日本蚕糸学雑誌
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53 巻, 5 号
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  • 竹田 敏, 上田 悟
    1984 年 53 巻 5 号 p. 373-379
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉粉末を含まない人工飼料を用いてn-ヘキサコサノール, モリン, β-シトステロールの相互作用が1齢の摂食性に及ぼす影響について検討した。1) n-ヘキサコサノール, モリン, β-シトステロールは, いずれも掃立25時間後の毛振るい率を高め, 特にn-ヘキサコサノールとモリンは顕著でかつ相互作用が認められ, 両者の添加量が増すほど毛振るい率は相乗的に高まった。2) 掃立90時間点における眠蚕出現率にはβ-シトステロールの影響が最も大きく, 無添加飼料では眠に達する蚕は1頭もなかった。n-ヘキサコサノール, モリンの影響はそれぞれの添加量の増加につれて眠蚕出現率を高めたが, 眠蚕出現率に対する両物質の相互作用は認められなかった。3) 1眠体重にはモリンが最も顕著な影響を示し, 添加量が多くなるほど, 体重は重くなった。n-ヘキサコサノールは無添加で明らかに体重は軽かったが, 乾物飼料あたりの添加量0.2mgと0.5mgとの間の体重差は有意ではなかった。同様にβ-シトステロールについても添加量の2.5mgと10mgの間に有意差は認められなかった。
  • 塚田 益裕
    1984 年 53 巻 5 号 p. 380-386
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    HEMAポリマーの熱分解機構を究明するとともに, HEMA加工絹の熱的挙動, 構造特性ならびに絹フィブロインに対する充填HEMAポリマーの相容性を解明するため, 示差走査型熱量測定 (DSC), X線回折写真の撮影, 走査型電子顕微鏡観察を行った。 200℃以上になると, HEMAポリマーの分子側鎖間の脱水反応によりケトン型カルボニル基が生成しはじめるとともに, 熱分解反応が進行し, その後HEMAポリマーは314℃で熱分解する。
    HEMAの充填率が増すと絹フィブロンの熱分解温度は次第に高温側に移行し, 90%の加工絹の熱分解は約340℃であったがHEMAポリマーの熱分解たよる第一次生成物の再分解によると考えられる410℃付近の吸熱反応量の変化は観察されなかった。HEMA加工率が変っても試料の吸湿特性ならびに結晶構造とには目立った変化が見られなかった。また加工率が90%以上になると, 試料表面にまでHEMAポリマーによるとみられる析出物が観察された。
  • 町井 博明
    1984 年 53 巻 5 号 p. 387-393
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    南西諸島に栽植されているシマグワ (Morus acidosa Griff.) の栽培技術確立に資するため, 鉢植えした1年生の桑を用い, 側枝の発生及び生長に関する試験を行った。3月下旬に1番枝が発芽伸長した後, 1年以内に2, 3および4番枝の発生が認められた。また, 1番枝は枝長が一般に短く, 2番枝の発生後 (20~30日後) は落葉数が急増した. つぎに, 器官別乾物重の測定から, 乾物生産の主体が1番枝から2番枝へ移行する時期は7月頃であって, その後9月頃までは2番枝が乾物生産の中心的役割を果すものと推察された。相対生長率 (RGR) は樹体の生長とともに増加し, 6月下旬にピークに達した。また純同化率 (NAR) は5月に最大値を示し, 葉面積比 (LAR) は7月に最大となった。これらの結果に基づき, シマグワの生長様相について論議した。
  • 藤原 公, 香川 敏昭
    1984 年 53 巻 5 号 p. 394-397
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    休眠性卵に対する冷蔵浸酸処理は蟻蚕および未孵化卵の微粒子病罹病率を最も低くし, 原虫不活化効果が認められた。即時浸酸後の冷蔵および冷蔵単独処理も若干の効果があった。
    非休眠卵の即時浸酸処理はその効果がなかった。48時間齢卵の冷蔵 (5℃, 30日間) および冷蔵処理卵の加温浸酸 (46℃, 15%塩酸4分間浸漬) または温湯浸漬 (46℃温湯4分間浸漬) による高温処理で罹病率が低下し, 原虫不活化効果が認められた。
    冷蔵浸酸処理による卵内微粒子病原虫の不活化効果の要因は冷蔵処理が主であり, 高温処理は副次的であることが明らかになった。
  • 藤原 公
    1984 年 53 巻 5 号 p. 398-402
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1970年, 千葉県の種繭養蚕蚕農家で飼育された蚕成虫から Pleistophora 様微胞子虫を分離した。
    微胞子虫は卵円形で, 長径5.06μm, 短径2.97μm, 長幅率1.7で, 極糸の長さは140μmであった。胞子形成期にはパンスポロブラストが見られ, 胞子形成数は16個, 32個及び64個で, まれに8個があった。蚕幼虫における寄生部位は筋肉, 脂肪体, マルピキー管および絹糸腺で, 病原性は Nosema bombycis より弱かった。
    種繭養蚕農家での本原虫発生程度は農家によって差があり, 発生消長は私蚕期に多発する傾向を示した。
  • 絹織物の機械的性質 III
    土屋 幾雄, 久間 秀彦, 松本 陽一
    1984 年 53 巻 5 号 p. 403-408
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹紡織物をよこ糸 (絹紡糸) 方向に繰り返し伸長したとき, 絹紡糸の撚係数, よこ糸密度および伸長率が, 織物の圧縮特性にいかなる影響を及ぼすかを, ローラのころがり摩擦現象を応用した転動法により調べた。絹紡織物の繰り返し伸長による圧縮特性は, よこ糸方向の伸長率の増加とともに変化する。すなわち, 0.5~1%の低伸長率において, よこ糸中の単繊維の再配列化のためと考えられるピークをもった後, 糸および織物の構造の変化により, 低下の傾向にある。また, 絹紡織物の繰り返し伸長による圧縮特性は, よこ糸 (絹紡糸) の撚係数及び密度が, かなり影響することがわかった。
  • 吉井 太門, 横井 直人
    1984 年 53 巻 5 号 p. 409-413
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    福島県の桑園においてクワに寄生するハマキガ類の種類を調査したとこち, ヒメハマキガ亜科に属する既知のクワハマキおよびクワヒメハマキの他に, ハマキガ亜科に属するトビハマキ, リンゴモンハマキ, ミダレカクモンハマキ, アトボシハマキおよびリンゴコカクモンハマキの5種類が得られた。これらのうち最も個体数の多かったのはリンゴコカクモンハマキであった。リンゴコカクモンハマキおよびリンゴモンハマキについてフェロモントラップによる雄成虫の誘殺消長を調査した結果, リンゴコカクモンハマキは平坦地の桑園で, リンゴモンハマキは山間地の桑園で多く誘殺された. リンゴコカクモンハマキ幼虫のクワにおける越冬部位は大半が枝であった。越冬巣網は冬芽の内側に形成されていたが, 一部は枝の裂目にもみられた。越冬密度は無収穫の桑園で高く, 晩秋蚕期に中間伐採した桑園で低かった。
  • 四方 正義, 古沢 寿治, イントラシット レスリー, 劉 政麟
    1984 年 53 巻 5 号 p. 414-420
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生繭をOV/PEフィルム袋に入れて密封殺蛹すると同時に, 再生可能な細孔容積の大なるシリカゲルを同封して乾燥を図った。次いで一定期間後にSGを出して乾繭程度に応じて再び新しいシリカゲルを適量入れると共に, 今度は脱酸素剤を一緒に入れて密封保存を試みた。
    その結果, 密封保存繭の乾燥程度が約50%であると, 蛹体の乾燥程度は約33%で, 繭層の乾燥程度は生繭のそれとほぼ同じ状態であった。なお, かかる密封保存繭で108日経過したものを繭鑑定すると, 汚染繭発生歩合, 生糸量歩合, 解じょ率とも, 加熱乾燥区に比較して劣ることはなく, むしろ勝っていた。
  • 倉田 啓而
    1984 年 53 巻 5 号 p. 421-426
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の5齢の種々の時期に幼若ホルモン, methoprene (JHA) を投与した場合の後部糸腺RNA合成の変化をrRNA, mRNAおよびsRNAについて調査した。
    後部糸腺の全RNA量を増加させるための投与時期は5齢4日目までであり, もっとも効果のあったのは5齢1日目投与であった。投与JHAはまず後部糸腺RNA合成を抑制し, その後増加を誘導した。この合成抑制は一時的であり, いずれのRNA種にも及んだが特にsRNAに著しく現われた。また, 合成抑制後誘導された合成活性の増加はいずれの時期にJHAを投与しても出現し, つねにrRNAの合成活性が高められた。RNA蓄積量が最大になった時のRNA種の割合はJHAの投与時期により異なり, 対照蚕と類似したのは5齢3日目投与であった。RNA種の量的割合と繭層量の関係を考察した。
  • 土井 良宏, 木原 始, 伴野 豊
    1984 年 53 巻 5 号 p. 427-431
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1保存系統から皮膚に透明な小斑点が散在する斑油蚕様個体を見出し, 正常蚕と交配したが後代に油蚕は得られず, F216蛾区を調査した中の1区において1齢3日目で顕著な矮小蚕を多発した。同区の正常蚕が就眠した後も矮小蚕は摂食を続けて皮膚が透明になり, 眠に入ることなく孵化後5~6日までにほとんど斃死した。同区の正常蚕の後代検定によりこの不眠致死形質は常染色体上の1劣性遺伝子により発現されることを確認し, これを矮小不眠蚕 (記号, nm-d) と命名した。次で連関検索を行った結果, nm-dは第9連関群に所属することが判明したので, さらにI, I-a両遺伝子を基準に用いて3点実験を行い, その座位を第9連関群0.1と決定した。
  • 劉 治国, 小林 正彦, 吉武 成美
    1984 年 53 巻 5 号 p. 432-435
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    寒天ゲル電気泳動法により, 家蚕中腸の耐熱性エステラーゼの活性における品種間差異とその遺伝様式について調べた。その結果, 家蚕中腸のエステラーゼの活性帯はAes1~Aes8までの8種が分離され, Aes2, Aes4, Aes5はそれぞれ複数の成分に分けられた。エステラーゼの耐熱性については, 総活性でみた場合にも品種差異がみられたが, 各活性帯についても, Aes5が熱に対し最も安定で, 次いでAes1であり, 他は60℃, 15分の熱処理で殆んど失活した。Aes5は, 活性が強く易動度の大きいF型, 活性が比較的強く易動性の遅いS型, 及び活性が弱いO型に分けられた。これら三つの型を交雑し, F1およびF2における活性の発現を調べたところ, Aes5の活性はF, Sが共優性的に発現し, F2ではF型またはS型とO型, あるいはF型, FS型及びS型がほぼ理論比通り分離した。これらの三つの活性型は同一座位に存在する複対立遺伝子Aes5-F, Aes5-SおよびAes5-Oによって支配されていることが明らかとなった。
  • 清水 孝夫, 渡部 仁
    1984 年 53 巻 5 号 p. 436-440
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1993年晩秋蚕期に長野県北部の中条村椎蚕共同飼育所から配蚕を受けた農家約119戸で違作が発生した。病蚕は主として4~5齢期から空頭, 起き縮み症状を呈し, 族中及び繭中斃蚕となる場合もみられた。これら119戸の平均箱当たり収繭量は22.1kgであった。この地域の農家から採取した軟化症状蚕または繭中斃蚕について血清学的調査を行った結果, 濃核病ウイルス (佐久株) の抗血清に陽性反応を示す個体が多く検出され (オクタロニー法), 病蚕磨砕液上清は蚕品種, 柴・雲×旭・陽に対し強い病原力が認められた。しかし伝染性軟化病ウイルスの抗血清に反応を示す個体は全く検出されなかった。また病蚕中腸の塗沫標本を, 佐久株ウイルス抗血清を一次血清とした蛍光抗体法 (間接法) で観察したところ, 強い特異蛍光反応が認められた。これらの結果から中条村で発生した集団違作の主因は濃核病ウイルス (佐久株) によるものと推察された。
  • 高林 千幸
    1984 年 53 巻 5 号 p. 441-447
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    自動繰糸機において有効接緒効率を時系列的に計測するために, 接緒桿が作動したあと繰糸張力に変動が生じた場合を有効接緒, 接緒桿の作動にもかかわらず張力変動のない場合を無効接緒として検出し, 一定時間毎の有効接緒効率を演算・表示及び印字する装置を構成した。この装置の検出性能を確かめるため, 自動繰糸機において計測実験を行った結果, 有効接緒効率を自動的かつ正確に演算・表示し得ることが明らかとなり, 本計測手法の製糸工程管理面での有用性が確認された。
  • 河口 豊, 藤井 博
    1984 年 53 巻 5 号 p. 448-455
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    退化型小形卵系統に分離する正常蚕とsmn蚕とを用いて卵巣 (卵) タンパク質の形成について比較した。正常蚕では蛹の中期まで発育が進むにしたがい卵巣でのタンパク質合成能が上昇するが, これに伴って卵巣 (卵) タンパク質の含量が増大するのみならず, 成分数も増加した。一方, smn卵巣ではタンパク質合成能が極めて低く, 発育経過に伴うタンパク質の含量増加もなければ成分数の増加も起らない。また, 正常卵巣は体液中の vitellogenin を積極的に卵内に取り込み, 蓄積するのに対し, smnは体液中の vitellogenin を取り込むことができず, 成虫体液中に大量の vitellogenin が残留したままであった。すなわち, smnは卵巣におけるタンパク質の合成ならびに体液からのタンパク質の取り込みと蓄積の両過程に異常を来すものである。
  • 1984 年 53 巻 5 号 p. 456-458
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕脂肪体アデニル酸シクラーゼのカルモデュリンによる活性化
    日本とタイ国における技術移入: 養蚕および製糸業
    クワ苗木の新梢形成にともなうアデニン・ヌクレオチド量とRuBPCase活性の変動
    クワさし木の発根にともなう窒素レベルと遊離アミノ酸の変化
    光合成研究のためのクワの葉からの葉肉細胞の単離
    クワ枝条皮層柔組織細胞の耐凍性と微細構造におよぼすサイクロヘキシミドの影響
  • 藤原 公
    1984 年 53 巻 5 号 p. 459-460
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 河野 清, 鈴木 健夫
    1984 年 53 巻 5 号 p. 461-462
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 塚田 益裕, 小松 計一, 石黒 善夫
    1984 年 53 巻 5 号 p. 463-464
    発行日: 1984/10/31
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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