近年の蚕糸絹業の著しい縮小傾向下において, 中核的担い手と称しうる養蚕最上層農家群がいかなる部門結合を選択し, 養蚕の生産性をどのように発揮しているか, 及びその背景を, 聞き取り調査を中心に考察した。最近年の収繭量の推移から増大, 現状維持, 縮小の3タイプに区分したが, 分析対象を現状維持, 縮小型にしぼった。考察の結果, 多角化指数の数値からは, より複合的性格を強める傾向にあること。次に生産性に関しては, 現状維持型の場合, 単収を相対的に高位維持する農家と, それ以外に大別できた。前者の背景として, 基幹的従事者としての経営主の存在, 及び桑園土作りの充実であり, 後者の背景として, 高齢化による労働力条件の悪化と冬期間の桑園土作りの粗放化等である。また減少型の場合には, 生産性の面で, 単収の高低差がみられるが, いずれも低落傾向を有している。その背景として, 経営主の高齢化及び冬期間の桑園管理の手抜き等を指摘できる。
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