日本蚕糸学雑誌
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48 巻, 2 号
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  • 家蚕消化液および中腸のプロテアーゼに対する作用
    江口 正治, 羽田 一郎, 巌本 章子
    1979 年 48 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    主として5齢盛食期のカイコを用い, 消化液および中腸組織のプロテアーゼに対する血液中のインヒビターの影響を調べ, 併せてトリプシンおよびキモトリプシンに対する作用と比較した。
    カイコのプロテアーゼは血液の添加によって活性が強く抑えられたが, 酵素活性-血液濃度曲線の型は消化液プロテアーゼの方が中腸のものよりもトリプシンの場合に似ていた。
    カイコの血液をセファデックスG-75カラムで分離すると, 分子量の異なる3つのインヒビターが認められた。すなわち, 最初のフラクションはカイコの消化液と中腸のプロテアーゼに有効であり, 第3番目のものはトリプシンとキモトリプシンにのみ阻害作用を示したが, 2番目のものは上記4種類のプロテアーゼをすべて阻害した。すなわちカイコのプロテアーゼと市販のプロテアーゼとの阻害パターンに差がみられた。
    つづいてインヒビターの熱安定性を調べた結果, 熱に安定な2成分 (第1および第3画分) と不安定な1成分 (第2画分) が存在することがわかった。
    またカイコの発育時期を追ってインヒビター活性を測定すると, 5齢期では発育とともに活性が減少したが, 前蛹期に一時上昇し, 蛹期には大きな変化は認められなかった。
    このような実験結果から, カイコにおける血液中のプロテアーゼインヒビターの存在意義について考察した。
  • 飯塚 敏彦, 小池 説夫, 水谷 純也
    1979 年 48 巻 2 号 p. 96-100
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉摂食時における家蚕消化液中の抗菌力の主体が, 高分子物質部分か低分子物質部分のいずれに存在するかを検討した結果, 低分子物質部分により強い力価が存在することを明らかにした。
    低分子物質としては, 消化液中に存在することがすでに明らかにされている抗菌性物質である caffeic acid を中心として, その関連化合物である chlorogenic acid, quinic acid, protocatechuic acid 等を含めた物質の抗菌力を合成培地中で検討した。その結果, 消化液のpHと同じpH値を有する合成培地中で, caffeic acid の濃度が500ppmの場合, 単一物質としても抗菌力を示すが, caffeic acid 500ppmに chlorogenic acid 1000ppmが共存した場合にはそれ以上の強い抗菌力を示し, いわゆる抗菌力の相乗作用が存在することを明らかにした。
  • 中井 沢健二, 中島 誠
    1979 年 48 巻 2 号 p. 101-105
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕卵色素の酸化的分解をできるだけ抑える為に, 全ての操作を窒素気流中で行って赤卵 (re), 正常卵 (+) および第四褐卵 (b4) の色素成分を分析した。
    赤卵には茶色を呈する多量の分画と橙色を呈する少量の分画が検出されたが, キサントオマチンは認められなかった。正常卵には少量のキサントオマチン様物質を含む橙色を呈する分画, 色調が茶色, 桃色および紫色の分画が検出され, 色調が茶色および紫色の2つの分画が圧倒的に多量であった。第四褐卵の色素成分の組成は正常卵のそれとほぼ同様であったが, 量的な点で正常卵に比しかなり少なかった。
  • 阿部 芳彦
    1979 年 48 巻 2 号 p. 106-110
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    ベン毛虫の1種, Leptomonas sp. におよぼす, アクリジンオレンジ, アジ化ナトリウムまたは高温処理の影響について観察した。
    アクリジンオレンジおよびアジ化ナトリウムは in vitro の原虫の運動性や増殖を抑えたが, in vivo ではほとんど効果がなかった。これに対し, 35℃以上の温度で24時間保護した場合, in vivo および in vitro のいずれにおいても原虫は死滅した。特に in vivo の場合には, 原虫は宿主の防御反応により体液中より除去されることが分った。
  • 萩原 応至
    1979 年 48 巻 2 号 p. 111-118
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生糸に適度の水分を付与し, 生糸を柔軟化させる目的で多くの製糸工場において用いられている水分調整室の効果とメカニズムを明らかにするため, 生糸および絹糸を30~50℃で90%RH以上の高湿下において処理し. それらの吸湿挙動から非晶領域における凝集構造変化と生糸の柔軟化効果との関連について究明し, 次の結果を得た。
    1. 30℃で90%RH以上の高湿下で処理された生糸および絹糸の非晶領域は, 水分子の侵入により比較的弱い分子間水素結合が切断され, 新らたなフリーの極性基が露出され, 比較的分子間凝集エネルギーの低い領域はより loose packing な構造に変化する。そのため生糸は吸湿性を増し, 非晶領域の一部がより緻密な構造に変化しても, その影響は殆ど受けず水の可塑効果が強く作用し, 生糸は柔軟化される。
    2. 40℃以上の高温で90%RH以上の高湿下で処理された場合は, 生糸と絹糸の構造がより緻密な凝集状態に変化し, これが支配的となり, 大きな柔軟化効果は期待できなくなると思われる。したがって水分調整室の雰囲気は本実験の範囲では30℃とし, 高湿下で生糸が十分吸湿するまで長時間処理することが望ましい。
  • 黒田 秧
    1979 年 48 巻 2 号 p. 119-122
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ幼虫の体液α-ケトグルタル酸 (α-KG) 量の定常値における品種的な差異を調べるために, 17品種を反復飼育してα-KGの定量分析をおこなった。
    その結果, 体液α-KGの定常値には品種間差異があり, その差異は飼育時期が変わっても保持されることがわかった。
    体液α-KG値の高い品種には610, アンナン, 種ヶ島および010などがあり, 低い品種には大造 (長野), 輪月, ヴァールおよび日124号などをあげることができる。しかし, 地理的品種間ではα-KG値に特徴的な差異を認めることができなかった。
    また, この有機酸量は供試品種のすべてにおいて春蚕期よりも夏蚕期の方が高く, しかも繭層重や蛹体重の変動とは逆の関係にあることがわかった。
  • 鈴木 清, 長楽 勇, 上田 悟
    1979 年 48 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    人工飼料育において掃立時の温度 (25, 30℃), 湿度 (60, 75, 92%RH) および光の3条件, とくに光周期が毛振率ならびにその後の成育に及ぼす影響について, 支那種3品種を供試して試験し, 概要つぎの結果を得た。
    1. 毛振率に及ぼす影響は光条件が最大で, ついで温度条件であり, 湿度条件の影響は小さかった。また光と温度の影響には相乗効果が認められ, 30℃明条件において毛振率は最高となり, 25℃暗条件で最低を示した。湿度は高くなるほど毛振率はわずかではあるが高くなった。
    2. 光周期が蟻蚕の摂食に及ぼす影響は明の時間が長くなるほど, また同一光周期では掃立時明において暗より毛振率は高くなった。1眠蚕体重はLD12:12を境にしてそれより明が長くても短かくても体重は重くなった。1眠蚕体重のばらつきについては掃立時の明が暗より小さくなる以外は光周期との関係では一定の傾向は認められなかった。
    3. 人工飼料適合選抜系統と未選抜系統の毛振率の差は掃立時が低温・暗条件のような環境において鮮明に現われた。また適合選抜系統と未選抜系統を交配したものの毛振率は母体に関係なく両親の中間になった。
  • I. 5齢幼虫に対する生理的影響
    釜田 壹, 島田 秀弥, 浅野 昌司
    1979 年 48 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    5齢期のカイコに幼若ホルモン活性化合物の一種である methoprene を投与し, その生理作用を明らかにし, 育蚕への利用の観点から投与時期および投与濃度について検討した。
    1. Methoprene を蚕体に塗布した場合, 投与時期が遅く, かつ投与濃度が高くなるにしたがって, 幼虫期間の延長→幼虫と蛹の中間体→永続幼虫→過剰脱皮蚕へと変化の移行がみられた。
    2. 5齢の前期および中期における投与では, methoprene に対する感受性に雌雄差はみられないが, 後期では雄が雌よりも高かった。
    3. 5齢前期の0.1~1μgの methoprene の投与は, 食桑期間が0.2~1日延長し, 営繭率および健蛹率に低下はなく, 繭重および繭層重が増加する。5齢中期の methoprene 投与は, 繭重および繭層重の増加が最も高いが. 0.1μg以上の投与量は営繭率および健蛹率が低下した。5齢後期では, 営繭に影響しない濃度範囲が狭く. 繭重の増加は少なく繭層重も低下した。
    4. 5齢36~72時間に2.5ppmの methoprene を散布すると, 食桑期間は0.5~1.3日延長し, 健蛹率の低下もなくて繭重および繭層重が増加し, 繭層歩合も低下しなかった。
    5. 2.5~10ppmの methoprene の散布は, 健蛹率がやや低下するが, 繭重および繭層重はそれぞれ10~14%および13~20%増加し, 繭層歩合もやや増加した。繭糸長, 繭糸量, 解舒率および生糸量歩合も向上した。
  • I. 装置の試作
    西出 照雄
    1979 年 48 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    抄緒部における緒糸の繊度情報を収集し, その情報に基づいて緒糸の太さを自動的に一定の範囲内に管理するための方法と装置について検討した。装置の概要は次のとおりである。
    1. 本装置は接触型電極を応用した検出端とダイオードブリッジよりなる検出部, 電圧比較による第1次制御判断部, 時間の比較による第2次制御判断部, 外部出力部および電源部等から構成された比較的簡単な装置である。
    2. 本装置は常に変動する緒糸の繊度情報を電圧量として連続収集でき, その情報に基づいて緒糸の太さを一定の範囲内に管理することができる。このことから実用面において, 本装置は索抄緒部の監視作業の軽減化, 生糸量歩合の向上および緒糸繊度の均整化等に寄与できよう。
  • 岩野 秀俊, 石原 廉
    1979 年 48 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    N.bombycis の胞子孵化条件のうち, H2O2や緩衝液 (K2CO3+KHCO3) の効果と温度の効果が共存する必要があるか否かを知る目的で実験を行ない, 次の結果を得た。
    1. 低温 (5℃) 下であらかじめH2O2に接触した N. bymbycis の胞子は孵化するよう条件付けされて, H2O2を除去しても25℃の蒸溜水中で孵化する。一方, K2CO3+KHCO3液は低温下では条件付けとして不充分である。
    2. 高温 (40℃) ではK2CO3+KHCO3液中での孵化は阻害されるが, H2O2中での孵化は阻害されない。またK2CO3+KHCO3の高い濃度 (0.1M) によって一部の胞子は孵化に向け条件付けされ, 適温 (25℃) 下では蒸溜水中で孵化する。
    3. 以上のことから, 胞子孵化に対してH2O2の作用とK+, OH-の作用は同一ではないと考えられる。また孵化の過程にはこれらの物質の作用を必要とするステツプと温度を必要とするステップがあることが分る。
  • II 装置の基本的諸特性
    西出 照雄
    1979 年 48 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    前報 (西出, 1979) で報告した構造の緒糸繊度計測制御装置の基本的な諸特性について検討し, 次の結果を得た。
    1. 緒糸に含まれている水の電気伝導度は本装置の出力電圧に影響を与え, 100μΩ/cm以下の電気伝導度範囲では, 両者の関係は直線的ではないが, それ以上になるとほぼ直線的となる。索緒および抄緒湯の電気伝導度の変化分 (約50μΩ/cm) による緒糸の繊度計測誤差は最大約6%程度と推定される。
    2. 緒糸の含水率は本装置の出力電圧に影響を与え, 含水率が約20%をこえると出力電圧は含水率の増加とともに急激に高まる。
    3. 電極間距離が長くなるに従って, 出力電圧は指数曲線的に低下する。したがって繊度計測時には電極間距離を常時一定に保持しておくことが必要である。
    4. 2800~5200dの緒糸繊度範囲内では, 繊度と出力電圧とはほぼ直線的な関係にある。
  • 第1報 枝条の伸長と根の分布
    菊池 宏司
    1979 年 48 巻 2 号 p. 152-158
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑の栽植密度と生育との関係を生態学的視点から明らかにするため, ほ場を用い実験を行なった。すなわち, ほ場は10a当り500, 1000, 3000, 6000, 10000および15000株の6段階の密度に設定した。桑品種は剣持を用い, その古条を5月中旬に畦間・株間を等間隔として方形にさし木して造成した。植付け1年目の調査結果から次のような知見を得た。
    1. 年間に伸長した平均枝条長は6000株区が最も長く, それ以外の区では密度の増加あるいは減少につれて短くなった。また, 変動係数は密植にするほど大きい傾向を示した。
    時期別の伸長量をみると, 初期では密植にするほど大きく, 次第に低い密度の区が優れるようになった。
    2. 株当りの着葉数は, 3000株以下の密度では時期の経過にともなって増加したが, 6000株以上の区では密植となるほど早期に増加傾向が停滞し, また10000株, 15000株区では減少する状態もみられた。
    開葉数は8月24日から9月7日の間では密植した区では少ない傾向がみられ, それ以後このような現象はさらに明確になった。落葉は, 密植にした場合ほど早く始まって落葉数も多くなり, 9月7日から9月21日の間では6000株区を境にして密植した区では落葉数が開葉数を上まわった。
    3. 根の水平分布は疎植にするほど広く, 根量は各区とも植付位置に近いほど多く, また, いずれの方向にも伸展した。垂直分布は密植にするほど深くなる傾向であったが, 最も多く分布した層は各区とも同じであった。
    株当りの根量は疎植にするほど多い傾向を示したが, 土地面積当りでは密植にするほど多かった。
  • III 第5齢幼虫の発育と繭の量的形質
    黄色 俊一
    1979 年 48 巻 2 号 p. 159-163
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    2化性4眠蚕どうしのT2とR4との正逆雑種, T2と1化性4眠蚕のKPとの正逆雑種, および一部R4とKPとの正逆雑種を供試し, 第5齢幼虫の成長や発育, 繭の量的形質における伴性的形質発現について検討した結果, つぎのようなことが明らかになった。
    1. T2とR4とのF1においては伴性的形質発現は高温催青蚕においてのみ認められ, 低温催青蚕においては伴性現象が消失する場合のあることが確かめられた。
    2. R4(♀)×T2(♂)やKP(♀)×T2(♂) の雌における, 幼虫の早熟化や繭の量的形質の軽量化は, アラタ体ホルモンの早期低下に関係しているものと推察された。
  • 西 寿巳
    1979 年 48 巻 2 号 p. 164-170
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    光黄変フィブロインおよびペプチドにおける, 芳香環とペプチド主鎖との共役について検討した。
    1. 光黄変絹を50℃の温水で弱い加水分解をすることによってp-オキシ安息香酸, p-オキシペンジルアルコールおよびp-オキシベンズアルデヒド, すなわちチロシンのα・β間の切断で生成したと考えられる物質を検出した。さらに, これらの他にアルカリまたは酸加水分解物中からp-オキシフェニルピルビン酸 (次項), p-クマール酸が検出された。この両者は芳香環とペプチド主鎖との間に二重結合を形成する可能性をもつ物質である。
    2. 光黄変絹の酸加水分解物から, ピルビン酸と共にチロシンのケト酸であるp-オキシフェニルピルビン酸を2, 4-ジニトロフェニルヒドラゾンとして分離した。
    3. 光黄変チロシンエチルエステルのα・β炭素間には二重結合が形成されたと考えられ, その加水分解物からグリシンを検出し, その生成図式を提案した。
    4. 光黄変絹の部分加水分解によって, 芳香環とペプチド鎖の共役した低分子量の黄色色素と非共役色素を分離した。
  • 片岡 紘三, 赤井 弘
    1979 年 48 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    4齢1日目の絹糸腺の顕微鏡観察により, 腺腔内液状絹中の小塊状フィブロインの形態が絹糸腺内でどのように変化しているかを明らかにした。
    小塊状フィブロインは球状をなし, 後部糸腺内では均一に分布してその直径は約1.6μmである。中部および前部糸腺では, 小塊状フィブロインの直径は約1μmに縮小し, 中部糸腺から前部糸腺へ流動するに従って分布密度が高まってくる。
  • 黒田 秧
    1979 年 48 巻 2 号 p. 177-178
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 阿部 芳彦, 樋口 芳吉
    1979 年 48 巻 2 号 p. 179-180
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 山口 雪雄
    1979 年 48 巻 2 号 p. 181-182
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1979 年 48 巻 2 号 p. 183
    発行日: 1979/04/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Erwinia stewartii におけるFおよびP群プラスミドの性状
    Manduca sexta の終齢期における表皮のDNA合成と体液エクジステロイド量との相関作用
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