セリシン量ならびに繭糸繊度を異にする生糸の脂肪酸およびアミドによる摩擦係数低減効果について調べた。試料をC
12~C
22の6種脂肪酸, 5種脂肪酸アミドおよび高級アルコール系硫酸エステル化塩のエタノール溶液で処理し, 静摩擦係数, 表面特性などを測定した。その結果, 脂肪酸処理の場合, 摩擦係数低減は, 細繭糸生糸に比し太繭糸生糸において大きく, 脂肪酸のCn別には, 分子中の炭素数の少ないラウリン酸 (C
12) やミリスチン酸 (C
14) が効果的である。脂肪酸アミド処理の場合も, 脂肪酸処理にほぼ追随した結果が得られたが, 特に太繭糸生糸に対するラウリン酸アミド (C
12) 1.0%処理による低下の度合が大きい。このような傾向は, 表面凹凸曲線から算出した十点平均粗さ (Rz), 最大高さ (Rmax) からも同様に認められ, 表面が粗である太繭糸生糸も, ラウリン酸やラウリン酸アミド処理によって耐摩耗性の向上が期待できる。
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