日本蚕糸学雑誌
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61 巻, 4 号
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  • 林 玉清, 岩下 嘉光
    1992 年 61 巻 4 号 p. 295-299
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    天蚕, 柞蚕およびハスモンヨトウの中腸細胞と脂肪および真皮細胞における天蚕およびハスモンヨトウ核多角体病ウイルス(AyNPVおよびSlNPV) の増殖と個体内の感染経路について病理組織学的に追究した。脂肪および真皮細胞核で産生されたほとんどのヌクレオキャプシッドはエンベロープに被覆され多角体に包埋された。しかし, 3種昆虫とも感染した中腸細胞核ではエンベロープの形成が少なく, ビリオン産生も少なかった。また, 形成する多角体も少数であり, しかもビリオンを包埋しないものが多く, 包埋してもその数が少なかった。産生された多くのヌクレオキャプシッドは核膜孔を通過して細胞質内に移行し, 更に宿主細胞膜を被覆して体腔内に出芽し, 体腔内諸組織に吸着・侵入する感染経路が観察された。
  • 横山 岳, 黄色 俊一
    1992 年 61 巻 4 号 p. 300-305
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    産下直後の卵に温湯処理を施すことにより4倍体雌核発生蚕が誘発された。そのZZWW型4倍体雌核発生蚕に正常2倍体蚕 (ZZ) を交雑して得られた次代において, 全く雄蚕が出現せず, ほぼ全ての雌蚕がZZW型の3倍体である蛾区が見出された。また, Y/Y/+Y/+Y型4倍体雌核発生蚕に正常2倍体蚕 (+Y/+Y) を交配して得られた次代において黄血と白血が1:1の分離比を示す蛾区があった。これらの結果は, 4倍体雌核発生蚕の減数分裂時に, 性染色体のみならず, 第2連関群でも, 染色体が別れない場合があることを示唆する。
  • 三浦 幹彦, 菊池 雄一郎, 徐 春江, 森川 英明, 西岡 孝彦
    1992 年 61 巻 4 号 p. 306-311
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    原料繭の特性, 特に初終纎度差と不時落緒発生率が変化した時の接緒と落緒との関係について考察した。さらに, これらの変化が接緒の前後における生糸纎度に与える影響について考察を加えた。その結果, 初終度差が小さい原料繭では落緒後すぐに接緒が生起する確率はかなり大きく原料繭によっては0.9以上となることが知られた。また, この場合, 接緒が行われても生糸纎度が細限纎度以上にならない場合が10%近く出現する事が知られた。
  • 坂口 明男, 林 誠, 清水 義雄, 近田 淳雄, 清水 裕子
    1992 年 61 巻 4 号 p. 312-320
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    布の接触感は衣服の着心地を追求する上で見逃せないものである。その中でも布の表面接触状態は接触感の重要な要素と考えられるのでその両者の関連性について7種類の絹製品について検討した。自作の表面状態観察装置で0.1~20.0kgf/cm2の応力における接触状態を画像データとして採取し, ここから接触部の分布の特徴量として森下のIδを算出した。一方で接触感に関する官能検査として「暖かさ」「凹凸感」「かたさ」「滑り感」について調査し, Bradley の方法で尺度化した。それらの比較検討の結果, 接触面積が低圧力で小さく, 圧力の増加による接触面積の増加が著しい天竺編とトリコットは「かたさ」が柔らかいと評価されるとともに,「暖かさ」についても暖かいと評価された。また,「凹凸感」と「滑り感」には, 接触部分の配置が大きく影響していると考えられる。すなわち, 接触点の分布がポアソン配置に近いものほど「凹凸感」が小さく,「滑り感」が大きい。
  • 川上 裕司, 井上 正, 菊池 賢人, 高柳 美緒子, 砂入 道夫, 安藤 忠彦, 石原 廉
    1992 年 61 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    真核生物でありながら原核生物型のリボソームをもつ微胞子虫類の分類学上の位置を検討し, 真核生物の系統進化の問題について考察するために, 養蚕上の問題種であり, Nosema 属のタイプ種でもある Nosema bombycis の5SリボソームRNAのヌクレオチド配列を調べた。リボソームRNAを直接調べる酵素法に加えて, PCR法により増幅したリボソームRNA遺伝子を調べ, およそ120ヌクレオチドの配列を決定した。得られた配列を他の生物種と比較し, さらに2次構造モデルを作成して, 既に報告されている5S rRNAの2次構造モデルと比較検討したところ, N. bombycis の5S rRNAは典型的な真核生物型であった。
  • 道明 美保子, 井上 吉教, 清水 慶昭, 木村 光雄
    1992 年 61 巻 4 号 p. 328-334
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    マロニル残基を含む2種のアゾ染料 (マロン酸型のAおよびマロン酸エステル型のB) を用いて絹, ナイロン, ポリエステルを一定温度で別浴あるいは同浴で平衡染色し, 吸着等温線を求めた。また, 絹, ナイロンについては染色速度と染色物の洗濯堅牢度も調べた。B染料の各繊維に対する吸着等温線は分配型を示した。同一染料濃度における染着量の多い順は次の通りである: ナイロン>絹>ポリェステル。染色速度の測定と色濃度の測定から酸エステル型染料を用いることにより, 絹/ナイロン混紡の一浴染色が可能であることがわかった。
    また, 洗濯堅牢度は両方の染料ともやや低めであることがわかった。
  • 廣川 昌彦
    1992 年 61 巻 4 号 p. 335-340
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    黒眼・淡セーブル斑・黄血の3倍体雌蚕 {pe+re/+pere/pere, p+Y/pY, ZZT (W;2)pSa} に, 淡赤眼・姫蚕・白血の2倍体雄 (pere/pere, p+Y/p+Y, ZZ) を交配し, 産下直後卵に46℃18分間の温湯処理を行い, 黒眼・淡セーブル斑・黄血の雌133頭と黒眼・姫蚕・黄血の雄4頭を得た。この例外雄4頭を2倍体雌と交配したところ, 雌蛾6頭と雄蛾5頭が得られた。次代蚕雌雄の交配蛾区は孵化せず, 次代雄と2倍体雌の交配では1蛾区から2頭例外的に孵化したが, 次代雄はほぼ不妊であった。次代雌には, 大型卵産下蛾4頭と, 不整形卵を混産する蛾2頭がいた。このうち大型卵産下蛾1頭を, 単為発生で6代継代 (Pg1~Pg6) したところ, 後代も大型卵を産下した。また, Pg1を2倍体雄と交配したが, 受精卵は孵化せず, この雌蛾は不妊であった。さらに, Pg6の胚子で80~84本の染色体数が観察された。以上の結果から, 例外雄の発生因について考察した。
  • 滝澤 寛三, 須藤 光正
    1992 年 61 巻 4 号 p. 341-346
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料育による原蚕への脱皮ホルモン投与が吐糸営繭並びに産卵性に及ぼす影響について検討した。
    20-OH-ecdysone 投与の吐糸営繭, 蛹化に及ぼす影響は, 5齢3日目投与, 4日目上蔟以降から有効である。無投与区も投与区と同じ日に上蔟させ, 繭重 (蛹体重), 繭層重について比較した結果, 投与区は無投与区に比べ繭重は重くなったが, 繭層重は軽くなった。蛹期間, 蛹化率, 羽化率, 正常産卵蛾歩合, 受精率等にも両者間に差異がなく, また, 越年卵の孵化歩合にも差がなかった。産卵数は投与区, 無投与区とも5齢の中期上蔟から最終上蔟日まで, 発育経過に比例して多くなった。20-OH-ecdysone 投与により繭形が若干変化した。また, 投与蚕の食下量は5齢3日目までは増加したが4日目以降は減少し, 投与蚕は無投与蚕に比べ食下量が少なかった。投与濃度は, 5ppmでも有効であった。
  • 白 倫, 羊 亜平, 嶋崎 照典
    1992 年 61 巻 4 号 p. 347-354
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    定繊繰糸中の生糸繊度が細限接緒繊度以下に進入した後の生糸繊度変化の様子を二段階ランダム・ウォークとしてモデル化した。つぎにそれが繊度限界を超えて糸むら欠点になる確率を導き, それより平均糸むら欠点数の理論式を求めた。これに基づいた糸むら欠点数の影響要因を検討し, 糸むら管理基準を提案した。また理論解析の結果についてはシミュレーション実験によってその妥当性を確認した。
  • 但馬 文照, 木下 晴夫, 渡瀬 久也
    1992 年 61 巻 4 号 p. 355-360
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    本報は, 煮繭工程を適正に制御するための温度パターンを決定する方法について述べ, そのエキスパートシステムへの応用例を示したものである。
    前報では, 煮繭工程を適正に制御するための温度パターンの候補の中から最適煮繭温度パターンをファジィ推論により決定する方法について報告した。そこでは, 温度パターンの評価基準として繰糸成績を4項目にしぼって最適温度パターンを決定した。本報では, 多くの項目について評価できる, 非加法測度と加法測度を併用した多目的評価方法であるAHP法のエキスパートシステムへの適用について検討した。また, その妥当性を評価するため, 煮繭実験データを使用して, 評価基準を繰糸成績10項目にとり, システムにより最適温度パターンを決定し, 決定した温度パターンに基づき, 煮繭工程の制御シミュレーション実験を行った。その結果, 重要度を高く設定した生糸量歩合, 大中節個数等の繰糸成績の改善が図られることが確認された。
  • 節模様の統計的解析 (第2報)
    西岡 孝彦, 三浦 幹彦, 嶋崎 昭典, 森川 英明
    1992 年 61 巻 4 号 p. 361-369
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    玉糸で織られたシャンタン布面上に現れる節模様は節発生間隔の分布と織幅に依存することはすでに報告している。この報告では, 片側のミミのみからよと糸を打ち込んだ場合の節模様の特性について考察を行った。
    その結果, 任意に採られた区画面内の節数の分散は, 両側のミミで折り返した場合の特別な場合となることが知られた。すなわち, 両側のミミで折り返す織り方に比べ, 分散―面積曲線は半分の周期で変化し, 節の集中―離散を顕著に出現させることが知られた。
  • 横山 岳, 黄色 俊一
    1992 年 61 巻 4 号 p. 370-377
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    3倍体雌蚕に正常雄蚕 (2n) を交尾, 産卵 (以後 (3n×2n)卵) させるとかなりの卵が受精したが, すべて胚致死した。しかし, 3倍体の卵巣卵を単為発生させると孵化する個体があり, また, (3n×2n) 卵の産下直後に温湯処理すると孵化する個体があった。つまり, 3倍体の形成する卵の中には正常な卵が存在しており, (3n×2n)卵の致死原因は, 3倍体の形成する卵が不完全な為ではなく, (3n×2n) 卵の胚子にあることが明らかにされた。そこで, +re+re/re型3倍体, +re/re/re型3倍体にre/re型2倍体を戻し交雑した結果, +reとreの分離比は, それぞれ5:1, 1:1を示した。また, 細胞学的観察により, この (3n×2n) 卵の胚子は約70本の染色体を有する異数体であることが確認された。組織学的観察によると, 胚子に著しい異常にみられ, 様々な時期に致死していた。これらの結果から, (3n×2n) 卵は異数性により胚致死が引き起こされるものと推定した。
  • 天蚕の生活環の制御に関する研究―第8報
    橋元 進, 藤沢 巧, 桑野 栄一, 鈴木 幸一
    1992 年 61 巻 4 号 p. 378-379
    発行日: 1992/08/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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