絹の形態安定性を改善し, 用途展開を計る目的で, 熱水処理や塩縮による織物の組織構造の変化を検討したところ, ストレッチ性の発揮と風合い改善に連がる示唆を得た。
羽二重やタフタなどの絹織物を, 熱水や硝酸カルシウムの濃厚溶液で処理すると, 処理条件で異なるが, たて糸とよこ糸のクリンプ変換によって, 収縮と同時にほぼ収縮量に匹敵するストレッチ性を示し, 伸長回復性も良好となった。収縮布のせん断, 曲げ特性は, たて, よこ糸の交錯圧力の減少と, たて糸のクリンプ増大, よこ糸の軸と垂直方向への収縮によって大きく異なる。無処理布とスズ増量加工布への収縮処理は, ともにせん断座屈角を大に, せん断摩擦項を小にしてライブリーな布となるが, 無処理布がよこ方向に硬さを増して, 異方性を大きくするのに対し, 増量加工布は塩縮抑制効果で, たて, よこ方向とも柔軟となり, 風合い改良に効果を示す。
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