桑の栽植密度と生育との関係を生態学的視点から明らかにするため, ほ場を用い実験を行なった。すなわち, ほ場は10a当り500, 1000, 3000, 6000, 10000および15000株の6段階の密度に設定した。桑品種は剣持を用い, その古条を5月中旬に畦間・株間を等間隔として方形にさし木して造成した。植付け1年目の調査結果から次のような知見を得た。
1. 年間に伸長した平均枝条長は6000株区が最も長く, それ以外の区では密度の増加あるいは減少につれて短くなった。また, 変動係数は密植にするほど大きい傾向を示した。
時期別の伸長量をみると, 初期では密植にするほど大きく, 次第に低い密度の区が優れるようになった。
2. 株当りの着葉数は, 3000株以下の密度では時期の経過にともなって増加したが, 6000株以上の区では密植となるほど早期に増加傾向が停滞し, また10000株, 15000株区では減少する状態もみられた。
開葉数は8月24日から9月7日の間では密植した区では少ない傾向がみられ, それ以後このような現象はさらに明確になった。落葉は, 密植にした場合ほど早く始まって落葉数も多くなり, 9月7日から9月21日の間では6000株区を境にして密植した区では落葉数が開葉数を上まわった。
3. 根の水平分布は疎植にするほど広く, 根量は各区とも植付位置に近いほど多く, また, いずれの方向にも伸展した。垂直分布は密植にするほど深くなる傾向であったが, 最も多く分布した層は各区とも同じであった。
株当りの根量は疎植にするほど多い傾向を示したが, 土地面積当りでは密植にするほど多かった。
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