クワ炭疽病の生態研究に用いるために, 本病原菌3種の
nit 変異株 (nitrate-nonutilizing mutants, 硝酸塩利用能欠損変異株) の作出を試みた。その結果,
Colletotrichum acutatum および
Glomerella cingulata の1菌株から nit 変異菌株が作出されたが, 本病の主たる病原菌である
C. dematium からは作出されなかった。また, これらの変異株は, 硝酸塩, 亜硝酸塩, ヒポキサンチン, アンモニウム塩および尿酸の5種の窒素源利用能により
nit1, Nit3, nitMにの表現型に分類された。作出された変異株とそれらの野生株とのクワ葉に対する病原性程度を比較した結果, ほとんどの変異株は野生株と同等の病原性を有していた。以上の結果より, 今回の手法により作出された変異株は, 野外での病原菌の生態研究にマーカーとして利用できうるものと考えられた。
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