日本蚕糸学雑誌
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44 巻, 3 号
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  • 武井 隆三, 吉武 成美
    1975 年 44 巻 3 号 p. 169-175
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    着色非休眠卵を用いて, 受精直後から休眠胚子期前までの卵内器官の形態的変化を電子顕微鏡によってしらべ, つぎの結果をえた。
    1. 漿液膜細胞: 漿液膜が形成されていない時期の卵表層細胞には多数の粗面小胞体がみられた。漿液膜が形成されてから, 漿液膜外皮は electron dense knob の出現によって剥離をはじめ卵発育に従ってその間隙は大となる。発育後期では細胞内に多数の空胞が存在し, 細胞質も正常卵に比して粗となる。
    2. 卵黄細胞: 産下後48時間に大造の非休眠卵で多くみられたP4顆粒を一部混在したP6顆粒がみられた。また正常卵に比して短桿状のP2顆粒が増加し, cytolysome と multivesicular body なども出現した。
    3. 卵黄核: 卵発育にともなって核質やクロマチンの核外放出が顕著となり, 核内の電子密度は粗となった。しかし中に核質の密なものも若干混在し, また核周辺部に粗面小胞体が多数認められた。
    4. 胚子細胞: 核は球形で新生細胞の分裂が多くみられ, また卵の発育にともなって胚子細胞への脂肪顆粒などのとりこみが多く, desmosome 形成もさかんで活発な胚体形成が行なわれてたいた。以上のような着色非休眠卵において正常卵と比較して特異的な点は, 漿液膜細胞と卵黄核における異常で, これらが非休眠性と関連があるのではないかと考えた。
  • 武井 隆三, 長島 栄一
    1975 年 44 巻 3 号 p. 176-182
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生種死卵を供試し, その初期発生の電子顕微鏡的観察を行ない次の知見をえた。
    1. 生種死卵においては, 漿液膜細胞の外皮は作られるが細胞の形成は不完全で, 色素顆粒も認められない。この卵における特異な胚子発育の原因の1つとして, 漿液膜細胞および色素の形成が不完全であることを挙げることができるように思われる。
    2. 生種死卵の卵黄細胞の消長を卵齢に従って観察した。卵黄核の変化にともなって, 卵黄顆粒にも変化がみられ, 他の非休眠卵におけると同様P2顆粒が多く認められた。また卵黄細胞の細胞膜はこわれて, 卵黄顆粒の崩機物は胚子細胞にとりこまれる。
    3. 生種死卵の卵黄核はその形態的変化などから考えて, 産下36時間後頃から崩壊のきざしをみせ, 72時間経過後にはその機能を消滅しているように思われる。この核の崩壊と卵黄細胞の変化などとの関連から, 卵黄核の働きと胚子の発育との間には密接な関係のあることが考えられた。
    4. 胚子細胞についてみると, 生種死卵の発生初期には胚子は正常に成長を続けるが, 産下48時間頃から細胞の退化がはじまり, 120時間経過の頃は細胞の崩壊するものが多くみられた。
  • 竹下 弘夫, 須藤 光正, 倉田 啓而, 坂手 栄, 松岡 道男, 重松 孟
    1975 年 44 巻 3 号 p. 183-189
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕の繭糸の生成量を支配する生物学的要因として, これに, 直接かかわる絹糸腺と体の成長について, 少糸量系および多糸量系の13品種を用いて比較調査した。
    絹糸腺の細胞数については実数として, 日本種および支那種と欧州種とのあいだに差が認められるが細胞分裂の回数からみるといずれの品種も同じでちがいがなかった。それゆえに, 絹糸腺の細胞数と繭糸量との対応関係はない。
    中部絹糸腺はその腺腔に大量に生成された液状絹を貯留するために多糸量系は少糸量系に比べ2~4倍の重さを示すが, 後部絹糸腺は体重差 (多糸量系は少糸量系の1.2~1.7倍) の範囲内でしか差は認められなかった。
    桑葉の消化率はどの品種も同じであることから体の成長量は桑葉の食下量に比例しているといえる。ところが生成繭の繭層は多糸量系が少糸量系の2~3倍となっており, このことは多糸量系の繭糸生成効率が少糸量系より高まっており, その機能としての根源は絹糸腺自体にあることを考察した。
  • 酵素の性質と分離
    巌本 章子, 江口 正治
    1975 年 44 巻 3 号 p. 190-194
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. これまで中腸組織のプロテアーゼの最遠pHは活性が低いためはっきりしなかったが, 著者らの研究で明瞭なpH-活性曲線が得られ, この曲線の型, 最遠pH値 (11.2) ともに消化液のものと極めてよく似ていた。
    2. 中腸および消化液のプロテアーゼ活性は高濃度の基質を用いると低下した。
    3. 中腸組織のプロテアーゼの細胞内局在性が明らかになった。すなわち, 多量の結合型および少量の遊離型プロテアーゼアイソザイムが認められた。
    4. セファローズ6Bを用いるカラムクロマトグラフィーによって, 消化液のプロテアーゼの2つの活性ピークがみられた。
    5. カイコの発育に伴うプロテアーゼ活性の変化を調べると, 消化液の強い酵素活性は熟蚕期前後から急激に低下し, 前蛹期から蛹前期にかけてほとんど活性がみられないが, 蛹後期になって再び活性の上昇がみられた。中腸組織のプロテアーゼ活性は5齢盛食期に最高となり, 熟蚕期以後激減し, 蛹後期に再び上昇した。
  • III. X線の照射時期と絹糸腺の発生異常との関係
    三木 六男
    1975 年 44 巻 3 号 p. 195-200
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    絹糸腺の発生時期と放射線感受性の関係を知るために, 即時浸酸後24~108時間に12時間の間隔でX線1.5KR (83R/min) を照射し, 幼虫期に絹糸腺を調査し, 以下の結果を得た。
    1. 胚子期のX線照射により絹糸腺に, 細胞の数の減少および配列の混乱, 中部糸腺と後部糸腺の分離, 後部糸腺の欠損, 分岐および末端部における異常細胞の出現がみられた。
    2. 絹糸腺のX線感受性の高い時期は即時浸酸後48~60時間で, 胚子の Stage 17 (丁B期, 最長期)に相当する。X線感受性は絹糸腺の部位により差があり, 後部糸腺は高く前部糸腺は低い。中部糸腺では後区が高く, 前区が低い。
    3. 胚子の組織学的観察の結果, 絹糸腺のX線感受性が最も高い時期は, 絹糸腺の陥入の直前である。
    4. X線による障害の種類により感受性に時期的な差がある。絹糸腺細胞数の減少は浸酸後48~60時間の照射が著しく, 中部糸腺から後部糸腺の分離および後部糸腺の欠損は浸酸後36~72時間に, 後部糸腺末端部の異常細胞は浸酸後48~108時間の照射で現われた。
  • I. 含水フィブロイン膜の乾燥速度にともなう水分拡散の変化
    北村 愛夫, 柴本 秋男, 瓜田 章二
    1975 年 44 巻 3 号 p. 201-206
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    練絹よりフィブロイン膜を作成し, このフィブロイン膜を種々の含水率にコンディショニングして, この膜に対して乾燥速度の変化を与えた場合にこれらの変化にともなってどのような凝集構造が発生するかを水分子の拡散挙動から追究し, つぎのような結果を得た。
    1. フィルム含水率が高く, しかも乾燥速度が遅い場合, 小規模のセグメント運動を十分促し, 非晶領域に多数の水素結合形成の機会を与えることになる。その結果水分子の拡散しにくい密な構造が組織される。
    2. フィルム含水率が低く, しかも乾燥速度が早い場合は分子鎖セグメントの十分な運動が期待できず水分子が除かれて, いわゆる loose packing の状態に分子鎖がセットされる。その結果, 粗な凝集構造が形成され, 水分子の拡散は容易となり, 拡散定数は大きくなる。
    3. 十分水浸処理した繭層を乾熱で乾燥する場合の乾燥時間の差異と凝集構造の変化を膨潤度およびζ-電位から追究した結果も同じ様に, 乾燥時間の短いときはセグメントの十分な運動が期待できず, ミセル界面の増大のまま固定される結果膨潤度が大きく, ζ-電位の小さい, いわゆる粗な凝集構造となることがわかった。これらの結果はフィブロインフィルムでの挙動と全く同様である。
    4. 含水フィブロイン膜の乾燥温度を70℃にすると, 含水率と拡散定数の関係は一定の傾向を示さなくなる。すでにこの温度になると非晶差セグメントの運動が水分子の存在にかかわりなく開始するとも考えられるが, この問題については非晶領域における分子間凝集エネルギーの密度分布からもさらに追究の要がある。
  • 栗栖 弌彦
    1975 年 44 巻 3 号 p. 207-211
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    1. 剛毛は極めて薄いクチクル層の毛踝で生毛細胞に接続し, 剛毛基部と毛基乳嘴との間には2~3μmの毛窩間隙が存在する。そして生毛部では, 菌糸の早期侵入像や菌糸侵入に対抗する防衛的生体反応と考えられる病変像が認められた。従って, 生毛部は硬化病菌の侵入し易い部位と考えられた。
    2. 気門室側壁はクチクル層が薄く, 構造も複雑である。気門室側壁に接して, 顕著な菌糸の侵入像や, 菌糸侵入に対抗する血球堆積現象が認められた。従って, 気門も菌糸の早期侵入部に当たると思われた。
  • 無交尾蛾の産卵リズム
    山岡 景行, 平尾 常男
    1975 年 44 巻 3 号 p. 212-219
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    自然の光条件下で蛹を保護したカイコ無交尾蛾を供試し, 数種の人為的光条件を設定し, その産卵行動の周期性を7~8日間にわたり, 連続的に追跡した。
    1. LD 12: 12とDL, 12: 12の明暗サイクル下では産卵は明から暗への切替えの数時間前から始まり, 暗から明への切替えと共に終わる周期性を示した。しかも, その産卵には2つのピークがあり, 第1は明から暗への切替時刻に, 第2は暗期の中央ないし暗から明への切替数時間前に見られた。
    羽化以前に経験した明暗サイクルの位相を逆転させたDL 12: 12の条件下では, 産卵リズムの位相の変化が起った。
    2. DDの下では, 羽化以前に経験していた明暗サイクルの暗期に相当する時間帯に集中する産卵周期を5~6日間持続し, 以後は周期性が崩れる傾向を示した。
    3. LLの下では, ほとんど周期的な産卵が認あられなかった。
    4. LD 6: 6では設定した明暗サイクルの暗期に集中した産卵リズムが5~6日間維持され, 以後は周期性が崩れた。
    5. LD 24: 24では, 羽化以前に経験した明暗サイクルと, 羽化後に新しく与えた明暗サイクルの両者に関連した産卵リズムが認められた。
    6. 用いた6実験区の産卵率を比較すると, LD 12: 12, LD 6: 6, LD 24: 24のグループが90~100%, DL 12: 12とDDが50%台, LLが20%台であった。
    7. 連続的光条件であるLLDDを除く4実験区における明期と暗期別の産卵数を統計的に比較すると, LD 24: 24以外の区では, 明期間中より暗期間中の方が産卵数が多く, その差は有意であった。
    以上の結果から, 無交尾蛾の産卵行動は外界の明暗サイクルを同調因子とする体内時計の支配下で日周リズムを示すことが明らかとなった。この体内時計は新たな明暗サイクルを少なくも1回経験すればリセットでき, 位相が決定されると同調因子を除去しても少なくも5~6日間はそのリズムを維持できるものと推定された。
  • 渡瀬 久也, 間宮 元, 唐沢 定夫
    1975 年 44 巻 3 号 p. 220-228
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    先練先染織物のたて糸用絹糸の製織準備工程および製織工程における機械的性質の変化について試験するとともに, 糸の保管方法と疲労との関係, 生糸と絹糸の疲労の違い等について検討した。
    大要つぎのような結果を得た。
    1. 生糸はソーキングにより伸度は大きく, ヤング率は小さくなった。
    2. 繰返し, 整経, 機上げ, 製織 (ワープビームから織前まで) と工程が進むにつれて絹糸は繊度が細くなり, かつ疲労が増して行った。
    3. 生糸の疲労より絹糸の疲労が大きかった。
    4. ボビン巻の状態で放置した糸 (生糸および絹糸とも) の方が, かせの状態で放置した糸より疲労が大きかった。
    5. 荷重時間48時間では, 1.50g/dあたりから絹糸に永久伸長を生じた。
  • 松崎 慶子, 吉田 美穂子
    1975 年 44 巻 3 号 p. 229-230
    発行日: 1975/06/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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