日本蚕糸学雑誌
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41 巻, 4 号
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  • III. 休眠卵の“esterase A”に対する浸酸および界面活性剤処理の影響
    甲斐 英則, 長谷川 金作
    1972 年 41 巻 4 号 p. 253-262
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の卵休眠は休眠ホルモンによって引起される。この休眠ホルモンは蛹期卵巣の炭水化物代謝に関与するばかりでなく, 卵の蛋白質代謝にも作用をおよぼす。すなわち休眠ホルモンは蛹の卵巣および蛾体内完成卵の1種のエステラーゼ (esterase A) 活性を減少させる。その結果, esterase Aは休眠卵では非休眠卵に比して非常に低い活性を示す。そこで休眠ホルモンの作用機構をこの esterase Aを通して解明するために, まず休眠卵における低 esterase A活性の原因を知る目的で以下の実験を行なった。
    1) esterase A活性の非常に低い休眠卵に即時浸酸処理を行なったところ, 処理後30分以内に esterase A活性が出現した。このことは, 休眠卵においても esterase Aが mask された形で存在することを示唆した。
    2) Esterase A活性の非常に低い休眠性完成卵を数種の界面活性剤とともに磨砕したところ, Tween 20および Triton X-100によって esterase Aが出現した。また卵磨砕液を遠心分画したところ, この Triton X-100の効果は可溶性分画においてのみ認められた。これらの結果は休眠卵においても esterase Aが mask された形で存在することをさらに示唆した。
    3) 以上の結果から, 休眠卵に esterase A活性が非常に低いのは, 何らかの物質によって本酵素が不活性化された状態で休眠卵に存在する結果であると考えられた。
  • (II) スズ酸ゲルの繊維内への沈着状態に関するX線および示差熱による研究
    坂口 育三, 平林 潔, 沢路 雅夫, 鳥井 進一, 掛川 栄弥, 塚田 まき子
    1972 年 41 巻 4 号 p. 263-268
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    この実験の結果つぎのことが明らかにこなった。
    1. スズ酸ゲル作製条件のわずかな差により, 生成したスズ酸ゲルは結晶性および結晶の大きさに著しい差が認められた。
    2. スズ酸ゲルを約1000℃位で熱処理すると, 著しく結晶性が向上し, 粒子も成長する。示差熱分析の結果, 吸着水の発散に伴い結晶化が進んだものと思われる。
    3. 絹繊維内に沈着したスズ酸ゲルは低増量率の場合には, ほとんど同じ大きさの粒子 (33Å) として繊維内に沈着する。羊毛 (37Å), 野蚕糸 (50Å) においても同様のことが見いだされた。しかし高増量率になると, 粒子の大きさも増大する傾向がある
    4. 銅キレート絹の小角散乱角の二乗に対し強度の対数をプロットした図が未処理絹と同様に直線を示さないのに対し, スズ増量絹の場合は直線を示すことから, スズ酸ゲルは絹と化学的に結合していないことが明らかである。
    5. 二重配向試料を用いて検討した結果, スズ酸ゲルは結晶構造における pleated sheet の間に, より多く沈着するのではなく, 微細空隙にはいり込むものと考察された。
  • 卯野 忠子, 須藤 光正, 原田 直国
    1972 年 41 巻 4 号 p. 269-274
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    春秋における日照不足桑葉について, フェノール性成分の変化を調べ, また人工飼料育による蚕の生育状況から葉質の劣悪化の原因を検討した。
    1. 春秋ともにフェノール性成分の変化は, クマリン類であるスコポレチンがかなりに増加, またウンベリフェロンがやや増加したが, 配糖体であるスコポリンには変化がなかった。これは日照不足の植物葉における新事実として見出された。
    2. 日照不足桑葉中では減少する栄養素を補強した組成を有する人工飼料に日覆桑葉を混入した飼料を用いて稚蚕期から壮蚕期まで通して飼育すると, 普通桑葉含有飼料で飼育した場合と比較して生育が劣った。しかし稚蚕期を普通桑葉含有飼料で飼育し, 3齢起蚕から日覆桑葉含有飼料を与えた飼育では, 生育はほとんど悪影響を受けなかった。また諸分画を添加した人工飼料による稚蚕の飼育成績は, 日照不足桑葉のクロロホルム可溶の分画が普通桑葉からえた該当分画よりやや悪かった。
    以上の結果から日照不足桑葉の葉質の劣悪化の主要な原因は, 栄養素の不足にあると考えられ, 稚蚕においては植物二次成分の影響も考えられる。
  • 小林 勝, 山口 定次郎
    1972 年 41 巻 4 号 p. 275-278
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    核多角体病ウイルスを接種したカイコの結紮分離腹部にエクジステロンを注射し, 強制的に蛹化させる処理を加えた場合の感染細胞におけるDNA合成を3H-チミジンを用いたオートラジオグラムで調べ, つぎの結果を得た。
    1) 結紮分離腹部の感染数はエクジステロンを注射することにより, エクジステロンを注射しない場合の感染数よりも増加した。
    2) エクジステロンを注射して15時間を経過した分離腹部の感染細胞核では, 対照のエタジステロンを注射しない分離腹都の感染細胞におけるよりも Virogenic Stroma への3H-チミジンの取り込み量と取り込んだ感染細胞数が多かった。したがってNPVに感染したカイコの結紮分離腹部にエクジステロンを注射して蛹化を促したものは, 対照の蛹化処理をしない分離腹部に比較して感染細胞におけるウイルスの増殖が促進されるものと考察された。
  • 井上 元
    1972 年 41 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの軟化病ウイルス (infectious flacherie virus; IFV) の感染性と抗原性に及ぼす2, 3の理化学的処理の影響について実験を行ない, つぎの結果を得た。
    1) pHの影響: pH3~12の範囲では, IFVの感染性は24時間処理しても変化がみられなかったが, pH2では著しく低下した。抗原性はpH6で比較的安定であったが, 酸性あるいはアルカリ性に傾くにつれ抗原性は消失した。
    2) 温度の影響: 70℃20分でIFVの感染性が消失したが, 50℃60分では変化がなかった。抗原性は, 温水処理の場合に70℃2秒, 50℃20分で消失したが, 乾熱処理では70℃および50℃6時間でも影響をうけなかった。
    3) 紫外線の影響: 殺菌灯 (東芝GL-15) を直上40cmの距離から照射した場合, IFVの感染性は120分後に消失したが, 抗原性は6時間の照射でも安定であった。
    4) 蛋白質分解酵素の影響: トリプシン, ペプシンおよびプロナーゼの30℃24時間処理では, IFVの感染性に変化はみられなかった。
  • (1) 病原細菌の越冬
    佐藤 守, 高橋 幸吉
    1972 年 41 巻 4 号 p. 285-293
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワ縮葉細菌病菌P. mori の越冬場所を明らかにする目的で本研究を行なった。
    1969年11月から1970年5月にかけて採集した罹病枝を供試し, P. mori の分離を試みたところ, ほとんどすべての材料から分離できた。また土壌中からの病原菌の検出に関しては直接分離培養法 (希釈平板培養法, 遠心濃縮培養法) によっては冬期の土壌中からP. mori を分離することはできなかったが, 接種培養法によって5月上旬の常発桑園土壌3区中1区でP. mori の再分離に成功した。さらに前年度の発生程度の異なる桑園6区と普通畑作地の土壌を材料として, ファージの分離を試みたところ, 前年の被害桑園のみからP. mori に寄生するファージが分離された。分離されたファージ11株のうち, 5株はP. mori にのみ寄生したが, 残りはP. phaseolicola P. glycinea var. japonica にも寄生した。
    以上の結果からP. mori は罹病枝中で越冬し, それが春の重要な第一次伝染源になるのみならず, 土壌中でも越冬する可能性が強いものと結論した。
  • (1) 梢端の成長に対する影響
    岩田 益, 中川 泉
    1972 年 41 巻 4 号 p. 294-300
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    成長盛期の条の下部へ脱葉促進の目的でエスレルを散布すると梢端部の成長も抑制される。これはその後における桑の生育と多収穫の点から問題があるので, エスレル散布によって生ずる成長抑制を回避するため, ジベレリン (GA) の効果を明らかにした。
    1. エスレル (梢端16葉から基部まで3,000ppm液) の散布日を基準に3日前, 当日, 3日後にそれぞれ梢端にGAの200ppm液を散布したところ, エスレルの被散布葉はほとんど離脱し, GAを散布した桑はエスレル単用に比べ梢端部の成長抑制はかなり軽減され, 30日後における母条の葉量は摘葉処理100に対しエスレル単用32, GA散布は約80前後であった。
    2. ジベレリン (濃度50, 100, 200ppm) を梢端15葉位まで散布した桑に対し, エスレルを梢端16葉位から基部まで散布したところ, エスレル散布葉はほとんど離脱し, 散布後初期の梢端部の成長はGAの高濃度ほどよかったが, 側芽が多く発芽成長したためにその後低下した。45日後における母条の葉量は摘葉処理区100に対し, エスレル単用84, ジベレリン散布の各区は61~68であったが, 再発枝との合計ではエスレル+ジベレリン100ppm液および200ppm各区は摘葉区に対し約50%増であった。
    3. エスレルによる形態的変化, ジベレリン散布後における梢端部の成長ならびに母条の葉量などから, ジベレリンの散布時期はエスレル散布前がやや効果的であり, その濃度は側芽の発芽成長と関係があって, 100ppmが適当とみられた。
  • KATTERA P. KASHI
    1972 年 41 巻 4 号 p. 301-304
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕 (Bombyx mori L.) の幼虫の各齢期 (II~V) において, 5種の殺虫剤の効果を胸部背面に局所施用してしらべた。どの齢期の幼虫も malathion 以外の殺虫剤にいちじるしく敏感であった。幼虫の成長につれて耐薬性の増加がみられた。この耐薬性は後続の齢期における解毒酵素の発現によるとおもわれ, 体重とは無関係であった。また家蚕幼虫は, 殺虫剤の効果と, その残留効果の生物学的定量の研究によく適することがわかった。
  • 田中 茂男
    1972 年 41 巻 4 号 p. 305-308
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    日124号, 日132号, 日134号および支124号の各蚕品種の4齢起蚕に新原虫病の小型微粒子胞子の高濃度液を添食し, 生き残った雌個体の繭重, 繭層重および産卵数を調査した。その結果, 接種個体のこれらの計量値は, 接種しなかったものに比べて明らかに小さかった。
  • 黒岩 久平, 沓掛 久雄
    1972 年 41 巻 4 号 p. 309-315
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 冷蔵浸酸卵を再冷蔵したときに出現する漿液膜細胞の異常を種々の再冷蔵の条件下で観察し, 併せて冷蔵浸酸卵の発育に伴なう漿液膜細胞の形態的変化の様相を生体観察した。
    2. 再冷蔵による漿液膜異常卵の出現率および障害の程度の重い異常卵の出現率は, 再冷蔵時の温度差が大きいほど, 再冷蔵温度が低いほど, また再冷蔵期間が長いほど高くなることがわかった。このことから白ハゼ卵出現の原因である再冷蔵時の温度差は大きいほど漿液膜細胞に与える障害の度合いが大きく, 再冷蔵の温度は低温になるほど, またその期間が長くなるほど細胞の異常化が助長されることが明らかになった。
    3. 冷蔵浸酸当初の漿液膜細胞の形態変化をみると, 越年卵の場合と趣を異にし, 第1次冷蔵中に形成された小細胞を中心とした周囲の細胞核の集団は, 浸酸後その小細胞が拡大すると同時に移動分散して核はほぼ等間隔に分布し, また核の周囲に色素粒が形成され, その色素粒は次第に細胞全域にわたって分散し, 浸酸後84時間頃の卵の漿液膜細胞は固有の形態を呈するようになる。
    4. 冷蔵浸酸後種々の時期に再冷蔵して異常卵の出現率を調べた結果, 浸酸直後から48時間後までの卵, すなわち漿液膜細胞がほぼ固有の形態に発育するまでの卵を再冷蔵した場合には比較的多数の異常卵が出現し, 特に色素粒形成期の卵 (浸酸後24~36時間目の卵) を再冷蔵した場合に障害の程度の重い異常卵を多発することが認められた。そして浸酸後60時間目以後の卵を再冷蔵した場合には異常卵の出現率は低かった。
    5. 漿液膜異常卵は異常度の高いほど孵化歩合は低下したが, 高度の異常卵が孵化できない主な原因は, 一部の細胞の異常凝集による漿液膜の収縮と漿液膜の破綻であることを示唆した。
  • 栗林 茂治
    1972 年 41 巻 4 号 p. 316-322
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1972 年 41 巻 4 号 p. 323
    発行日: 1972/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    蚕 (Bombyx mori L.) における性の人為的調節 II. 雄蚕の生存率 (孵化率) の正常な限性交雑種
    International Unit (IU) にもとずく Bacillus thuringiensis (BT) の標準生物検定の提案
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