異なる官能基数を有する4種類のエポキシド (グリシドール, エチレングリコールジグリシジルエーテル, トリルグリシジルエーテル, レゾルシノールジグリシジルエーテル) により加工した絹糸の機械的性質ならびに構造特性を明らかにすることを目的として, 強度・伸度測定の他, X線回折, 熱機械測定を行った。
グリシドール加工の場合を除き, 1時間のエポキシド加工により絹糸の切断強度・伸度は共に最大値を示した。分子の両端にエポキシド基を持った化合物を用いることで, 絹糸の強力・伸度は明瞭に増加した。エポキシド加工による絹糸の結晶性ならびに分子配向度の変化は観察されなかった。エントロピー弾性に基づき300℃以上に現れる絹糸の収縮開始温度は, エポキシド加工を施すことで高温側へと移行した。
以上のことから, エポキシドは, 主として絹フィブロイン分子の側鎖部分と反応し, 近接分子間に架橋を形成するものと考察された。
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