日本蚕糸学雑誌
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39 巻, 3 号
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  • (VI) 中性塩類溶液の滲透性と絹フィブロインの溶解
    味沢 昭義
    1970 年 39 巻 3 号 p. 139-142
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    中性塩類溶液でフィブロインを処理し, その溶解量および膨潤量を測定し, 次の結果を得た。
    1. 中性塩類溶液にR・(OH)nを添加すると, 溶液の表面張力は低下して, フィブロインの膨潤量は増大する。
    2. 中性塩類溶液にCH3OHまたはC2H4(OH)2を添加すると, その表面張力, 膨潤量はほぼ同じであるが, フィブロインの溶解量が大きく違うことから, フィブロインの溶解は溶液の滲透性だけが主因でない。
    3. 中性塩類溶液に一価アルコールを添加すると, 水分子とアルコール分子によって配位座が満された金属錯塩が生成され溶液の滲透性の向上により, 膨潤量が増加し, 溶媒和力が増大しフィブロインの溶解は促進する。しかし, 二価または三価アルコールを添加しても金属錯塩が生成しないので, 溶媒和力が不十分であり溶解は起らず, 膨潤量のみが増大する結果, フィブロインの溶解は抑制されると考察した。
  • (VII) 絹フィブロインの中性塩の吸着量
    味沢 昭義
    1970 年 39 巻 3 号 p. 143-145
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    中性塩類溶液によりフィブロインを溶解して, その吸着量を定量し, 次の結果を得た。
    1. 中性塩類溶液にR・OHを添加しても, 中性塩類の吸着量は同じであることから, フィブロインの溶解においてR・OHは化学的には関与せず, 物理的に関与するであろうと考察した。
    2. 中性塩は, フィブロインを構成するアミノ酸中, 主にチロシン1残基当り2分子宛, セリン1残基当り1分子宛吸着する。
    3. 中性塩類溶液によるフィブロインの溶解は, 中性塩の滲透拡散一化学反応 (吸着)-膨潤-分散の過程の連鎖反応であり, 中性塩溶液にR・OHの適量が含まれると溶液の滲透性が向上し, 中性塩の滲透拡散が速かに行なおれるため溶解が促進すると考察した。
  • (8) 新梢のせん断抵抗について
    須藤 允, 田原 虎次, カマルデン A
    1970 年 39 巻 3 号 p. 146-152
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    摘桑機を開発するための基礎資料の一つとして, 新梢軸のせん断抵抗値を実測し, せん断抵抗特性を明らかにした。
    その結果はつぎのようである。
    1. 新梢軸のせん断抵抗値は付根から20mmの位置で最大値14.4kg, 最小値1.2kg, 平均値5.52kgであった。
    2. せん断抵抗値は新梢重量, 新梢長, 新梢軸径の増大にともなって直線的に増大する。しかし, 新梢の着生位置や古条長の長・短には支配されない。
    3. せん断抵抗値は新梢軸のせん断位置で異なり, せん断位置が新梢軸の付根から離れるほど小さくなる。その程度をみると新梢軸の中央点でのせん断抵抗値は付根から20mmの点のせん断抵抗値の60.65%にあたる。これに対して, 中央点で収穫できる葉量は着生全葉重の73.78%であった。
    4. 摘桑機は新梢軸上の付根から20mm以上は離れた位置をせん断する機構とすることが有利と思われる。なお, 桑葉のみを収穫することは困難であろう。
  • 林 紀良, 山田 弘生, 加藤 勝
    1970 年 39 巻 3 号 p. 153-157
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉にクロロゲン酸異性体のあることが判明した。すなわち, n-クロロゲン酸の他, 可成りの量のネオクロロゲン酸, 少量のイソクロロゲン酸および Band 510のクロロゲン酸が, 収穫時によって多少異なるが, 例えば57%, 26%, 4%, 13%とそれぞれ異性体として含まれている。これらの異性体をそれぞれ1%宛, 桑葉を含まない準合成飼料に加えて, その生長促進作用を比較した。その結果, n-クロロゲン酸とネオクロロゲン酸は殆んど同様の生長促進効果を示したが, イソ或は Band 510クロロゲン酸の効果はきわめて低かった。クロロゲン酸の生長促進効果のメカニズムは不明であるが, 排糞数をもとにした摂食作用との関連性を求めてみた。しかし, この種の基本飼料を用いた限りにおいては, いずれの異性体をも通じて比較すれば, 関連性が強いとはいえない結果を示している。
  • 岩田 益
    1970 年 39 巻 3 号 p. 158-166
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    植物の頂端分裂組織を選択的に損傷する脂肪酸エステルのうちで最も効果のあるカプリン酸メチル (0.01~0.30モル, 乳化液として使用) を生育中の桑に散布し, その阻害状況, 側芽の発芽および再発枝の生長におよぼす影響を明らかにすると同時に, その効果を慣行の摘芯・摘葉および摘しょう処理と比較して, 大要つぎの結果を得た。
    1)カプリン酸メチルを鉢植えの一ノ瀬に散布したところ, 0.05モルから頂芽に阻害徴候が現われ, 0.25モルでは頂芽はもちろん, 頂端の茎葉が枯死した。この試薬の阻害作用は雨天に比べて晴天時の散布でいっそう顕著であった。なお0.01モルでは頂芽は全く阻害されず正常に生長した。
    2) 0.25モル以上の高濃度液を散布した場合には側芽の発芽までに要する日数が短縮され, 同時に発芽も斉一となったが, さらに発芽数の増加とともに再発芽の生長もきわめて旺盛であった。この結果, 処理後50日から60日目の再発枝の収穫量も増加した。これに対して0.05モル (まれに0.10モル) では頂芽が損傷されることなく側芽は発芽するが, その数は少なく, 再発枝の生長は緩慢で収穫量も少なかった。
    3) 摘芯・摘葉および摘しょう葉等の発芽促進法と比べて, 0.16モルの散布は第5葉までの摘しょうまたは摘芯と同時に第5葉まで摘葉した場合と同じ程度の発芽促進効果が認められた。また, 0.25モル以上では発芽数や発芽までに要する日数からみて, 第10葉までの摘しょうと摘葉数枚を行なった場合と同じ効果があったものとみられる。頂芽に0.16モル液を摘下しただけでも摘芯処理以上の効果が認められた。
    4) 以上の結果から, 夏秋蚕期の稚蚕用桑の育成にあたってカプリン酸メチル散布による発芽促進の効果が期待される。
  • 味沢 昭義
    1970 年 39 巻 3 号 p. 167-170
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    CaCl2-H2OおよびCaCl2-H2O-R・OH溶液に溶解し, それを透析して得られたフィブロイン水溶液の容積分率固有粘度および粒子軸比の変化を求めた。
    1. フィブロインが1.5分間で溶解完了する温度は, CaCl2-H2O=1:8M溶液で135℃, CaCl2-H2O-CH3OH=1:8:2M溶液で90~100℃, CaCl2-H2O-C2H5OH=1:8:2M溶液で85℃である。
    2. CaCl2-H2O-またはCaCl2-H2O-R・OH溶液に溶解したフィブロイン水溶液の粘度は, Cu-En溶液に溶解したフィブロイン水溶液の粘度より小さい。しかし, CaCl2-H2O-C2H5OH=1:8:2M溶液で85℃, 1.5分間で溶解したフィブロイン水溶液の粘度は近似している。
    3. CaCl2-H2OまたはCaCl2-H2O-R・OH溶液に溶解して得られたフィブロインの粒子軸比は, 溶解の進行にともない小さくなり, 粒子は破壊して, その形態は棒状から球状へと変化する。また, 粒子軸比の低下度はCaCl2-H2O溶液が最も大きく, ついでCaCl2-H2O-CH3OH溶液であり, CaCl2-H2O-C2H5OH溶液が最も小さい。
  • 岩成 義才
    1970 年 39 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    比色法を用いて5令幼虫血液中の数種の無機成分の消長をしらべた。
    1) 血液中のNa, KおよびCaの濃度は食桑開始とともに増加し, さらに離桑後1時間くらいで最高に達する。
    2) Na, KおよびCaは3日目ころを最高として以後漸減して熟蚕となるが, Caだけは熟蚕期に多少増加する。
    3) Mgは経過とともに増加し, 6日目 (盛食期) に最高となる。
    4) Clは経過とともに増加, 4日目に一旦減少するが, 以後ふたたび増加して6日目 (熟蚕前日) に令中の最高となる。
    5) 全燐, 有機燐およびリポイド態燐は経過とともに減少して3日目ころ最低となり, 以後増加して7日目 (盛食期) に最高となる。無機燐は途中で減少することなく経過とともに増加して6日目ころ最高となる。
    6) 性別の比較ではリポイド態燐を除いていずれも雄の方に多い。
    7) 全血と血しょうの比較ではNa, KおよびCaは血しょうに多いが, MgおよびClは逆に全血の方に多い。
  • 岩田 益
    1970 年 39 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    伐採後の再発枝の生長, 落葉期の枝条構成および翌春蚕期の収穫量に対する伐採時期と程度の影響を明らかにするために行なわれた試験の結果は下記のとおりである。
    1. 春切桑では, 7月15日まで, 夏切桑では7月31日までに伐採を行なった場合には, 再発枝条数も多く, 再発枝の生長も良好であるが, それ以降に伐採を行なった場合には, 再発枝条数も再発枝の生長も次第に低下し, とくに梢端伐採のような浅い伐採では再発枝条数も著るしく少なく, その生長も劣ることを認めた。
    2. 中間伐採後の残条における側芽の発芽は, 伐採時の桑の生育段階および伐採程度と密接な関係がある。また, 再発枝の生長は生長期間の長さと気象条件に影響されるものと思われる。
    3. 翌年, 春蚕期の新梢量は伐採時期が早い場合と深い場合を除き, 無伐採区と比較して大差が認められなかった。株内の収量構成は, 再発枝の生長量が多いときには, 再発枝かちの新梢量が多かった。
  • 岩渕 早雄
    1970 年 39 巻 3 号 p. 183-186
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • VI. Micrococcus 属および Staphylococcus 属細菌の菌種と無菌飼育蚕に対する病原性との関係
    中筋 祐五郎, 児玉 礼次郎
    1970 年 39 巻 3 号 p. 187-193
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    各地の病蚕から分離し, かつ同定した5菌種 (14菌株) および当研究所の保存菌株9菌種 (10菌株) を用いて, Micrococcus 属および Staphylococcus 属の菌種と無菌飼育蚕にたいする病原性との関係について研究した。その結果:
    (1) 病蚕からの14分離菌株は次の5菌種に分類された。
    Micrococcus freudenreichii GUILLEBEAU 1菌株
    Micrococcus flavus TREVISAN 1菌株
    Micrococcus candidus COHN 4菌株
    Micrococcus caseolyticus EVANS 5菌株
    Staphylococcus epidermidis (WINSLOW and WINSLOW) EVANS 3菌株
    (2) 人工飼料で無菌的に飼育した5令健蚕にたいする病原性をしらべた結果, 病蚕に由来す Micrococcus flavus の1菌株と Micrococcus candidus の2菌株とが注射法によってだけ弱い病原性を示し, その他の菌種 (Micrococcus freudenreichii の1菌株, Micrococcus caseolyticus の5菌株, Micrococcus aurantiacus の1菌株, Micrococcus roseus の1菌株, Micrococcus luteus の1菌株, Micrococcus varians の1菌株, Micrococcus rubens の1菌株, Staphylococcus afermentans の1菌株, Staphylococcus aureus の2菌株および Staphylococcus epidermidis の4菌株) は添食ならびに注射のいずれの方法によっても病原性を示さなかった。
  • 片桐 幸逸
    1970 年 39 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑の品種および育成系統の接木苗, 合計1,330個体について, 発芽前に60Coを線源とするガンマー線を線量率5kR/hrで総線量7.5kRを照射し, 照射後ただちに圃場に植付け, 3年間切戻しをおこない, この間に出現した葉形, 葉色および葉の大きさなどに関する芽条変異を調査し, 大要, つぎの結果をえた。
    1. 照射後3年間における生存個体数は, 1,167であるが, 照射当年は11個体に芽条変異を認め, 照射後2年目および3年目にはそれぞれ50および40個体に新たに芽条変異を認めた。
    2. 芽条変異の出現率には品種および育成系統間に差異が認められ, あつばみどり, No. 17, No. 1021, No. 2010およびNo. 3017は11%から15%と高く, わせみどり, 国桑21号および国桑27号は1.7%から3.2%と低く, 国桑70号は8%でこれらの中間にあった。
    3. 出現した芽条変異は9種類で, 芽条変異の種類名と出現数は, 細長葉52, 葉縁縮葉33, 斑入葉5, 全緑葉3, 覆輪葉2, 中肋部淡緑色葉2, 多裂葉2, 小葉1および黄葉1であった。
    4. 芽条変異の種類数には品種および育成系統間に差異が認められ, No. 1021は5種類, あつばみどり, 国桑70号, No. 17およびNo. 2010は4種類, No. 3017は3種類, わせみどりおよび国桑21号は2種類, 国桑27号は1種類であって, 芽条変異の出現率の高いものは芽条変異の種類も多い傾向を示した。
  • 四方 正義
    1970 年 39 巻 3 号 p. 201-203
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絶食したトビカツオブシムシ成虫を, 生きた5令蚕または蚕蛹だけが入ったシャーレ内に内れると, 顕著な食害を示した。また生きた蚕と乾燥した蚕蛹を同時においてトビカツオブシムシを入れると, 確かに乾燥した蚕蛹を好んで食害するが, 成虫では時に生きた蚕蛹をも食害することがわかった。
  • 1970 年 39 巻 3 号 p. 204-206
    発行日: 1970/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕核多角体病ウイルスの増殖に関する生化学的研究 1. 感染後の幼虫組織における核酸合成
    家蚕細胞質多角体病ウイルスRNAに関する電子顕微鏡的研究
    家蚕の孵化における free-running (野放し) リズム
    ニクバエの Foot-pads 分化にともなう水溶性タンパクの変化
    蚕の伝染性軟化病ウイルスに関する研究 1. 経口接種法による力価検定法
    蚕の伝染性軟化病ウイルスに関する研究 2. 日本各地で分離されたウイルス株間の血清学的近縁性について
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