低温処理 (5℃, 24時間) により家蚕の誘発抵抗性を, 主として生理的要因の観点から検討する試験を行なった. 中腸型多角体病蚕は, 1957年と1959年の晩秋期にわずか発生したのみで, この報告で述べる多角体病蚕はすべて体腔型多角体病を意味する.
1) 4眠起蚕は低温処理に対し誘発感受性を示すが, 1および2眠起蚕は全く発病せず3眠起蚕でも発病しない例が多い. 各眠起に反復して低温処理を行なっても, 発病様式は1峰型またはまれに2峰型が得られ, 3峰型は得られなかった. したがって, 体腔型多角体病に関しては, 低温処理の影響の累積的効果はほとんどないか, きわめて少ないと考える.
2) 脱皮後, 低温処理までの絶食時間の長短は発病率に変化を与え, 時間の経過とともに一定の消長を示すが, その時間的閾値にはかなりの変動がある.
3) 起蚕を一旦餉食させると発病率は同時期の絶食蚕に比し低くなった.
4) 起蚕の低温処理後, 絶食させるとわずか5時間であっても, 直ちに餉食したものに比し発病率は低くなる傾向が認められた.
5) 4令2日目, 5令3日目の食桑中の蚕児を低温処理すると, 起蚕に比し発病率は低くなるが, 絶食させた後処理すると当初の食桑中の場合より増加し, 絶食時間が長くなるとふたたび減少する.
6) 低温処理の前, 後および前後に15℃5時間を通しても発病率は変らなかった.
7) 眠中蚕は完全な誘発抵抗性を示した.
抄録全体を表示