日本蚕糸学雑誌
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63 巻, 3 号
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  • RAMAN SURESH BABU, DAVID DORCUS, MUNISAMY VIVEKANANDAN
    1994 年 63 巻 3 号 p. 175-182
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    天然殺虫源の植物抽出物を使って桑の tukara 病を防除するため, 予備試験を最初に行った。その方法は最も簡単であり, どんな養蚕家でもほとんどあるいは全く訓練なく行えるだろう。次のような植物, Azadirachta indica, Rhizophora apiculata, Adathoda vasica, Parthenium hysterophorus, Lantana camaraProsopis juliflora から水溶性の葉抽出物を調整し, tukura 病防除のため M-5, S-13, MR-2, Kosen, BC-59とTr-4の桑系統へ直接葉面噴霧した。その抽出物の噴霧は既に病徴を呈している葉の病害を防除できなかったが, 供試した全ての桑系統で病害の拡散を大変顕著に抑制した。水抽出物の調整に使った植物のうち, Azadirachta indicaAdathoda vasica は tukura 病防除に大いに有望である。抽出物の葉面噴霧は“tukura”感染桑葉の栄養状態と水分含量に影響しなかった。そして, 事実上全ての桑因子 (モリン因子), つまり嗅覚誘引物質, かみつき因子, 咀嚼因子はそのままであることがわかった。葉面噴霧した水抽出物はカイコ幼虫の飼育に適当であり, 営繭に影響しなかった。
  • RAMAN SURESH BABU, DAVID DORCUS, MUNISAMY VIVEKANANDAN
    1994 年 63 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    Tukura 病は1992年12月から3月までM-5, MR-2, Kosen, 一ノ瀬, Gosoerami, BC2-59, Tr-4とS-13桑系統に観察された。病徴は一ノ瀬でより重く, Kosen とBC2-59で軽かった。その植物が正常な成長を再開したとき, 最初に報告したように患部から多数シュート (3-7) の増殖があった。S-13の tukura 病感染葉は水分含量に有為な違いがなかった。葉緑体色素の著しい増加が全ての tukura 病桑葉で観察された。tukura 病感染葉中の全可溶性タンパク質はMR-2を除く全ての桑系統で減少した。糖分含量の有為な変化は全く tukura 病感染葉では観察されなかった。増加した全スクロース含量はS-13, M-5と一ノ瀬で記録された。しかし, デンプン含量はS-13, M-5, 一ノ瀬と Gosoerami では51-66%と劇的に減少し, そしてその減少はMR-2, Kosen, BC2-59とTr-4では13-21%とより少なかった。全ての系統の tukura 病感染葉では総アミノ酸量が減少した。MR-2とTr-4を除いた他の全ての tukura 病感染葉では総フェノール量がより高かった。tukura 病感染葉の餉食はカイコ飼育と繭生産に影響しなかった。それは tukura 病感染葉の水分, 葉緑体色素, 栄養と全てのモリン因子の保持によるものであろう。病徴と病害感染を基にしたところ, tukura 病感染に対して Kosen>BC2-59>MR-2>S-13の順位で比較上抵抗性であろうと考えられる。
  • 小林 公幸
    1994 年 63 巻 3 号 p. 189-193
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭糸質の低下が問題となる高温多湿な蔟中保護環境における水分気化状態について明らかにするため, 高温多湿条件下で, 熟蚕を常時気流のある実験装置内で営繭させ, そこからの除去水分量を経時的に測定した。結果に基づいて除去水分量と温湿度条件との関係について解析した。
    1. 除去水分量の経時的変動は絶対湿度条件と最も密接な関係にあった。重回帰分析によって解析した結果, 除去水分量は絶対湿度と飽差条件とによって左右されるものと判断された。
    2. 高温多湿な保護環境においては, 繭層の吸湿性が高まり, 水分気化を促進するためには大きな飽差条件が必要となる。このことが繭糸質の向上を最も困難にしている問題点であると考察された。
  • 間瀬 啓介, 山本 俊雄, 原 和二郎
    1994 年 63 巻 3 号 p. 194-200
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    カイコ (Bombyx mori) の胚の形態形成に関与するホメオティック遺伝子の発現を解析するため, ホールマウント法による in situ ハイブリダイゼーションを試みた。カイコのアンテナペディア遺伝子 (BmAntp約2Kb) のcDNAクローンの5′上流域からホメオボックスを含む領域までを3つに分け (540bp, 280bp, 280bp), それぞれをpGEM3Zf (+) にサブクローニングした。これらの3つのサブクローンからジゴキシゲニンで標識したリボプローブを作出し, ステージ17 (腹肢突起発現期) からステージ22 (反転期) までの胚の in situ ハイブリダイゼーションを行った。その結果, センスRNAをプローブに使った場合ではシグナルは全く検出されなかったが, 逆方向のアンチセンスRNAを用いた場合では, 胸部第一体節で最も強く, 続いて第二, 第三体節の順で特異的なシグナルが見られた。また, 腹部第一から第七あるいは第八体節にわたって非常に弱いシグナルが検出できた。さらにステージ20 (頭胸分化期) 以降では, 胸肢ばかりではなく腹肢や気門, 中枢神経系において強いシグナルが見られた。3種のサブクローンのいずれにおいても, クローンの違いによる発現部位の差異は認められなかったが, ホメオボックスを含むクローンでは5′上流域を含むクローンに比べて全体的にシグナルが弱かった。以上のことから, カイコのアンテナペディア型遺伝子は腹部においてもわずかながら発現されるものの, 本質的には胸部の形態形成に関与する遺伝子であると考えられた。
  • 桑の内生生長物質に関する研究XI
    柳沢 幸男, 塩入 秀成, 笠置 誉男, 小林 徹也, 堰 公二, 工藤 鉄也
    1994 年 63 巻 3 号 p. 201-205
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    水耕栽培の桑実生苗を用いて, 新梢伐採時に残葉と残条処理を行い, その後の再生長と根のサイトカイニン含量との関係を検討した。その結果, 再生長は伐採後7日目まで伐採区≧摘葉区>残葉区, 10日目には摘葉区>残葉区>伐採区, その後残葉区>摘葉区>伐採区の順に促進された。
    伐採各処理区の主・側根のゼアチン (Z) 含量は対照区のそれより多くなった。Z含量の変化は伐採区と摘葉区が類似の推移を示し, 残葉区のそれは対照区に近い傾向を示した。各処理区のゼアチンリボシド (ZR) 含量はZ含量とは反対に対照区のそれより少なくなり, また摘葉・伐採両区のZR含量が少なく, 残葉区のそれが多くなる傾向を示した。側根における各処理区間のZR含量の差は主根のそれより小さくなった。各処理区のイソペンテニルアデノシン (IPA) 含量はZとZRと異なり側根が主根より多くなった。各処理区のIPA含量は対照区のそれより少ないこと, またその変化はZRと同様の傾向を示した。各処理区のイソペンテニルアデニン (2iP) 含量は極僅かであった。
  • 平山 力
    1994 年 63 巻 3 号 p. 206-213
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    桑葉粉末を無添加あるいは25%添加し, 蛋白質含量をそれぞれ20, 25, 30%とした6種類の人工飼料を用いて家蚕5齢幼虫を飼育し, 窒素の異化代謝及び利用に及ぼす桑葉粉末の影響について検討した。蚕糞中に排泄された窒素異化代謝物の量は飼料中の蛋白質含量が高いほど多かったが, 桑葉粉末添加の有無で比較すると, 尿酸排泄量のみに大きな差異が認められ, 桑葉粉末を添加した場合に著しく低かった。5齢期間における窒素の食下量や消化率は飼料間で大きな差異がなかった。摂取された窒素の分配, 利用をみると飼料中の蛋白質含量が高くなるほど異化代謝によって排泄される窒素の割合が高く, 繭層に移行する割合が低かった。桑葉粉末添加の有無で比較した場合, 桑葉粉末を飼料に添加したほうが繭層への転換効率が高く, 蛋白質含量の高い飼料ほどその差が顕著であった。
  • 絹繊維の劣化に関する研究 第一報
    藤井 明, 錦織 禎徳
    1994 年 63 巻 3 号 p. 214-220
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    界面活性剤の付着した絹羽二重を10日~100日間日光暴露し, 暴露した試料の表面色の変化および強度的劣化について調べた。用いた界面活性剤はマルセル石鹸 (MAS), ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム (ABS), およびドデシル硫酸ナトリウム (SDS) であった。
    付着した界面活性剤の種類によって, 口光暴露による絹の変色の程度に差が生じ, とくにMAS付着試料は短時間で大きく変色して, いわゆる石鹸焼けの現象を示す。しかし, 日光暴露したMAS付着試料は, 強伸度特性, 耐折強度の低下が無付着等の他の試料よりも小さいことがわかった。このことは, MAS付着試料の日光暴露による黄変は, 強度的劣化と直接には関係せず, むしろMASを付着させると劣化を抑制することを示している。またABSは絹の黄変を抑制するが, 強度的劣化を抑制する効果は認められなかった。
  • 加藤 靖夫, 中村 照子, 武内 民男
    1994 年 63 巻 3 号 p. 221-228
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    幼若ホルモン類縁体 (JHA) 投与区では対照区に比べカイコの5齢における発育経過が延長し, それに伴い熟蚕時における体液性レクチンの活性低下も遅延することが認められた。このことは, カイコレクチンがホルモンの消長に影響を受けており, ホルモン投与の影響によるカイコの発育の促進・遅延に関わらず, レクチンの活性は常に吐糸期において最大になることを示すものと考えられる。また, JHA処理蚕においては発育経過の延長につれてレクチンタンパク質中のシアル酸の遊離化が対照蚕に比べ遅延することから, レクチンの凝集活性とシアル酸とは密接な関係があり, この時期においてレクチンタンパク質のシアル酸特に糖鎖末端シアル酸の除去により活性発現がなされるものと推察した。
  • 赤羽 恒子, 坪内 紘三
    1994 年 63 巻 3 号 p. 229-234
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    繭解じょについて営繭中の繭層含水率の面から以下のように検討した。家蚕の熟蚕を25℃に制御された風速60cm/secの室内で営繭させた。営繭中の繭層含水率を変えるため営繭室内の相対湿度を変えた場合およびその室内に紙製の穴開き箱を置きその中で営繭させた場合等の繭について繭層含水率と解じょ率の検討を行なった。その結果, 繭解じょ率は営繭時の繭層含水率に明確に依存し, 繭解じよ率が70%程度以上の繭を得るためには営繭時の繭層含水率は20%程度以下にすべきであること等が分かった。
  • 島田 順, 黄色 俊一, 村上 昭雄
    1994 年 63 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
    クワコヤドリバエ (E. sorbillans) のカイコ幼虫への産卵性に関して, 8種類の幼虫斑紋突然変異系統を用いて分析した。カイコ幼虫斑紋の標準野生型としてのp3(+p) を基準に, 各突然変異系統, すなわちp, pB, pM, pS, pSa, UおよびZe系統を実験対象とした。
    p3系統に比較して著しく体色が暗調なpB, pM, pS系統, および白色無斑紋のp系統はE. sorbillans の産卵を受けにくく, 他方pSa系統は顕著に産卵を受け易い傾向を示した。なお, pMpSa斑紋は類似するが, 背景の体色にかなりの相違が認められた。いずれにせよ, E. sorbillans はクワコに似た斑紋のカイコ幼虫に本能的な選択性を示すことが示唆された。
    カイコ幼虫斑紋並びに体色の色調と E. sorbillans の感染寄生性について検討した。アラタ体摘出によって斑紋・体色が黒色化したpSa幼虫の被寄生性は無摘出区に比して低下したが, Methoprene 処理によって斑紋・体色を淡色化させたpB, pM, pS, pSa, およびU幼虫の被寄生性には無処理幼虫との間に差が認められなかった。
  • 島根 孝典, 宮崎 昌久, 林 長閑
    1994 年 63 巻 3 号 p. 240-243
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
  • 劉 冠峰, 須 亜平, 小西 孝, 坂部 寛
    1994 年 63 巻 3 号 p. 244-247
    発行日: 1994/06/27
    公開日: 2010/07/01
    ジャーナル フリー
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