催青条件の差異, 蛹期におけるSG摘出あるいは休眠ホルモン抽出物の注射などによって休眠性を人為的に変えた実験蛹を作り, これらの卵巣およびその他の組織の炭水化物量を調査した結果, 休眠ホルモンが蛹の炭水化物代謝に関与していることが判明した。
1) 大造黒および大造生の雌蛹全体の糖量は蛹期を通じてその含量は少なく, かっ量一的な変動は認め難いが, グリコーゲン量は蛹の発育にしたがって減少し, その様相は催青条件の差異によって変わらない。
2) 卵巣のグリコーゲン量は蛹の発育と共に一様に増加するが, 増加割合は大造黒の蛹の後期において特に著るしい。
3) 休眠性蛹のSGの摘出は卵巣のグリコーゲン量の減少, 血糖量の上昇, 脂肪組織のグリコーゲン量の増加を引きおこすがマルピーギ管, 中腸および蛹全体の炭水化物量には変化をもたらさない。
4) 休眠ホルモン抽出物を非休眠性蛹に注射するとその血糖量は低下し, 卵巣のグリコーゲン量は増加する。注射量が多いほど卵巣のグリコーゲン量は増加した。
5) 休眠ホルモン抽出物の注射効果は注射4時間後にすでに認められ, 血糖量については12時間後に, 卵巣のグリコーゲン量については36時間後にその効果が最大となった。
6) 休眠ホルモンの作用の1つは, 血糖の卵巣への透過かあるいは卵巣でのグリコーゲン合成能の促進作用であろうと推察した。
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