本実験は赤渋病防除に関する研究の一環として, 1954年に福島大葉, 無拳交互伐採仕立の桑園5アールを供試して, 本病の発生予察並びに誘因と合理的な防除時期の決定及びその効果の判定の要素となる銹胞子の飛散状況と各種環境との関係を5月末より8月上旬までの間, 銹胞子採集法によつて検討した。
(1) 銹胞子の飛散は天候とくに降雨と密接な関係にあり, 強雨のあつた時あるいはその直後に多く, 同じ降雨でも気温の低いときに飛散数が多い。本病の発生もこれと不可分の関係にあり, 約1ケ月で全圃場が試験調査不可能な段階にまで蔓延した。
(2) 供試圃場では収穫枝伐採後4日目の5月24日に最初の銹胞子飛散 (5個) を認め, これより40日目の7月7日に調査期間中の最多 (632個) に達し, 全圃場に発生蔓延した。
(3) 銹胞子の飛散分布には圃場内の微気象が関係し, 換気不良, 湿気の停滞がその分布を多からしめる。圃場上空における飛散は風下に多いが, 吹上げられた銹胞子は遠隔な風上にも落下する。また本病の発生分布も同傾向にあつて, 蔓延期における風向の影響は大であるが初期及び末期には大差がない。
(4) ダイセン水和剤撤布は一時銹胞子の形成飛散を抑制し得ても寄主体に侵入した菌糸の殺滅までには至らず, 短期間のうちに再び新たな飛散が始まる。また著しい伝染源となる罹病激甚部位の早期剪除は, 銹胞子の飛散を激減せしめる効果がある。
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