日本蚕糸学雑誌
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56 巻, 4 号
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  • 齊藤 準, 普後 一, 中島 誠, 向山 文雄
    1987 年 56 巻 4 号 p. 273-278
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    エリサンの孵化期における羽化ホルモン (Eclosion hormone: EH) 様生理活性物質の変動と, この生理活性物質の孵化行動発現への関与について検討した。エリサン胚子からの抽出物には, カイコガおよびエリサンの潜成虫の羽化を誘導する生理活性物質が存在し, EH力価は孵化1日前より孵化当日が高かった。
    エリサン胚子を頭部と胸腹部に分離して両部位のEH活性を調べたところ, EH活性はそれぞれの部位に存在しており, 孵化直前の胚子頭部および胸腹部ではEH活性の変動がみられた。とくに胸腹部のEH活性は, 点灯後15分までに点灯時の値の約2.4倍に増加し, その後減少した。これらの結果から, 胚子中のEH様生理活性物質は, 孵化に対して関与しているものと推察した。
  • 柳田 健郎
    1987 年 56 巻 4 号 p. 279-284
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    白きょう病菌の分生胞子を添食接種して, 蚕への経口感染を検討した。
    蚕の消化液に白きょう病菌を接種すると, 分生胞子の発芽や菌糸の発育が観察された。また, 皮膚に付着した分生胞子の殺菌には70%エタノール浸漬処理が有効であった。添食接種後, 蚕体表面に付着した分生胞子は70%エタノール浸漬処理によって殺菌した。2齢及び3齢起蚕に白きょう病菌を添食すると, 硬化病によって死亡した。添食接種による死亡蚕数は経皮接種によるよりも少なかった。添食接種による死亡蚕の発生は慢性的で, しかも眠期に集中した。5齢起蚕に添食接種すると, 不結繭蚕の半化蛹体や蛹体で死亡した。これらの多数の蚕の消化管から白きょう病菌が検出された。
  • 柳田 健郎, 岩下 嘉光
    1987 年 56 巻 4 号 p. 285-291
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Beauveria bassiana による蚕への経口感染の可能性が示されたので, 添食接種した蚕の消化管の病変を光顕及び電顕によって観察した。そして, Beauveria bassiana による経口感染を組織学的に検討した。2齢蚕に白きょう病菌の分生胞子を添食接種すると, 消化管内で分生胞子の発芽が観察された。消化管内で菌糸が繁殖するとまもなく, 円筒細胞の先端部が膨化し, 円筒細胞は崩壊した。更に菌糸が盃胞内に侵入すると, 盃状細胞のミクロビリーはラメラ状に変形し, 盃状細胞は崩壊した。中腸の崩壊にともない, 細胞間隙から中腸組織内へ菌糸の侵入が観察された。中腸組織への直接的な菌糸の侵入は観察されなかった。これらの結果から, 白きょう病菌による経口感染は菌糸から分泌された毒素などによる中腸組織の崩壊後, 中腸組織内に形成された細胞間隙から体腔内への菌糸の侵入によって生起し, 中腸組織への直接的な菌糸の侵入によって起こるものでないことが推察された。
  • 瓜田 章二, 北村 愛夫, 柴本 秋男
    1987 年 56 巻 4 号 p. 292-299
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑廃条木質部を利用して, トリアセテート (tri-CA), ジアセテート (di-CA) 膜およびこれらとポリメチルメタクリレート (PMMA) とのブレンド膜を製造し, その膜の凝集構造を, 溶液還元粘度, 膜の熱的性質および粘弾性挙動から明らかにした。還元粘度の濃度依存性より想定される分子凝集構造は, tri-CAがdi-CAより密と考えられた。熱分析から, tri-CAとdi-CAの間でも, また溶媒の種類によっても異なる熱挙動が示され, tri-CAのガラス転移点はdi-CAより高温側に存在すると考えられた。粘弾性挙動からも, 熱分析の結果と同様なガラス転移点が想定され, 従来のCA膜に比し, tri-CA, di-CA膜共に位相角δは小さいが, 弾性率E*は高かった。CA膜の凝集構造は, 脱溶媒速度と溶媒極性によって支配決定される温度領域ないし酢化度と分子量の支配を受ける温度領域とが存在すると考えられた。PMMAとのブレンド効果は十分と考えられた。
  • 朝倉 哲郎, 山口 禎二
    1987 年 56 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    家蚕絹フィブロインの Silk I構造に関する3つのモデルを, 13C固体高分解能CP/MAS NMR化学シフト, 13C-1H長距離カップリング定数3JC′-N-Cα-H, X線回折データならびに水和を考慮したコンホメーションエネルギーの計算結果に基づいて, 新らたに提案した。
  • 河口 豊, 土井 良宏, 藤井 博
    1987 年 56 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコの雌蛹に生体染色に用いられる酸性色素トリパンブルーを投与して卵形成に及ぼす影響を調べた。その結果, 造卵数が減少すると共に, 卵殻表面構造の異常, 卵形の不斉, 小形化を来すことが観察された。しかもこれらの異常の程度は投与時期が早く, 卵形成の初期から色素の影響を受けた場合ほど著しい。卵殻及び卵形に異常を呈した卵では, 異常の程度に対応して卵黄タンパク質含量が低下し, 最も著しい場合で対照区の約50%であった。卵黄タンパク質は電気泳動的に14成分に分画され, 異常卵でも質的には相異はないものの, 異常が甚だしくなれば濃度が低下する成分の数が増加する。これに対して卵殻を構成するタンパク質21成分には質的に相異がないのみならず, 濃度的にもほとんど差異は認められなかった。これらの結果から, 色素は卵細胞への卵黄タンパク質の取り込み過程及び卵殻タンパク質の分泌と構築の過程を阻害するものであると考えられる。
  • 瓜田 章二, 池田 禎光, 杉浦 正昭
    1987 年 56 巻 4 号 p. 313-317
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    実用膜開発の観点から, 桑条木質とトリ-n-アミルフォスフェイト (TAP) より調製したセルローストリアセテート (tri-CA) 可塑剤膜をピクリン酸の共役輸送膜として用いたところ, ピクリン酸イオンの濃度勾配に逆らった輸送現象が観測された。ピクリン酸イオンをキャリア輸送する担体は可塑剤兼用のトリ-n-アミルフォスフェイトを用いた。ピクリン酸イオンの濃度勾配に逆らった輸送は, 膜の一方の外側溶液に加えられたカリウムイオンの流れを駆動源とした。ピクリン酸イオンの移動は非常に速かった。透過のイオン全流束は膜厚が薄い程大きくなった。
  • 鈴木 健夫, 河野 清
    1987 年 56 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    生長期のクワ枝条頂芽の除去による側芽の発芽・生長を調べるため, 根刈仕立, 春切クワ (品種,“しんいちのせ”) から伸長した枝条の最大光葉の下の節間を5月31日から10月2日まで経時的に摘芯した。(1) 1株中の1本の枝条を摘芯 (摘芯区), さらに上位から1/2までの葉身 (摘芯・1/2摘葉区) あるいは下位までの総ての葉身 (摘芯・全摘葉区) を除去した結果, 側芽の発芽 (発芽枝条率, 発芽した1枝条当りの発芽側芽数) はいずれも摘芯・全摘葉区>摘芯・1/2摘葉区>摘芯区であり, 発芽までに要した平均日数もこの順序で短かったが, 形成された1分枝当りの伸長生長はこの逆であった。(2) 1株中1本の枝葉を (1) と同じように摘芯あるいは摘芯・全摘葉して他の枝条は摘芯と同時に基部伐採した結果, (1) よりも発芽枝条率, 発芽側芽数が高まるとともに株からもよく発芽した。しかしながら (2) の摘芯・全摘葉区においても最多発芽側芽数は8月9日の上位の9芽であった。
  • 塚田 益裕, 塩崎 英樹, 奈倉 正宣
    1987 年 56 巻 4 号 p. 323-329
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    異なる官能基数を有する4種類のエポキシド (グリシドール, エチレングリコールジグリシジルエーテル, トリルグリシジルエーテル, レゾルシノールジグリシジルエーテル) により加工した絹糸の機械的性質ならびに構造特性を明らかにすることを目的として, 強度・伸度測定の他, X線回折, 熱機械測定を行った。
    グリシドール加工の場合を除き, 1時間のエポキシド加工により絹糸の切断強度・伸度は共に最大値を示した。分子の両端にエポキシド基を持った化合物を用いることで, 絹糸の強力・伸度は明瞭に増加した。エポキシド加工による絹糸の結晶性ならびに分子配向度の変化は観察されなかった。エントロピー弾性に基づき300℃以上に現れる絹糸の収縮開始温度は, エポキシド加工を施すことで高温側へと移行した。
    以上のことから, エポキシドは, 主として絹フィブロイン分子の側鎖部分と反応し, 近接分子間に架橋を形成するものと考察された。
  • 下郡 洋一郎, 浦野 松幸
    1987 年 56 巻 4 号 p. 330-337
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    脱脂大豆粉末または乾燥卵白により窒素化合物含有量の異なる飼料を調製し, 5齢期における排泄物中の尿酸および尿素の排泄量を測定したところ, 窒素化合物の最終代謝生産物は尿酸より尿素の方が多いことが判明した。飼料中の窒素化合物含有量の増加により尿酸の排泄量は増加したが, 尿素の排泄量は脱脂大豆粉末区では減少するが乾燥卵白区では増加することが見い出された。排泄物量より尿酸および尿素を差引いて算出した近似乾物消化率, 窒素化合物の近似消化率の値は従来法と比較して各々1.5~4.3%, 9.3~20.6%高くなり, その差は無視できないと推察された。排泄された尿酸および尿素の比率から, 体内に蓄積された窒素化合物の代謝時のエネルギー量を求め, 飼料の代謝エネルギーをこの値にて補正して求めたところ, 従来法で得た値より5.4~8.0%低い値となった。以上の結果から, 飼料原料の実測栄養価を比較する場合, 排泄物中の尿酸および尿素量を考慮する必要性が推察された。
  • 中垣 雅雄, 武井 隆三, 長島 栄一
    1987 年 56 巻 4 号 p. 338-342
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    伝染性軟化病ウイルス (IFV) と濃核病ウイルス (DNV) に感染した病蚕からの硫安塩析によるウイルス精製法を検討した結果, IFVの場合には40~55%飽和, DNVの場合には55%飽和の濃度において収量が最大であった。また密度勾配遠心法によるIFVやDNVの精製を, これまでのスイングロータを用いる方法からバーティカルロータを用いる方法に変更すると, 遠心時間が短縮し, 精製効率の向上することが明らかになった。36mlのショ糖密度勾配 (10~40%) におけるIFVとDNVの分離は85,000g, 30分の遠心で完了した。
  • 待田 行雄, 森 精
    1987 年 56 巻 4 号 p. 343-349
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    セリシン量が異なる数種の系統の繭糸断面を透過型電子顕微鏡により観察して, 繭糸の超微構造を明らかにし, セリシン層が最大4層に識別できることを見出した。すなわち, セリシン層は外側から順に泡状物を含んだ暗調なa層, 明調なb層, 泡状物を全く含まない暗調なc層およびセリシンとフィブロインの混合層 (d層) の4層からなることが確認された。a, b, c, d層の量比を標準系繭糸について測定した1例は3:1:12:1であったが, 系統並びに繭糸中の部位により量比は異なっていた。営繭吐糸運動で繭糸が湾曲した部分では対をなすブラン (brin) が離れるが, それぞれのブラン間は紐状のセリシンで連絡され, その中にフィブロインがブランから分岐して人り込んでいた。Nd蚕繭糸にはフィブロインと考えられる線状の明調域が存在した。繭糸断面積に対するセリシン層の面積比と繭糸の練減率との間には良好な直線関係が認められた。
  • 1987 年 56 巻 4 号 p. 350
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    条桑収穫後の桑の再生長にともなう炭水化物, アミノ酸とアデニンヌクレオチドの移動
    カイコにおける着色非体眠卵の胚子休眠に関する研究: 胚発生の遺伝的制御
  • C. V. NARASIMHA MURTHY, H. K. HURKADLI, B. S. THYGARAJA
    1987 年 56 巻 4 号 p. 351-352
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 松野 瑞彦, 土井 則夫, 仁科 祥次郎
    1987 年 56 巻 4 号 p. 353-354
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 川瀬 茂実, 関 宏夫
    1987 年 56 巻 4 号 p. 355-356
    発行日: 1987/08/28
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 1987 年 56 巻 4 号 p. 358
    発行日: 1987年
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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