成育時期および葉位を異にする桑葉について, 120分以上光合成を行なわせた後, 暗黒状態にし, 光しゃへい後の呼吸速度の経時的変化をしらべた。その結果を要約すれば次のとおりである。
1. 桑葉の呼吸速度は葉位や成育時期によって大きく異り, 特に葉位による差が大きい。成育時期による呼吸速度の差は成育の旺盛な9月上旬までの時期と, 成育が緩慢になる9月下旬以降との間で明瞭であり, 成育の旺盛な時期でも, 老化のすすんだ葉では, 呼吸速度がかなり低下する。
2. 呼吸速度の光しゃへい後の経時的変化についてみると, 光しゃへい直後に高く, その後30~60分間にかなり低下し, ほぼ安定した水準に達する。この水準での呼吸速度は夜間の桑葉の呼吸速度を示しているとみてさしつかえあるまい。
3. したがって, 夜間の桑葉の呼吸速度は, 光しゃへい直後に測定される呼吸速度の50~60%程度と点えられ, 若い未完成葉では60%前後, 完成葉ではほぼ50%程度であるが, 老化のすすんだ桑葉や9月下旬以降の桑葉ではほぼ70~80%程度であった。
4. 葉温25℃における, 夜間の桑葉の呼吸速度は, 成育の旺盛な時期では, 未完成な若い葉で4
mg CO
2/100
cm2/hr以上, 完成葉では1
mg CO
2/100
cm2/hrさらに, 老化のすすんだ桑葉では0.5~1
mg CO
2/100
cm2/hrの水準にある。
5. 光しゃへい後の暗呼吸速度の経時的変化には気孔の閉鎖機能が関与しているものと考えられ, 露光後の光合成速度の経時的変化と合せ考えるならば, 葉令の進行にともなう, 気孔の開閉機能の低下は, 先ず, 閉鎖機能の低下となってあらわれるものと考えられる。
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