2芽1節間に調製した一ノ瀬桑の古条さし木の発根に対するNAA溶液の濃度別最適浸せき時間は, 150ppmでは24時間, 300ppmでは12時間, 500ppmでは6時間, 1,000ppmでは1時間, 3,000ppmでは10分間, 5,000ppmでは5分間, そして7,500ppmでは3秒間であった。低濃度溶液 (100ppm以下) では24時間以上浸せきしても発根に対する効果は少なかった。溶液の濃度が高い場合は浸せき時間が長くなるとえき芽の発芽発育が抑制され, また薬害を生じた。
NAA溶液の濃度別有効浸せき時間は, 150ppmでは12時間から48時間, 300ppmでは6時間から30時間, 500ppmでは3時間から18時間, 1,000ppmでは30分間から2時間, 2,000ppmでは5分間から60分間, 5,000ppmでは3秒間から30分間, そして7,500ppmでは3秒間から10分間であると考えられる。
上記の結果および既往の成果を総合して, 著者らは実用に当っては次のような注意を必要とするとの結論に達した。1) 150~7,500ppmの範囲で濃度を異にしたNAAの溶液に長時間浸せきする場合でも, また瞬間的に浸せきする場合でも, それぞれの濃度の最適処理時間における効果はほぼ等しい。2) 浸せき時間の有効範囲は低濃度溶液の場合は広く, 高濃度溶液の場合は狭い。3) さし床の土壌水分が多過ぎたり, または地温が低温であったりする場合にはNAAの処理によって阻害効果が生ずるが, とくに高濃度溶液に浸せきした場合にその傾向が著しい。
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