日本蚕糸学雑誌
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30 巻, 2 号
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  • 阿久根 了, 向井 純一郎, 村山 晃
    1961 年 30 巻 2 号 p. 73-77
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    5令家蚕後部絹糸腺には, 至適pH5.3, 温度55℃ 附近で作用するいわゆる酸性リボヌクレアーゼが存在する。本酵素はパラクロル安息香酸水銀によって非可逆的に失活するSH酵素であり, また特定の2価金属イオンによる賦活は認められない。その活性は5令期間中, フィブロインの合成分泌能に平行した消長を示す。
  • 橋本 春雄
    1961 年 30 巻 2 号 p. 78-82
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    Antaua studo montris ke abnormala ovodemetado ce Kina 115 okazas kauze de ginandromorfismo kaj femala poliploideco. Deposte, kelkaj novaj rezultoj estis akumulitaj kiel raportite jene. Por facile disigi ginandromorfojn kaj poliploidajn femalojn, seksligita d-traluma geno kaj Sekslimita Zebra estis utiligitaj en ci tiu studo. La F1 de la returnkunigo de Kina 115 kun ordinara raso enhavis la abnormalon kauzantajn femalojn kaj la normalajn en la proporcio 1: 1. Sekve, unu matroklina recesiva geno staras por la karaktero. La fenotipo de la Kina 115 ginandromorfo montris kelkajn malsamecojn kompare kun tiu de la gsnun raportita Goldschmidt kaj Katsuki'a linio. Krome, estis montrite ke unu praktika raso, deveninta el Kina 115 havas similajn abnormalajojn.
  • (VIII) 繭の含有色素による家蚕品種の分類とその地理的分布について
    藤本 直正, 林屋 慶三
    1961 年 30 巻 2 号 p. 83-88
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 家蚕着色繭品種61種を供試して, 繭に含有されるフラボノイドとカロチノイドとの割合によって品種の分類を行なった。
    2) 大部分がカロチノイドでわずかのフラボノイドを含む品種の群と家蚕の祖先型のクワコと同様に両色素がほぼ等量宛含有される群と全色素がフラボノイドである群の3群およびそれら3群の各中間の割合を示す品種の群を認めた。
    3) 大部分がカロチノイドである群には欧洲種の大部分の品種が属し, 熱帯系のすべてはほとんどあるいは全部の色素がフラボノイドである群に属していた。
    4) クワコと同様に雨色素がほぼ等量ずつ含まれる群には欧州, 中国, 日本の各品種の1.2が属していた。
    5) 外観から黄繭系とみられるもののうちにもカロチノイドよりフラボノイドの方がかえって多く含まれる品種が存在する。また, フラボノイドの全然含有されない着色繭品種は1種も認められなかった。
  • 林 幸之
    1961 年 30 巻 2 号 p. 89-94
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕の2, 3突然変異と正常蚕 (一蛾区から分離した) の2, 3組織の尿酸量およびキサンチン脱水素酵素の活性度を測定し比較検討した結果は次に示す如くである。
    1) og油蚕では尿酸量は皮膚において正常蚕と顕著な差異が認められ, 正常蚕に多く存在する。また中腸壁および脂組肪織では尿酸はやや正常蚕に多いようである。血液には両者の差は判然としなかった。
    2) キサンチン脱水素酵素の活性度は脂肪組織において正常蚕に高く, og油蚕に低い。中腸壁に存在するキサンチン脱水素酵素活性度の差異は脂肪組織ほど著るしくないが正常蚕に高い値を示した。
    3) 3種の油蚕od, ogおよびosの中腸壁, 脂肪組織ならびにマルヒーギ管のキサンチン脱水素酵素の活性度をそれらより分離した正常蚕と比較した結果, いずれの品種も脂肪組織マルピーギ管では正常蚕より低い値を示した。この活性度の差異は油蚕の皮膚の透明度と比例することが推定された。
    4) 上述の油蚕にみられたことは黒縞においても同様であり, 黒縞の皮膚の尿酸量は正常蚕より少なく, また脂肪組織のキサンチン脱水素酵素活性度も正常蚕より低い。
    以上の結果から油蚕および黒縞の遺伝子は尿酸生成能をも支配することが推察された。
  • 渡部 仁
    1961 年 30 巻 2 号 p. 95-100
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    越年卵のカタラーゼ作用及び産卵後系統に固有な越年卵色を示す迄の期間のカタラーゼ作用並びに3・ハイドロオキシキヌレニンの消長を調べた。その結果を要約すれば次の通りである。
    1) 一般に日本種系統の越年卵におけるカタラーゼ作用は, 支那種系統のそれよりも強い傾向があった。
    2) 日本種系統及び支那種系統の正反交雑について, 卵のカタラーゼ作用を比較すると, 産卵後まもない時期では作用力は一般に母系統に似るので正反交雑で差異があるが, 越年卵色を示す時期になるとその差がなくなり, いずれも両親系統の中間値に近づいた。また卵の3・ハイドロオキシキヌレニン量は母体から移行したものであるので, 産卵直後では正反交雑で差があり, その後の消長量についてはいずれも母系統の影響を受け, 日・支の交雑F1がその反交雑より大であった。しかし越年卵色を示す時期になると, 発生初期にみられた3・ハイドロオキシキヌレニン量の正反交雑間の差異は縮少した。
    3) 卵色素形成の過程において, 色素形成量 (色素原である3・ハイドロオキシキヌレニンの消費量から推定) とカタラーゼ作用力との間には正の相関関係があり, 両者間に密接な関係のあることが認められた。
  • 鮎沢 千尋
    1961 年 30 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    低温処理 (5℃, 24時間) により家蚕の誘発抵抗性を, 主として生理的要因の観点から検討する試験を行なった. 中腸型多角体病蚕は, 1957年と1959年の晩秋期にわずか発生したのみで, この報告で述べる多角体病蚕はすべて体腔型多角体病を意味する.
    1) 4眠起蚕は低温処理に対し誘発感受性を示すが, 1および2眠起蚕は全く発病せず3眠起蚕でも発病しない例が多い. 各眠起に反復して低温処理を行なっても, 発病様式は1峰型またはまれに2峰型が得られ, 3峰型は得られなかった. したがって, 体腔型多角体病に関しては, 低温処理の影響の累積的効果はほとんどないか, きわめて少ないと考える.
    2) 脱皮後, 低温処理までの絶食時間の長短は発病率に変化を与え, 時間の経過とともに一定の消長を示すが, その時間的閾値にはかなりの変動がある.
    3) 起蚕を一旦餉食させると発病率は同時期の絶食蚕に比し低くなった.
    4) 起蚕の低温処理後, 絶食させるとわずか5時間であっても, 直ちに餉食したものに比し発病率は低くなる傾向が認められた.
    5) 4令2日目, 5令3日目の食桑中の蚕児を低温処理すると, 起蚕に比し発病率は低くなるが, 絶食させた後処理すると当初の食桑中の場合より増加し, 絶食時間が長くなるとふたたび減少する.
    6) 低温処理の前, 後および前後に15℃5時間を通しても発病率は変らなかった.
    7) 眠中蚕は完全な誘発抵抗性を示した.
  • 鮎沢 千尋
    1961 年 30 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    家蚕多角体病の低温処理に対する誘発抵抗性と, 普通条件での抵抗性との関連を知るため, 保存品種を供試し6蚕期にわたり低温処理による誘発率を調査し普通条件での抵抗性とを対比して考察を試みた.
    1) 誘発率の比較により, 誘発抵抗性の強い品種と弱い品種のgroupingを行なった. 強い品種には3眠蚕と4眠蚕の幼虫経過の早い品種が多く含まれている.
    2) 誘発抵抗性と, 経験的評価による普通条件での抵抗性と対比した結果,
    i) 低温誘発抵抗性の品種は普通条件でも抵抗性を示すものが多い.
    ii) 低温誘発感受性の品種は必ずしも普通条件で感受性とは限らない
    3) 従ってScreening testの方法として低温処理は極めて限定された目的にのみ有用であって実用的見地からすれば一般的には消極的であると考える.
  • 鮎沢 千尋
    1961 年 30 巻 2 号 p. 115-118
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    短時間の低温処理を断続的に2回または3回行ない, 家蚕の体腔型多角体病を誘発させて次の結果をえた.
    すなわち, 中間的25℃ 保護の時間が1時間以内の場合には, 同時間連続的に低温処理を行なったときと同程度の発病数を示し, 2時間以上の場合には断続的低温処理の個々の時間だけ処理したときの発病数と同程度に止まった.
  • 有賀 久雄, Amnuay ISRANGKUL
    1961 年 30 巻 2 号 p. 119-125
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    中腸型多角体を添食した後に現われる罹病蚕においては, 中腸前部に形成されている多角体が後部に形成されている多角体よりも大きい. しかるに低温処理後現われる発病蚕では中腸部位による多角体の大きさの差は認められなかった. 各令の幼虫に多角体を添食し, 7日目に死亡した病蚕を比較すると蚕令にかかわりなく, 形成された多角体の大きさはほぼ同じであった. 1令期に罹病した中腸型多角体病蚕を一定期間おきに観察すると, 多角体の大きさは罹病してから病蚕の中腸の多角体を測定するまでの期間が長くなるに従って漸次増大することが認められた. 極めて薄い多角体浮遊液を塗布した催青卵から孵化した幼虫は大部分対照蚕児と同様に健全に成長したが, 2令以後の各令期に中腸型多角体病が少数発生し, 特に4, 5令期になるとその数は多くなった. これらの発病蚕の中腸に形成された多角体の大きさを比較したところ4-5令で観察した多角体は2-3令で観察した多角体よりもかえって小さく, 多角体の大きさの変異も小さい傾向があった. これは孵化した幼虫の一部は1-3令期に罹病し発病するが, 一部は食下したウイルスを一時潜在状態で保持した後に, 主に4-5令期で発病したためと思われる.
  • (III) サクサンの飼育時期と多角体病の発生
    田中 茂男
    1961 年 30 巻 2 号 p. 126-130
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    長野県有明地方におけるサクサンの飼育時期 (1化目および2化目) と多角体病の発生について検討し, 次のことを知った.
    1) 1953年より1960年に至る8ヵ年の作柄を営繭歩合および死篭繭歩合によってみると1化目が常によい結果を示している.
    2) 幼虫期に発生する疾病の9割以上は多角体病であり, また2化目に特に多角体病の発生が多い.
    3) 1960年に収繭後の繭中斃蚕につき病因調査をしたところ, 1化目では27.7%, 2化目では83.9%の多角体病罹病率であった.
    4) 種繭の死篭蚕の調査では (1959年産), 多角体病発生率は1化目が24.0%, 2化目は62.5%であった. そして幼虫態斃死蚕のみならず蛹態のものでも多角体病に罹患していたものが多くみられた.
    5) このように2化目のサクサンに多角体病が多いのは, 稚蚕期の高温と5令期の低温がその誘発に関係したものと考えられる.
  • 福田 紀文, 樋口 芳吉, 松田 基一
    1961 年 30 巻 2 号 p. 131-134
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 人工飼料のみでエリ蚕を飼育し, その1世代を経過させることに成功した。創造された人工飼料の組成は次の通である。
    人工飼料の組成
    乾燥ヒマ葉粉末5.5gキナコ1.0g
    蔗糖1.0g寒天1.5g
    防腐剤混合液5ml水20ml
    2) 人工飼料で飼育されたエリ蚕の飼育成績, 生産された繭繊維および産卵成績はヒマ生葉育に比較して遜色がないかあるいは勝るものであった。
  • (III) 普通育の壮蚕期における除沙回数と蚕児の血液pHおよび発病との関係
    布目 順郎, 八幡 穣, 松原 藤好
    1961 年 30 巻 2 号 p. 135-139
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    普通育の壮蚕期において除沙頻度を少なくすると蚕児の血液pHの価が低下した。その場合の発病率は高くなった (本試験においては膿病が最も多かった)。そして少なくとも本試験での除沙頻度の範囲内では該頻度は蚕児の血液pH価に比例し, 発病率に反比例した。したがって蚕児の血液pH価を測定することによって除沙の頻度と蚕児健康度との関係を或程度知ることができるであろう。
  • (VI) CO2中における蚕児の水分蒸散, 特に気門開閉との関連において
    布目 順郎, 松原 藤好
    1961 年 30 巻 2 号 p. 140-145
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    1) 通常蚕座に含まれる範囲の種々な濃度のCO2が蚕児の水分蒸散量と気門開閉とに如何なる影響を及ぼすかについて試験し, 蚕児における水分蒸散と気門開閉との問の関係およびその蚕座気象的意義について考察した。
    2) 蚕児の水分蒸散量は5%CO2に至るまではCO2濃度の増大に伴って漸増し, 稚, 壮蚕ともその5%CO2での値は対照値の, 起蚕で2-3倍, 盛蚕で1.1-1.3倍である。他方, CO2濃度の増大に伴って気門開閉回数が漸減するとともに “閉じる運動を行う場合の閉じ残しの程度” が漸増し, 略3.7%CO2以上で開き放しになる。これらのことよりして, CO2濃度の増大に伴う水分蒸散量の増大は気門の開閉機構の変動によるものであることがわかり, 気門が水分蒸散の径路として役立っていることも判明した。これらのことは他の昆虫での場合と基本的には一致するが数値において相違する。
    3) 7.5%CO2においては気門が開き放しになるにも拘らず水分蒸散量は5% CO2での場合よりも減少するが, このことよりして蒸散量を左右する別の因子 (気門開閉以外の) の存在を想わせる。
    4) 蚕座におけるCO2と湿気とは相互に原因となり結果となって, 蚕座の温度が一定でしかも外部との間にCO2と湿気との出入がない限りは, たとえ蚕座上の桑と糞から出る分を慮外するとしても, それぞれ時間とともに累増することになる。
  • 神岡 四郎
    1961 年 30 巻 2 号 p. 146-152
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    逆走神経の切断が咽頭運動にどのような変化をもたらし, この状態の咽頭にエゼリンおよびアトロピンを加用すれば, 運動はどう変化するかを咽頭の機械曲線を求めて検討し, 大要つぎのような結果を得た。
    1) 逆走神経を切断すれば咽頭運動が促進され, あるいは逆に抑制されることがあるが, さらに特別の影響の現われないこともあり, 一定した結果は得られなかった。
    2) エゼリンの作用からみれば咽頭はいわゆる筋原性であり, その運動は逆走神経によって規制されないもののようである。
    3) アトロピンの作用の面からみれば, 咽頭運動と逆走神経との関係は明らかでない。
    4) 以上述べた外に逆走神経と咽頭との間には, この神経が咽頭筋の緊張を維持するのに役立っているのではないかなど, 今後解明を必要とする種々の問題が残されている。
  • (IV) 蚕蛾複眼のERGについて
    石川 誠男, 平尾 常男
    1961 年 30 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    黒眼 (支124号×日124号) と白眼 (第1白卵, 第2白卵等) の蚕蛾複眼を用い, 3MKClをみたした微小電極を複眼角膜表面にあけた極く小さな穴からさしこみ, さしこんだ深さに従ってERGの波形の変化するのを観察した。また光の強さ, 刺激時間を変化させて波形の変化を記録し, それらから黒眼と白眼とのERGの相違を述べた。また幼虫単眼のERGとの比較を行ない複眼と単眼のERGは似たものである可能性について推察した。つぎに暗順応の経過を追って波形を観察し, ほぼ40~50分で十分な暗順応の状態になることを示した。またERGの上に視神経からのインパルスがしばしば記録されることを示し, これよりインパルスの数は暗順応に伴なってERGの大きさと共に増加することを知った。
  • (V) 幼虫の白眼, 赤眼のERGについて
    石川 誠男, 平尾 常男
    1961 年 30 巻 2 号 p. 160-164
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    蚕児単眼の突然変異である白眼のERGを黒眼のそれと比較した。それらの波形の差異はtest flashの光の強さを増加する程, 又刺激時間を長くする程顕著になった。その相違点の主なものをあげると, 1) 特に明順応された状態では白眼のERGは陽性部分に2つの山があることが特徴である。2) 暗順応された場合に特にはっきり出てくる刺激終了後の陽性電位下降の際の “肩” の部分およびそれに続く陰性電位は白眼の反応の方が黒眼よりも大きい。
    ところがこのような波形の差異も弱い光で刺激した場合にはほとんど見わけることができないし, また一方非常に強い光で刺激した場合には黒眼でも白眼のERGに近いものが記録された。更に赤眼を用いて実験してみると白眼と黒眼との中間形のような波形が現われることがわかった。
    これらの結果から白眼, 赤眼, 黒眼のERGのちがいはそれに含まれる要素が質的に異なるのでなくて, 光感受性の違いに由来するもので, 眼の色がうすくなる程光感受性か高くなるものと推察した。
  • (I) 群馬県における調査結果
    荘野 修, 田中 辰次
    1961 年 30 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    養蚕経営の地域的特質を解明し, 経営改善の方向の地域別類型を決める一手段として群馬県域において各蚕期別掃立日を調査した結果を要約すればつぎの通りである。
    1) 春蚕・晩秋蚕掃立日の地域的分布の傾向は標高・気温の分布傾向とよく一致し, 等高線・等温線と密接に関係した同一掃立日地帯および養蚕期間の長さの等しい地帯を明瞭に認めることができる。
    2) 標高が100m高くなると, 年平均気温は群馬県では約0.6℃ 低下し, 春蚕掃立日は約5日遅れ, 晩秋蚕掃立日は約2日早くなり, したがって期間は合計約7日短縮する。
    3) 初秋蚕掃立日については, 春および晩秋蚕掃立日が自然的条件の制約をほとんど決定的に受けるのに反して, この面の制約は他の蚕期よりもゆるやかで, 養蚕部門独自の制約よりも, むしろ農家経営の他の部門よりもたらされる制約がより強く強響するものであろう。
  • (I) 伝染源としての銹胞子並びに越冬源としての桑条病斑
    西田 正
    1961 年 30 巻 2 号 p. 170-178
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    桑赤渋病の防除を目的としてまず本病原菌の伝染源ないし越冬源を究明するために, 桑葉および枝条における病斑形成と時期との関係についての調査観察, ならびに銹胞子の形成過程についての病理組織解剖学的実験を行ない次の結果を得た。
    1) 桑葉面における本病発生は, 桑品種・桑仕立法により若干の差異はあるが, おおむね条基部より8~40葉位に比較的多く, とくに13~34葉位において分布が密であり, 本病多発周期が10葉位を1周期として繰返されるが, これは本病菌の桑葉侵害週程の病理組織解剖観察の結果からも肯定された。春から晩秋に至る本病の発生周期は年間6~7回である。
    2) 桑葉上銹胞子の形成は月日の経過に従い徐々に上昇し, 個々の桑品種からみると初発後おおむね20日から約20日間最多発時期となり, 以後は急激な落下傾向を示す。その感染の激しい時期は一般的には6月下旬~8月上旬である。
    3) 桑条面の病斑は, 条基部から51~150cmに比較的多く, とくに61~120cmにおいて分布が密である。
    4) 桑条面における病斑の発生は月日の経過に従い6月上旬から徐々に増加し, 7月中旬が最も多く, 8月末以後は少なくなる。
    5) 銹胞子の感染から病斑発生迄の潜伏期間は約7日である。
    6) 銹子腔の生育期間は約11日間, 銹胞子の飛散期間は約6日間, 銹子腔の壊死期間は約4日間である。
    7) 赤渋病菌の1世代日数は約28日である。ただし銹子腔の壊死期間を除けば約24日となる。
  • (IV) 春期における桑条の糖の変化と桑品種との関係
    柏田 豊
    1961 年 30 巻 2 号 p. 179-182
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    6品種の桑について, 春期における条の糖の変化と桑品種との関係について行った実験結果の概要は次のとおりである。
    1) 発芽前冬期の休眠期の条にはスタキオース, ラフィノース (マルトース), サッカロース, グルコースおよびフラクトースが存在するが, 春期にスタキオース, ラフィノース (マルトース) およびフラクトースが消失し, サッカロースを主体にグルコースが残って, 夏期にはフラクトースが加わる。前の型を条の糖の冬型形式, 後の型を夏型形式と呼称するが, 両形式の最大の相違はラフィノースおよびスタキオースの存否である。
    2) 春期における糖の減少および消失の変化の最初の徴候はフラクトースにみられる。3) 春期の消失の場合は必ずスタキオース- ラフィノースの順であるが, これは秋期の出現の際のラフィノース→ スタキオースの順序とともに全く例外がみられず, 両糖の消失および出現に関する定則である。
    4) 供試桑品種は糖の消失状況によって, 極早生型一安東早生, 中生型一改良鼠返および収穫, 晩生型-赤木および十丈字 (市平は安東早生と改良鼠返の中間) の3型に大別される。安東早生では変化が最も早く起り, 中途で一時的にスタキオースなどの消失がみられるが, 改良鼠返では消失に至らず減少で止り, 赤木では途中の減少および消失の段階が認められない。
    5) 上の傾向は当年度の発芽調査および従来の品種の評価に合致する。
    6) 条におけるラフィノースおよびスタキオースの消失は芽そのものにおける消失よりも早い。
  • 堀田 禎吉
    1961 年 30 巻 2 号 p. 183-187
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2011/08/10
    ジャーナル フリー
    この研究は山岳林野地に桑園の新領城をひらくための命題を推進するための一つとして行った。
    ヤマグワと発育分布上すみわけのある林木にはアカマツのほかにスギ, ヒノキ, コウヤマキ, ヒバ, ネマガリダケ, ナガバネマガリダケ, チシザサなどが判明した。これらのすみわけの林相はモザイク型とユニット型の2つの系列に大別することができる。アカマツは桑樹栽培の適否上の観点から, いわば指標植物といえる。
    次にわが国におけるヤマグワとアカマヅ, スギおよびヒノキとのすみわけの実相を見ると上武・信越以北の地方ではほとんどユニット型で, それ以南の地方ではむしろモザイク型が多い。
  • 1961 年 30 巻 2 号 p. 188a
    発行日: 1961年
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
  • Y. TAKAMURA, T. SHIMOMURA, T. HIRAI
    1961 年 30 巻 2 号 p. 188
    発行日: 1961/04/30
    公開日: 2010/11/29
    ジャーナル フリー
    萎縮病にかかつた桑葉における核酸濃度
    第31回通常総会
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