バット染料を用いて, 柞蚕絹織物のキトサン処理による染着性, 色調への影響を検討した。バット染料によるキトサン処理織物の染着性は, 無処理織物より著しく大きく, キトサン付着率が大きいほど増加し, その比率はC. I. Solubilised Vat Blue 5 (アルカリ性法)<C. I. Solubilised Vat Blue 5 (酸性法)<C. I. Vat Red 41<C. I. Vat Blue 1<C. I. Vat Blue 6の順に大きくなる傾向がみられた。C. I. Solubilised Vat Blue 5では, キトサン処理によって, 染着性は酸性浴染法では増加するが, アルカリ性浴染法では減少, またはほとんど変化がなく, 亜硝酸塩法が重クロム酸塩法より大きかった。色調については, キトサン処理によって, C. I. Vat Blue 1, C. I. Vat Red 41, C. I. Vat Blue 6の染色物では, 一般に明度が低く, 彩度が高くなり, 色相も若干変化し, 色差がいずれも大きくなった。C. I. Solubilised Vat Blue 5の酸性浴染法では, 重クロム酸塩法, 亜硝酸塩法, いずれも色相はほとんど変化がなく, 明度, 彩度が低くなり, 色差も比較的小さかった。しかしアルカリ性浴染法では, 色相は重クロム酸塩法ではかなり変化するが明瞭な傾向がなく, 亜硝酸塩法ではほとんど変化がなかった。明度, 彩度は重クロム酸塩法, 亜硝酸塩法のいずれもほとんど変化がなく, 色差は小さい傾向がみられた。
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