日本蚕糸学雑誌
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37 巻, 5 号
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  • (I) エリ蚕フィブロインの内部微細構造について
    平林 潔, 石川 博, 呉 祐吉
    1968 年 37 巻 5 号 p. 343-346
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    X線的研究よりエリ蚕フィブロインは合成 poly-L-alanine のα-form に一致すること, および赤外吸収スペクトルのアミドIIIの吸収, 赤外2色性におけるアミドIが平行2色性を, アミドIIが垂直2色性を示すことからα-helix の存在をたしかめた。
  • (II) エリ蚕糸の収縮性
    平林 潔, 鈴木 英夫, 石川 博, 呉 祐吉
    1968 年 37 巻 5 号 p. 347-352
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エリ蚕糸の収縮機構を解明しようとして実験を行ないつぎのようなことを明らかにした。
    1. エリ蚕紡績糸が約10%ほど収縮するのは単繊維自身が約8%ちぢむためで, その収縮率は理論的計算値とも一致する。
    2. 各紡績工程での単繊維の収縮率を測定した結果, 精練工程で繭糸はもっとも収縮し, その後の張力を要する工程で引き伸ばされ撚りにより固定せられる。
    3. 水分吸着量は精練糸が最も大きく, 膨潤したミセル間隙に水分が吸着されるものと考えられる。
    4. X線小角散乱強度よりGUINERの理論を用い結晶粒子の大きさを求めた結果, 未精練糸と精練糸では顕著な差は認められなかった。したがって収縮は非晶領域に基くものと思われる。
    5. エリ蚕糸に銀粒子を吸着させ, ミセル間隙の測定を行ない, 収縮の原因がミセル間隙の増大に起因することを定量的にたしかめた。
  • (I) セリシンの界面電気化学的性質について
    渡辺 昌, 青木 一三
    1968 年 37 巻 5 号 p. 353-361
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    The counterion binding of sericin in various electrolyte solutions was studied by means of the ultramicroelectrophoresis. Experiments were carried out by using negative silver iodide sols of pI 4, under the condition in which the sol particles were covered with a sufficient amount of sericin. Thus, the effect of the addition of various electrolytes on the electrophoretic mobilities was measured, and the electrokinetic zeta potential was estimated as a function of the electrolyte concentrations. The results obtained were as follows:
    1) The shift of the isoelectric point of sol particles showed that the particles were completely covered by sericin, when a sufficient amount of sericin was added to the sol. It was thus proved that the interfacial electrochemical property of sericin could be examined by using sols under this condition.
    2) Over the region more alkaline than the isoelectric point, e. g. pH 6, no cationic specificities were observed for K+, Na+, Li+ and Mg++; no charge reversals, and hence no cation bindings, were so far obtained. The observed gradual decrease in the absolute value of the zeta potential with increasing electrolyte cocentrations could be explained by the compression of the diffuse double layer. On the other hand, well-defined charge reversals, i.e. specific counterion bindings, were observed for Sn++, Al3+, and Th4+.
    3) The free energies of counterion bindings were calculated from the zeta potential-electrolyte concentration curves. It was shown that the free energy values of Sn++, or Al3+, are almost the same for sericin A and B. For Th4+, however, different values were obtained for A and B: the binding was stronger for sericin A than for B. The numbers of available sites for binding were around 1012 molecules per cm2 for all cations here examined. This appears to indicate that the same ionogenic groupings of sericin are contributing to these bindings.
    4) Over the acidic region, e.g. pH 2.5, little binding was observed between sericin and the halide or sulphate ion; the double layer compression effect was noticed. While, the citrate ion showed a slight charge reversal at comparatively high concentrations.
  • (II) 疎液性ゾルにおけるセリシンの保護作用と凝集作用について
    渡辺 昌, 青木 一三, 藤井 明, 尾野 凱生
    1968 年 37 巻 5 号 p. 362-369
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    The protection and coagulation of positive (pAg 3) and negative (pI 4) silver iodide sols by sericins were studied at various pH values. It was thus expected to have an information concerning the stability of lyophobic sols in the presence of amphoteric polyelectrolytes. Measurements were made of the turbidity change with time by using the spectrophotometer cquipped with the automatic recording device. The results obtained were as follows:
    (1) The isoelectric points of sericin A and B, which were obtained from the minimum protection of silver iodide sols, were in good agreement with those obtained previously by using the ultramicroelectrophoresis of silver iodide sols covered with these proteins.
    (2) The coagulation of sols took place over the range of pH and sericin concentration in which the sericin and sol particle charged oppositely. It was thus concluded that the coagulation was due to the neutralization of the particle charge by the adsorption of sericin molecules. The coagulating effect of sericin became weaker when the isoelectric point was approached.
    (3) The protection took place over the ranges of both acidic and alkaline sides, and the effect became weaker as the isoelectric point was approached.
    (4) The protecting power of sericin A was stronger than that of sericin B. While, the negative sol was found to be more stable than the positive sol by a factor of ten-fold, when the coagulation concentrations of sericin A and/or B for these sols were compared.
    (5) When the sericin and sol particle had opposite charges, the coagulation range increased with the increase in the ionic strength, which could be explained by the compression of the electrical double layer. In addition to this, a very slow coagulation took place over the range in which the sericin and sol particle had similar charges, if the ionic strength was high. This appeared to indicate the occurrence of the cross-linking between sol particles by sericin molecules under this condition.
  • (II) 引張り切断による繊度の減少と糸質との関係
    有本 肇
    1968 年 37 巻 5 号 p. 370-374
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    市場に出廻っている生糸の中から, 伸度, 抱合および水分率の3性状につきそれぞれ平均的な値を示す荷口の試料, 大きな値を示すものおよび小さな値を示すものの3荷口の試料を用い, それらの性状と牽引による繊度減少の多少との関係につき調査した。なお今回も前報と同様に, 各試験区とも引張り前の生糸繊度と引張り切断時の繊度とは密接な相関関係にあることが確認された。
    糸質との間には次の結果がえられた。
    1. 伸度の大きい荷口の生糸は引張りによる繊度の減少大きく, 特に伸度約20%以上になると繊度の減少割合も顕著になる。
    2. 抱合の良い生糸は一般に引張りによる繊度の減少が小さくなる。
    3. 水分率の小さい生糸は引張りによる繊度の減少が小さく, 水分率が7%になると, 減少割合は特に少なくなる。
    4. 切断伸度1%当りの繊度減少率 (準ポアッソン比) は, 水分率7%の試験区を除いて0.4~0.5%の値を示し, 特に顕著な差は見られない。
  • 諸星 静次郎, 大隈 琢巳
    1968 年 37 巻 5 号 p. 375-384
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    RALPH (1962) は食道下神経節とアラタ体一側心体の抽出物が著しく拮抗的にゴキブリの心臓搏動に作用することを報告した。蚕のアラタ体と食道下神経節のホルモンはそれぞれ若がえりホルモン, 休眠ホルモンなどとして知られているが両者の拮抗的な働きに関しては確実な実証はなされていない。そこで蚕の両ホルモンの拮抗的機能をくわしく知るため特に心臓搏動に観点をおいてこれらのホルモンの作用を調査した。これに関連させ脊椎動物ホルモンであるアドレナリンとインシュリンの影響についても調査した。無脊椎動物に対してアドレナリンとインシュリンの働きはほとんど知られていない. 蚕の逆脈の研究で横山 (1932) は幼虫及び蛾で脊脈管の頻度と方向にアドレナリンが影響することを報告している程度である. アラタ体及び食道下神経節は Ralph の抽出方法を用い蚕の幼虫からそれらの器官を取出したものから抽出したものを注射して実験を行なった。アドレナリン及びインシュリンは市販のものを使用し, 濃度を調製して実験を行なった。
    蚕の幼虫の食道下神経節の抽出物は蚕の幼虫の心臓搏動数を減じ, アラタ体抽出物は反対に増加させる傾向があって両者は拮抗的な働きをもっている。心臓搏動数の変化は抽出物中の筋肉収縮を刺激する神経ホルモンの働きによるものらしい。
    一方高等生物で拮抗的作用をもつといわれるアドレナリンとインシュリンについてみるとアドレナリンはその量を多くする場合には明らかに蚕幼虫の心臓搏動数を増加させるがインシュリンは殆んど影響がない。
    このような実験結果からアドレナリンとアラタ体の抽出物および食道下神経節の抽出物は蚕の筋収縮に影響することが明らかにされた。
  • 渡部 仁
    1968 年 37 巻 5 号 p. 385-389
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    細胞質多角体を4令起蚕に添食し, 感染個体と感染をまぬがれた個体の排出糞について, その起病性の経時的変動ならびに多角体排出の有無を個体別に調査し次の結果を得た。
    (1) 非感染個体においては, 多角体食下当初の排出糞に高い起病性が認められ, 盛食期の糞には起病性は検出されなかったが, 4眠期前後の排出糞に限り再び高い起病性が認められた。多角体はいずれの時期の糞にも存在しなかった。
    (2) 感染個体においては, 多角体食下当初の排出糞に高い起病性があり, その後の糞には起病性がなかったが, 多角体投与後3~5日目頃に再び排出糞に起病性が認められた。以後病気の進行に伴い糞の起病性は増大の一途をたどった。糞中の多角体は初めは不斉形で数も少なかったが, 発病後期の糞では斉形 (四角形) 多角体が多数出現するようになった。
  • 宮島 成寿, 川瀬 茂実
    1968 年 37 巻 5 号 p. 390-394
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の細胞質多角体病の発病におよぼす高温の影響を調査しつぎの結果を得た。
    1) 抗生物質を添加した細胞質多角体浮遊液あるいはウイルス液を蟻蚕に添食した場合, 高温 (34℃) 飼育は対照区 (25℃) に比べて明らかに細胞質多角体病の発生率を低下させた。
    2) 高温 (34℃) による細胞質多角体病の発病抑制は経口接種ならびに注射法による経皮接種の何れでも認められ, 接種ウイルス濃度が高い場合よりも比較的低い場合により顕著に認められた。
    3) 5令起蚕にウイルス液を注射し, 25℃, 30℃, 34℃で飼育した場合, 中腸組織での生成多角体の増加の勾配は30℃区が最も高く, 25℃区がこれに次ぎ, 34℃の場合には多角体形成量は著しく少なかった。
    4) 以上の結果から, 家蚕の細胞質多角体病ウイルスの増殖は高温 (34℃) において抑制されると推定した。
  • 鮎沢 千尋, 古田 要二, 児玉 礼次郎, 中筋 祐五郎
    1968 年 37 巻 5 号 p. 395-402
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕のいわゆる軟化病の発生原因として, ウイルスあるいは細菌の単一病原による単独疾患としては十分に説明できない事例にしばしば遭遇する。その発生要因の一つとして, ある種のウイルスと細菌との共同作用を考え, この試験を行なった。非無菌飼育蚕では, 各種の雑菌が存在し, 対象菌の影響が明確に証明されない懸念があるため, 人工飼料による無菌飼育法により, かつ, 個体相互の感染を排除するため個体育によって実施した。供試ウイルスとしては, その病原分布が普遍的であるウイルス性軟化病のウイルスを用い, 細菌としては, 自然発生の軟化病蚕より分離されたものであって, その分布が比較的広いと考えられ, 敗血症を起こさない菌であり, 単独接種した場合病原性が弱いもので, かつ, 細菌学的研究がある程度行なわれている菌であることを条件としてG-27 (Streptococcus faecalis-Streptococcus faecium intermediate) をとりあげ, 接種時期を種々組合せて定量的に接種し, その発病状況を検討した。
    その結果, ウイルスあるいは細菌単独接種では0~20%の発病率に止まるのに, ウイルスを接種した後, 4令あるいは5令に細菌を接種するとその発病率は50~100%と著しく増大する現象のあることが認められた。とくに, 発病に至らないウイルス微量接種の場合でも, 細菌接種によりその発病率が100%になる場合も見られた。
    病蚕の一部について, ウイルスおよび細菌の存否とその程度を検査したが, ウイルス接種を行なった区よりの発病蚕からはいずれもウイルスの増殖が確認され, 細菌接種を行なった区よりの発病蚕からはいずれもG-27のみが検出され, その生菌数は1頭当りに換算して108以上を示した。
  • (I) 12時間照明周期の成長におよぼす影響
    平坂 忠雄, 殿村 吉夫, 小山 長雄
    1968 年 37 巻 5 号 p. 403-407
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    無菌飼育環境において, 光線がカイコの成長にどんな影響を与えるかをしらべた. 光線処理は, 全明 (24L), 12時間明・12時間暗 (12L12D), 12時間暗・12時間明 (12D12L) および全暗 (24D) の4種とした。実験の結果は次のように要約される。
    1. 24Lまたは24Dでは, 幼虫の成育状態は過去の研究とほぼひとしく, 照明はカイコの成長を遅退させ, 代わりに体重および繭層重を重くする傾向がある。
    2. 幼虫期間は12L12Dがもっとも短かく (27日), 24Lがもっとも長い (30日)。その他の成育様相は12L12Dと24D, および12D12Lと24Lがたがいに相似している。
    3. 12L12Dと12D12Lとは明暗時間が同じなのに大きな成長差を生じた。これはおそらく, 前者の光条件は蟻蚕の前歴生理リズムと時刻的にある程度一致しているのに反し, 後者ではまったく逆になっており, それが環境順応上稚蚕の成長をいちじるしく不整調にさせたためと思推される。
    4. 以上のことから, 光線を適当に調整すれば, それを成長促進因子として育蚕に応用できるのではあるまいか。これらの点については現在研究中である。
  • VI. 母蛾の罹病率低下率の統計的検討と母蛾検査改良法
    大島 格
    1968 年 37 巻 5 号 p. 408-419
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    微粒子病母蛾の早期発蛾の現象を統計学的に検討した結果, 原蚕種製造家の蚕室程度の外気の激変を防ぎ得る蚕室で飼育された母蛾なら, その掃立口の母蛾の数が少なくとも5,000蛾以上あれば, 日々の発蛾の遅れに伴う累積罹病率とその低下率との関係は直線回帰をするので, その罹病率の回帰平均低下率を適用すれば, 初発蛾の罹病率がわかればそれによって求める掃立口の罹病率を推定することができる。
    しかし1掃立口の発蛾日数は母蛾数の多少と発蛾する時の温度の高低によって変化するので, 1掃立口の罹病率が同一でも回帰係数が変る。
    よって発蛾日数の長短に関係なく, また1掃立口の母蛾数に関係なく, ただ日々の累積罹病率の低下現象のみを利用することによって1掃立口の蚕種の合否を決定し得る方法を案出した。すなわち求める掃立口の初発蛾の罹病率と裕度不良率の比の上限を3とすればそれ以下の掃立口は合格となる。但し1掃立口の裕度不良率は1.16%であり, 求める掃立口の所要初発蛾数は140蛾である。しかし越年種の裕度不良率1.16%は未だ推定であるからこれを直ちに実用することはできない。しかし次の二つの場合には即時浸酸種, 冷蔵浸酸種その他総ての蚕種に直ちに適用できる。
    I. 特別軽罹病率の場合
    求める掃立口の初発蛾数30蛾の罹病率と裕度不良率1.16%との比が2またはそれ以下のときはその掃立口は合格する。
    II. 高罹病率の場合
    求める掃立口の初発蛾30蛾の罹病率と裕度不良率1.16%との比が16またはそれ以上の時はその掃立口は不合格となる。
    求める掃立口の初発蛾 (140蛾) の罹病と裕度罹病率との比が3を僅かに越える時は越えた発蛾日の蚕種を棄てれば, 比率が3またはそれ以下となった日以後の蚕種は検査しないで全部合格となる。この方法によってその掃立口の蚕種の大部分は救おれる。しかしこれは裕度不良率が確定された後でなければ実用できない。
  • 戸谷 和夫
    1968 年 37 巻 5 号 p. 420-426
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕雌蛹を5℃に長期間冷蔵すると産卵されて間もなく潰れてしまう早期潰れ卵が発現するが, この早期潰れ卵の発現と冷蔵時期との関係および早期潰れ卵発生の原因について研究した。
    (1) 早期潰れ卵の産下される順位については, 化蠕後5~7日目に冷蔵すると産卵初期に, 8日目冷蔵では主として中期に, 9~10日目冷蔵では中期および末期に, 11~12日目冷蔵では末期に産下された。産下された早期潰れ卵数は化蛹後7日目冷蔵のものに最も多く, これより冷蔵時期が早ければ早いほど, またおそければおそいほど, その数は少なくなって, 雌蛹の冷蔵時期と関連して変化することが認められた。
    (2) 早期潰れ卵となるべき卵の卵管内における分布状況は, 化蛹後1日目および3日目に冷蔵したものには発現せず, 化蛹後5日目に冷蔵したものには卵管前部に発現し, これより冷蔵時期がおそくなるにしたがって順次卵管の中部から後部に発現するようになった。卵管内潰れ卵数も産卵調査の結果とほぼ同様の傾向を示し, 化蛹後7日目に冷蔵されたものが最も多く発現し, これより冷蔵時期が早くなるか, おそくなるかにしたがって少なくなった。
    (3) 早期潰れ卵の産下順位あるいは卵管内における潰れ卵の発現部位が, 雌蛹の冷蔵時期と関連していることは, 卵細胞の発育過程で特に冷蔵によって障害を受け易い時期があることを示すものと考え, 冷蔵着手時の卵管を観察した結果, 潰れ卵となるかも知れない部位の大部分の卵細胞が包卵被膜完成期頃であった。
    (4) 早期潰れ卵には卵殻に孔の開いているものもあったが, 外見上, 孔のないものもあり, このような場合には卵殻の構造が部分的に不完全で外層, 中層を欠いたものであった。また不完全な卵殻が形成されるのは包卵被膜が, 長期間の冷蔵によって部分的に障害を受け卵殻の外層, 中層を形成することなしに退化したことによるものと判断された。
  • 間 和夫, 片桐 幸逸, 高遠 茂
    1968 年 37 巻 5 号 p. 427-433
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    農林省放射線育種場 (茨城県大宮町) のガンマー線照射圃場に, 一ノ瀬ほか14品種を栽培し, 緩照射下における放射線感受性や芽条変異の発生状況を比較した結果はつぎのとおりである。
    1. 各品種とも, 線源に近いものほど枝条の伸長は抑制されたが, 生育停止や枯死などは認められないので, 桑の致死線量は高く, 放射線感受性は低い種に属するものと考えられる。
    2. 枝条の伸長に対する抑制や帯化枝の発生などから, 放射線感受性には品種間差異が認められ, 一ノ瀬, 改良鼠返, 剣持, 大島桑, 改良赤芽魯桑, 収穫, 魯八, 国桑20号, 国桑27号, 国桑27号, わせみどり, あつばみどりは高く, 谷1258, 新桑2号, 市平は低いものと考えられる。
    3. 芽条変異の発生率は線源近くで高く, 遠いところでは低い傾向にあったが, 線源から79m (1.8R/day) でも比較的多くの芽条変異が認められた。また, 線量3kR, 30R/dayから1kR, 10R/dayの範囲で発生率が比較的高かった。
    4. 発生した芽条変異は急照射によってすでに発見されたものと同様であったが, 葉色区分キメラや不整形葉は線源からの距離に関係なく発生したが, 黄葉は線源の近くに, 羽状葉や全縁葉は比較的遠いところに認められた。また, 発生率には品種間差が認められ, 一ノ瀬, 国桑21号, あつばみどりは高く, 改良鼠返, 魯八, わせみどり, 谷1258は比較的高く, 大島桑, 国桑20号, 国桑27号, 新桑2号等は低く, 剣持, 収穫一, 改良赤芽魯桑, 市平などには認められなかった。これらと放射線感受性との関係は明らかでなかった。
  • 布目 順郎
    1968 年 37 巻 5 号 p. 434-440
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Several of the oracle bones have been explained to represent silkworms. In comparison those hieroglyphic characters with markings of the present silkworm larvae, the author assumed that above characters were inscribed to represent silkworms (Bombyx mori L.). Possibly, several strains of thc silkworm were reared in the Yin (殷) period.
    There is an oracle bone which is accepted to represent the ingathering of wild silkworm cocoons, and the kind of this wild silkworm seems to be “Pe-yen-tesan” (Rondotia menciana MOORE) which lives on mulberry trees.
    It is supposed that in the Yin period both the rearing of domesticated silkworms and the ingathering of wild silkworm cocoons were carried out.
  • 有賀 久雄, 田中 茂男
    1968 年 37 巻 5 号 p. 441-444
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    春蚕および夏蚕期にウイルス性軟化病に抵抗力の強い宝鐘×春月, 抵抗力の弱い日124×支124その他を供試し, それらの蟻蚕あるいは2令蚕児に各種濃度の軟化病ウイルスを経口接種し, 接種中あるいは接種後の飼育温度を32℃と25℃にして軟化病発生率を比較した。なおウイルス接種中の時間は10~24時間であった。
    実験の結果は第一次感染の範囲内においては, 32℃飼育の場合の軟化病発生率は25℃飼育の場合に比し低かった。ウイルス接種後をいづれも25℃で飼育した場合, 接種中の32℃飼育は25℃飼育に比し軟化病発生率が少し低い傾向が認められた。しかるに接種後飼育を長く続け, 第一次感染蚕よりの蚕座内での第二次感染による発病が起る時期までの軟化病発生率を比較した場合には, 本試験の条件では常に上記のような一定の傾向がみられるとはかぎらなった。
  • 滝沢 寛三, 八鍬 春美, 野尻 邦雄
    1968 年 37 巻 5 号 p. 445-448
    発行日: 1968/10/30
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    品種特性および幼虫の雌雄鑑別における実用上の問題として多数の保存蚕品種ならびに現行蚕品種について, 雄蚕の第12環節腹面に1対の黒点があるかいなかを調査した。その結果, 保存蚕品種では黒点をもつ蚕品種の割合は, およそ欧州種>支那種>日本種の順となり, また現行蚕品種では雄蚕に黒点のあるものは日本種にも一部認められたが, 支那種に圧倒的に多かった。また一方, 黒点のある品種とない品種との交雑では, F1において黒点のある個体とない個体が分離した。この雄蚕の1対の黒点は幼虫の雌雄鑑別において雌の生殖後腺と見誤りやすいので, 十分な注意が必要である。
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