高速液体クロマトグラフィー (HPLC) に蛍光検出器および電気化学検出器を付けてカイコ5齢幼虫体内における還元型葉酸誘導体である tetrahydropteroyl glutamic acid (H
4PteGlu), methyl-tetra-hydropteroylglutamic acid (5-CH
3-H
4PteGlu) 及び formyl-tetrahydropteroylglutamic acid (5-HCO-H
4PteGlu) の分布と動態を分析し, 哺乳類などと異なる昆虫に特異的な現象が見い出された。還元型葉酸誘導体は幼虫の体液より検出されなかった。体液以外の蚕体組織において, H
4PteGlu量は飼料へ添加された pteroylglutamic acid (PteGlu) の量によって支配される。そして, 主な存在形はH
4PteGluであり, 1炭素単位を結合した5-CH
3-H
4PteGluと5-HCO-H
4PteGlu含有量の恒常性が存在していることが明らかにされた。H
4PteGluは主に脂肪体に存在し, 幼虫の発育に伴ってその含有量が顕著に増加し, 次齢の起蚕あるいは蛹化まで貯留され, カイコ体内における貯蔵型葉酸誘導体であると考えられる。また, カイコ体内において, 多量に検出されたH
4PteGluは主としてモノグルタミン酸の形で存在していることが分かった。
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