日本蚕糸学雑誌
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68 巻, 3 号
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  • 中垣 雅雄, 守永 知彦, 周 垂欽, 梶浦 善太, 武井 隆三
    1999 年 68 巻 3 号 p. 173-180
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕濃核病2型ウイルス (中国株) の2種類のゲノムDNA (6.1kbならびに6.6kb) の感染に伴う量的変動をコンペティティブPCR法により調査した。ウイルスDNAは, 感染後50万倍以上の増加を示し, 増加曲線はその後ほぼプラトーとなった。両ウイルスDNAはいずれも眠期には減少し続け, 眠起には最大増加量の1/625までに減少した。これは, 眠中に引き起こされる中腸皮膜細胞の大幅な脱落更新によるものであろうと考えられる。複製されるウイルスDNAの増減の変化は, どちらのウイルスDNAでもほぼ同様であり, その蓄積量もほぼ同量であったので, PCR法による疫学的検出には, どちらのウイルスDNAをテンプレートとして用いてもそれほど問題はないことが明らかになった。非感受性品種では, ウイルス接種後12時間目まで, ウイルスDNA量は増加し, その後減少した。これは, 非感受性品種の中腸内でウイルスDNAの若干の複製・蓄積があったことを示すものと考えられる。感受性・非感受性品種のいずれにおいても6.1kbDNAの複製が先行したことは, 2つのDNAの複製が完全には連動していないことを示唆している。
  • 古澤 壽治, 小西 綾, 坂野 大介, 小谷 英治, 杉村 順夫, JANET M. STOREY, KENNETH B. STOREY
    1999 年 68 巻 3 号 p. 181-194
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕卵のホスホフルクトキナーゼ (PFK) の性状を知るため, 多化性品種 (N4) の卵を25℃で保護し, 産卵後6日目の卵から, Hydroxylapatite, Sephacryl S-300, 及びATP-agarose カラムによってPFKを精製した。その結果, PFKは48kDaをサブユニットとし, 主として4量体から成り, この他に6量体がみられた。しかし, 5℃や0℃に保護した卵 (N4) のPFKは6量体, および2量体として存在した。また胚発育卵のPFKは, frukutose-2,6-bisphosphate (F2,6P2), AMPや無機リン酸によって活性化されたが, 休眠卵PFKはほとんど活性化されなかった。さらに, 休眠卵 (二化性) と胚発育卵の卵齢経過に伴うPFK活性について検討したところ, 休眠卵では低活性であったのに反し, 胚発育卵では産卵6日目から孵化まで, 急激に上昇した。そして, 休眠卵や胚発育6日目の卵のPFKはリン酸化状態にあり, その後胚発育後期 (9日目) までにPFKは脱リン酸化されることによって, 活性が上昇すると推察した。以上の結果は, 家蚕卵のPFK活性は, PFKサブユニット会合に対する温度の影響, F2,6P2やAMPのエフェクター, さらにリン酸化/脱リン酸化によって調節されていることを示唆している。
  • プジャスツティ ユリア, 浅野 真一郎, 佐原 健, 伴戸 久徳, 飯塚 敏彦
    1999 年 68 巻 3 号 p. 195-199
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Bacillus thuringiensis subsp. wuhanensis は, 3種類のcry1遺伝子, cry1Ab, cry1Ac, ならびにcry1D遺伝子を有している。cry1Db遺伝子に特異的なプライマーにより, subsp. wuhanensis からcry1Dbw遺伝子をクローニングした。このcry1Dbw遺伝子の塩基配列の決定を行ったところ, 先にLAMBERT (1993) が報告している, cry1Db遺伝子と全く同じであった。Cry1Dbwと subsp. wuhanensis 結晶タンパク質はカイコ・ハスモンヨトウに対し強い殺虫活性を示した。一方, Cry1Abw結晶タンパク質は, カイコに殺虫活性を有せず, ハスモンヨトウに対してもあまり殺虫活性を示さなかった。本研究では, wuhanensis 結晶タンパク質のカイコとハスモンヨトウに対する強い殺虫活性は, cry1Dbw遺伝子によるものであること, さらにこの遺伝子が害虫防除に有用であることを明らかにした。
  • 周 垂欽, 中垣 雅雄, 滝澤 和也, 津田 英利, 梶浦 善太, 武井 隆三, 岩下 嘉光
    1999 年 68 巻 3 号 p. 201-207
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    消石灰液によるNPVの不活化効果の仕組みの一端を明らかにする目的で, 消石灰液処理による核多角体とウイルス粒子の構成タンパク質の変化を検討した。多角体を形成しているポリヘドリンが分解・低分子化し, カプシドを構築しているタンパク質も分解・低分子化することが明らかになった。精製したNPVウイルス粒子が消石灰液により溶解する過程を透過型電子顕微鏡を用いて観察した。さらに, 消石灰処理によりNPVのゲノムDNAの断片化が進行することをポリメラーゼ連鎖反応 (PCR) 法を用いて確認した。以上のことから, 消石灰液処理によるカイコ核多角体病ウイルス (NPV) の不活化機構としては, エンベロープやカプシドの溶解などによりウイルスの細胞への吸着・侵入を阻止するだけでなく, ゲノムDNAの断片化を進行させてNPVの感染力を完全に消失させるものであることが判明した。
  • 白 倫, 王 建民, 周 韶
    1999 年 68 巻 3 号 p. 209-215
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    既に与えた離散型の解じょ糸長分布に基づき, 落緒は繭糸上任意の部位で発生し, 且つ落緒率は繭糸上の連続型の分布に従うという条件のもとでの解じょ糸長, すなわち一種の連続型寿命変数の確率密度関数を導き, その平均値と分散を示した。またコンピュータシミュレーション実験により理論並びに関係結果等について検証した。
  • I. H-serotype のフローラ
    菊田 治典, 黒岩 学, 高木 龍一郎, 飯塚 敏彦
    1999 年 68 巻 3 号 p. 217-223
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    自然環境が良く保存され, 亜熱帯気候を示す屋久島各地の土壌から B. thuringiensis の分離を行ない, H-serotype フローラを示した。屋久島においては従来 B. thuringiensis の分離同定が報告されていないため, H-serotype フローラを知る上で適当な場所と考えられた。結果は以下に要約される。
    1. 屋久島35地域177地点の土壌をサンプルとし, Bacillus と考えられる菌株68,153株を分離した。その中, B. cereus 群に属する菌株は3,955株であり, B. thuringiensis は53株 (1.3%) であった。
    2. H-serotyping の結果 serovar kurstaki 24株 (43.6%), serovar galleriae 14株 (27.3%), serovar sumiyoshiensis 6株 (10.9%) が優占H-serotype であった。このことから屋久島土壌では serovar galleriae ならびに sumiyoshiensis の優占が特異な結果となった。
  • II. 殺虫活性とcry遺伝子
    菊田 治典, 黒岩 学, 高木 龍一郎, 飯塚 敏彦
    1999 年 68 巻 3 号 p. 225-235
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    屋久島各地で分離された B. thuringiensis 53株について, カイコ, Bombyx mori ならびにヤマトヤブカ, Aedes japonicus に対する殺虫活性を検討すると共に, これら菌株が保有するcry遺伝子の同定をPCR法によって行った。
    PCR法に供した oligonucleotide primer は, 生物検定にカイコならびにヤマトヤブカを材料とした関係上, cry1Aa, 1Ab, 1Ac, 1Ba, 1Ca, 1Da, 1Ea, 1Fa, 2Aa, 4Aa, 4Ba, 10Aa, 11Aa遺伝子用に用意した特異配列とした。
    serovar kurstaki 24株のcry遺伝子は Jano 9-2-2 1株のみが serovar kurstaki HD-2タイプのcry1Ac, 1Ab, を保有していたが, 残る23株はHD-1タイプのcry1Aa, 1Ab, 1Ac, を保有していた。また, cry2Aaについては serovar kurstaki すべてが保有していた。serovar galleriae 14株はすべてcryAbcry2Aa遺伝子を保有していた。本実験において, それぞれの serovar 基準株と比較してcry遺伝子比較してcry遺伝子構成が異なっていた菌株は serovar thuringiensis Koma3k-1, serovar kenyae Onos2-3, serovar israelensis Aiko2-1-1であった。
    殺虫活性検定において, カイコに対する殺虫活性から対照区として供試した serovar kurstaki HD-1を上回るLD50値を示したのは serovar kurstaki Jano 9-2-1であり, また, ヤマトヤブカに対する殺虫活性が対照区として供試された serovar israelensis を上回ったのは Aiko 2-1-1であった。これらの2株については新たなcry遺伝子構造を有する可能性が示唆された。
  • 加古 武, 片山 明
    1999 年 68 巻 3 号 p. 237-243
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    柞蚕絹織物とキトサン/ポリビニルアルコール処理をして, その織物の性質の向上を目指して, 力学的性質, 吸湿性および染色性から検討した。力学的性質や吸湿性では, 5g/lキトサン/5g/lポリビニルアルコール (PVA) 処理 (1:1) 柞蚕絹織物は5g/l, 10g/lキトサン処理柞蚕絹織物より吸水性, 吸水率, 防しわ性, 吸湿率, 白度, 耐光性が向上したが, 剛軟度, 引裂強度は若干低下した。
    染色性の検討から, 直接染料, 酸性染料, 反応染料 (アルカリ性染浴法) で, その染着性が5g/lキトサン処理柞蚕絹織物より, また直接染料, 酸性染料, 分散染料, 1:1型金属錯塩染料, 酸性媒染染料, 反応染料 (酸性染浴法, アルカリ性染浴法) では, 無処理柞蚕絹織物, 5g/l, 10g/lPVA処理柞蚕絹織物より, 優れる傾向が認められた。
  • 河口 豊, 日下部 宜宏, 伴野 豊, 古賀 克己
    1999 年 68 巻 3 号 p. 245-250
    発行日: 1999/06/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1999 年 68 巻 3 号 p. 278
    発行日: 1999年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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