寒天ゲル電気泳動法により, 家蚕中腸の耐熱性エステラーゼの活性における品種間差異とその遺伝様式について調べた。その結果, 家蚕中腸のエステラーゼの活性帯はAes
1~Aes
8までの8種が分離され, Aes
2, Aes
4, Aes
5はそれぞれ複数の成分に分けられた。エステラーゼの耐熱性については, 総活性でみた場合にも品種差異がみられたが, 各活性帯についても, Aes
5が熱に対し最も安定で, 次いでAes
1であり, 他は60℃, 15分の熱処理で殆んど失活した。Aes
5は, 活性が強く易動度の大きいF型, 活性が比較的強く易動性の遅いS型, 及び活性が弱いO型に分けられた。これら三つの型を交雑し, F
1およびF
2における活性の発現を調べたところ, Aes5の活性はF, Sが共優性的に発現し, F
2ではF型またはS型とO型, あるいはF型, FS型及びS型がほぼ理論比通り分離した。これらの三つの活性型は同一座位に存在する複対立遺伝子Aes
5-F, Aes
5-SおよびAes
5-Oによって支配されていることが明らかとなった。
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