カイコ (
Bombyx mori) の胚の形態形成に関与するホメオティック遺伝子の発現を解析するため, ホールマウント法による
in situ ハイブリダイゼーションを試みた。カイコのアンテナペディア遺伝子 (
BmAntp約2Kb) のcDNAクローンの5′上流域からホメオボックスを含む領域までを3つに分け (540bp, 280bp, 280bp), それぞれをpGEM3Zf (+) にサブクローニングした。これらの3つのサブクローンからジゴキシゲニンで標識したリボプローブを作出し, ステージ17 (腹肢突起発現期) からステージ22 (反転期) までの胚の
in situ ハイブリダイゼーションを行った。その結果, センスRNAをプローブに使った場合ではシグナルは全く検出されなかったが, 逆方向のアンチセンスRNAを用いた場合では, 胸部第一体節で最も強く, 続いて第二, 第三体節の順で特異的なシグナルが見られた。また, 腹部第一から第七あるいは第八体節にわたって非常に弱いシグナルが検出できた。さらにステージ20 (頭胸分化期) 以降では, 胸肢ばかりではなく腹肢や気門, 中枢神経系において強いシグナルが見られた。3種のサブクローンのいずれにおいても, クローンの違いによる発現部位の差異は認められなかったが, ホメオボックスを含むクローンでは5′上流域を含むクローンに比べて全体的にシグナルが弱かった。以上のことから, カイコのアンテナペディア型遺伝子は腹部においてもわずかながら発現されるものの, 本質的には胸部の形態形成に関与する遺伝子であると考えられた。
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