水分子より水酸基が生成され, これが繊維素に対しては, ポリアミド繊維よりも大きな酸化効果を持つことによると考えられる。
また, ナイロン, アセテート繊維の100% RHの空気中における, 温度上昇に伴う強力減少の割合は0% RHの時よりも高い。絹の場合はほとんど同じ傾向を示す。
なお, 綿繊維についても (a) の条件下において0℃以下の温度では, ナイロン, アセテート, 絹と同様に, 顕著な強力の減少は認められない。
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