日本蚕糸学雑誌
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40 巻, 1 号
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  • 八尋 正樹, 林 満
    1971 年 40 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 桑冬芽をエーテル抽出し, 休眠期中 (休眠期および冬眠期) のエーテル可溶の生長抑制物質および生長促進物質の変化をペーパークロマトグラフィーにより分離した。その結果休眠 (rest) の深い時期には, 生長抑制物質が冬芽内に多量に含まれ, その抑制物質の量は休眠解除とともに減少する。なお生長抑制物質は isopropanol:ammonia:water (8:1:1v/v) の展開溶媒で主としてRf0.9~1.0に存在する。
    2) 休眠中の桑冬芽のエーテル抽出液につき, ペーパークロマトグラフィーを適用し, エールリッヒ試薬により生長調節物質のインドール反応を調査した結果, A (blue), B (blue), C (yellow→plnk) の3つのスポットが検出された。展開溶媒 ammoniacal isopropanol による1次元のRf値はA: (0.2~0.3), B (0.8~1.0), C (0.9~1.0) であった。またRf値, 呈色反応, アベナ・テストの結果から, Aはインドール酢酸, Bは中性の生長促進物質, Cは生長抑制物質であることが明らかとなった。
  • 八尋 正樹, 林 満
    1971 年 40 巻 1 号 p. 5-7
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    休眠期中および休眠解除後の冬眠期の桑冬芽につき水抽出をおこない, acidic, neutral, n-hexane の fraction にわけ, おのおのにつきペーパークロマトグラフィを適用し, アベナ伸長テストをおこない, 生長抑制物質と生長促進作用の変化を研究した。
    その結果休眠の深い時期には冬芽内の生長促進物質の活性化すなわちアベナの伸長を促進することはみとめられず, 生長抑制物質が冬芽内に多量に含まれていることがわかった。休眠解除にともない生長抑制物質 (Rf0.9~1.0) の量が減少し, 生長促進物質が活性化してアベナの伸長を促進することがみとめられた。またエーテル抽出液では認められなかったが, 水抽出の場合展開溶媒 ammoniacal isopropanol で acidic fraction に新にRf0.6~0.8の生長抑制物質が認められた。この物質は冬芽の休眠 (rest) 中にも多量に存在するが, 休眠が解除された冬眠期においても減少せず, 生長抑制作用がかなり強く残っている。この物質は萌芽前に減少することから, 休眠 (rest) と直接の関連があるよりも, 萌芽と関連がある物質ではないかと思われる。
  • (IX) 人工飼料に添加した抗生物質の動き
    児玉 礼次郎, 中筋 祐五郎
    1971 年 40 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    細菌性疾病を防除する目的で人工飼料に添加された抗生物質が飼料中および消化管内でどのように経過するかを検討した。
    (1) 抗生物質のうちには消化管液との接触によって不活化するものがある。chloramphenicol や triacetyloleandomycin は安定であり, tertiomycin や spiramycin は不安定である。
    (2) Chloramphenicol を用いてしらべた結果では1) 人工飼料に添加された抗生物質はそのかなりの量が飼料そのものに吸着される。2) 抗生物質含有飼料を食下しはじめてから大略4時間後に, 消化管内容物の抗生物質量がほぼ最大に達し, この時期の前後から糞中の抗生物質量も増加しはじめる。3) 反対に給与を続けてきた抗生物質含有飼料を抗生物質不含飼料で置換えた時には, 置換10-11時間後に消化管内容物から抗生物質を検出できなくなった。
  • IV. カイコ蛹クチクルの組織学的構造
    田中 一行
    1971 年 40 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1) 翅, 肢などの裏面, およびこれらによって被覆された胴体部など無着色部のクチクルは, いずれもエピクチクルとエンドクチクルとからなり, またその厚さも蛹体クチクルの中ではこの部分でもっとも薄くなっている。
    2) 頭部 (頭頂) におけるクチクルの外層には, 硬化はみられても色素形成は全くか, あるいはほとんどみられない。
    3) 第8腹節以後の環節接合部には体節間膜部は存在せず, その部分のクチクルは環節部のクチクルと同様4層 (エピクチクル, エクソクチクル, メソクチクルおよびエンドクチクル) からなっている。
    4) 体節間膜部のエンドクチクルは, 主としてその染色性の差から内外の2層に区別される。
    5) 層状構造をなすエンドクチクルの層数は, 特に前記1) の部分においては数層程度で極めて少ない。
    6) 表面観察で認められた不正六角形の小区分は, 切片ではいずれも真皮細胞と位置的によく対応している。
  • (IV) ウイルス濃度の相違および in vitro 処理による発病率
    宮島 成寿
    1971 年 40 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 軟化病ウイルス浮遊液 (以下ウイルスと略) を蟻蚕に4時間添食した直後 (0時間), 6, 12, 24および48時間後に5-フロロウラシル (FUと略, 5×10-4M) を連続投与して軟化病発生率を調査した。結果は48時間以内にFUを投与すると軟化病の発病を抑制する (p<0.01) が, 12時間以内の投与では更に有効であった (p<0.001)。
    2. FUの in vitro における効果を検討するため, ウイルスとFUとを無菌的に等量混合して (処理対照区はウイルスと蒸留水とを等量混合) 4℃, 24時間または37℃, 3時間静置後, 蟻蚕に4時間添食して発病率を調べたがその効果は否定的であった。
    3. ウイルスを10倍階段稀釈し (原液から10-3まで), それらの液を別別に蟻蚕に4時間添食後FU (5×10-4M) を蚕児に桑葉添食法で連続投与して軟化病発生率を検討した。この結果いずれのウイルス濃度の場合にもFUは軟化病の発病を抑制する傾向を示した。
    4. FUは昆虫を不妊にする報告があるので, 幼虫期間中 (全齢) にFU (5×10-4M) を連続投与して蛾の産卵数, 卵の孵化数, 孵化歩合を調査して不妊性を検討したが, この濃度 (5×10-4M) においては蚕に不妊の影響を与えることはなかった。
  • 坪井 〓, 本多 恒雄
    1971 年 40 巻 1 号 p. 23-31
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    2芽1節間に調製した一ノ瀬桑の古条さし木の発根に対するNAA溶液の濃度別最適浸せき時間は, 150ppmでは24時間, 300ppmでは12時間, 500ppmでは6時間, 1,000ppmでは1時間, 3,000ppmでは10分間, 5,000ppmでは5分間, そして7,500ppmでは3秒間であった。低濃度溶液 (100ppm以下) では24時間以上浸せきしても発根に対する効果は少なかった。溶液の濃度が高い場合は浸せき時間が長くなるとえき芽の発芽発育が抑制され, また薬害を生じた。
    NAA溶液の濃度別有効浸せき時間は, 150ppmでは12時間から48時間, 300ppmでは6時間から30時間, 500ppmでは3時間から18時間, 1,000ppmでは30分間から2時間, 2,000ppmでは5分間から60分間, 5,000ppmでは3秒間から30分間, そして7,500ppmでは3秒間から10分間であると考えられる。
    上記の結果および既往の成果を総合して, 著者らは実用に当っては次のような注意を必要とするとの結論に達した。1) 150~7,500ppmの範囲で濃度を異にしたNAAの溶液に長時間浸せきする場合でも, また瞬間的に浸せきする場合でも, それぞれの濃度の最適処理時間における効果はほぼ等しい。2) 浸せき時間の有効範囲は低濃度溶液の場合は広く, 高濃度溶液の場合は狭い。3) さし床の土壌水分が多過ぎたり, または地温が低温であったりする場合にはNAAの処理によって阻害効果が生ずるが, とくに高濃度溶液に浸せきした場合にその傾向が著しい。
  • 倉田 啓而
    1971 年 40 巻 1 号 p. 32-36
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    (1) 1齢にCPVに感染した蚕を無菌条件下で飼育すると, その死亡までの日数は延長し最も長かった個体では53日であった。また死亡蚕の79.7%が5齢および6齢で死亡した。
    (2) CPVに感染した蚕のなかに5眠蚕が現われ, CPVに感染する齢が若いほど多かった。
    (3) 1齢にCPVに感染した蚕でも成虫になり産卵した。多角体保持蛾の出現率 (感染蚕に対する多角体保持蛾の割合) は感染齢が高まるにしたがい高くなった。
    (4) CPV感染蚕のほとんどがCPV接種後4日目に多角体を形成していた。
    (5) 稚蚕期よりCPVに感染した蛾からの次代蚕へのCPV伝達の可能性は証明出来なかった。
  • 渡部 仁, 有賀 久雄
    1971 年 40 巻 1 号 p. 37-41
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    核多角体病ウイルスに感染したカイコにポナステロンAを注射し, 強制的に就眠状態にした場合のウイルスDNA合成と多角体蛋白質の合成を, 3Hチミジンと3Hチロシンを用いたオートラジオグラムにより調べ, つぎの結果を得た。
    1) 感染細胞では核内クロマチンの凝集期や ring zone 形成期の核に3Hチミジンの取り込みが多く, この状態は宿主個体が眠状態にあってもほぼ同様であった。
    2) 多角体形成期にある感染細胞では, 多角体周辺への3Hチロシンの取り込みが顕著であった。しかしポナステロンA処理により眠状態にある感染個体では, 3Hチロシンの多角体への取り込みは著しく抑制された。
    3) 多角体形成期にある感染真皮細胞は, 外皮蛋白質の合成能力が失われており, 宿主個体がポナステロンA処理により強制的な就眠状態に入っても, 新外皮は形成されなかった。
    以上の結果から, 核多角体病ウイルスに感染した個体では, 就眠中でも感染細胞におけるウイルスDNAの合成は進行するが, 多角体蛋白質の合成は一時的に抑制されるものと思考された。
  • 蒲生 卓磨, 一場 静夫, 宮川 千三郎
    1971 年 40 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    精練によりセリシンを除去した繭層フィブロインを蛋白分解酵素, プロナーゼPで処理し, 分解された蛋白質をLOWRYらの方法により定量し, フィブロイン分解率を算出して, 解じょ率との関係を研究した。
    異なる制御環境で営繭された場合, 分解率は28℃, 85%の高温多湿条件において高く, 23℃, 50%で低かった。この反面, 解じょ率は23℃, 50%に上蔟させたときに高く, 両形質間には負の相関関係が観察された (r=-0.8**)。しかしながら, 普通蚕室に上蔟させて調べたときにも, 両形質間には負の相関が認められたが, その係数は低かった (r=-0.42)。一方, デシケーターにより温湿度を調整した環境で営繭させたときには, 温度および湿度が高いほどフィブロイン分解率は高くなった。塩類の飽和溶液による湿度調整では, 28℃では24℃より関係湿度は低く, 吐糸速度も速いものと考えられるのに, 28℃で高い分解率を示したことからみて, 温度も湿度と同様にフィブロイン分解率に影響するものと推論した。
    分解率が温湿度の影響を受ける時期を調べたところ, 支那種 (支124号) ではその時期は上蔟の当初から3日間, 日本種 (日124号) では4日間であったが, この期間は丁度吐糸営繭の時期で, 吐糸終了後に繭が高温多湿条件におかれても分解率に変化はみられなかった。これらのことから, 分解率は吐糸により繊維化されるときの脱水, あるいは吐糸直後の繭糸の乾燥の速度により左右されるものと推論した。
  • I. ウイルス性軟化病蚕からの特異抗原の証明
    関島 安隆
    1971 年 40 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕のウイルス性軟化病の迅速な診断を行なうことを目的とし, 沈降反応について実験を行なった。FVを経口接種し発病した蚕より部分精製ウイルス液としてのFV病蚕抽出液を用いてウサギを免疫した. 得られた抗FV病蚕抽出液免疫ウサギ血清は, 重層法および寒天ゲル内拡散沈降反応によってFV病蚕抽出液と反応し, 寒天ゲル内拡散沈降反応においては少なくとも3本の沈降帯を形成した。このうち1本は蚕体正常成分と共通するものであり, 正常成分で吸収後は, 少なくとも2本の特異な沈降帯がFV病蚕抽出液や農家で発生した病蚕の粗抽出液との反応において認められた。
    また, 寒天ゲル内拡散沈降反応は, 農家において壮蚕期に発病する軟化病の比較的速やかな診断に応用し得るものと思われる。
  • 渡辺 喜二郎, 中曽根 正一, 堀江 保宏
    1971 年 40 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 1~4齢の各齢家蚕幼虫についてビタミンB群単独欠如の影響を検討した。ビタミンB群の単独欠如によって各齢とも顕著な影響が認められたが, その影響の強弱は欠如したビタミンの種類によって異なっていた。
    2. コリン, イノシット, パントテン酸, ピリドキシンおよびニコチン酸の欠如効果は強く, 欠如飼料を各齢期に与えると次齢に達する幼虫はほとんどなく, その齢期間に死亡した。
    3. チアミン, リボフラビン, ビオチンの欠如効果は比較的弱く, いずれも次齢に達したのち, 成長が漸次劣化した。
    4. 葉酸が家蚕の成長を促進することを確認したが, その欠如の影響は他のビタミンB群のいずれに比較しても微弱であった。
  • 佐藤 幸夫, 平林 潔, 石川 博
    1971 年 40 巻 1 号 p. 61-63
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エリ蚕紡績糸を用いて, 湿熱処理による収縮とそれに伴なう繊維の複屈折, 強力, 伸度の変化を測定し, 若干の考察を加えた。その結果を要約すると次のとおりである。
    1. 130℃近辺から分子配列度, および重量減少率は増すが, 強力, 伸度は低下する。160℃処理では強力, 伸度の低下が特に著しい。
    2. 収縮率は処理温度130℃以上において一定値 (3~4%) を示した。
    3. 120~130℃で強度が最大となるのは, この温度でα helix がときほぐされβ型に転移した分子が配向するためと考察した。
    4. 160℃以上における強力, 伸度の低下は, 重量減少率から考えて非結晶性領域の溶出に伴なう繊維の脆化であろうと推定した。
    5. したがって, エリ蚕紡績糸は緊張下での120~130℃の湿熱処理が効果のあることを明らかにした。
  • 1971 年 40 巻 1 号 p. 64-65
    発行日: 1971/02/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    昆虫の卵殻
    マイマイガ幼虫に起病性を示す Streptococcus faecalis 運動性菌株の性質
    マイマイガにおける流処病発生の1次性病原とそれらの役割
    リンゴの一年生苗における窒素化合物の転流
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