乱れた流れの場の運動は, 通常の流体力学の方程式に従うと仮定することができる. しかし, そのような運動を正確に記述することは無理なので, 平均量だけを議論しなければならなくなる. すると, 統計的処理のために, 乱れた場を多数集めた, いわゆるアンサンブルを考え, そのアンサンブルが作る空間 (相空間と呼ぶ) の中での確率分布を取扱うことが必要である. Nコの粒子の集合では, 相空間は, 位置と運動量を合せて6N次元であり, 確率分布関数は6N変数の関数であった. ところが, 乱流の統計的処理では, 流速分布v(x)を一つ与えるとその確率の値が一つ決まる. 関数v(x)を数値に対応させる関係を汎関数と呼ぶ. 流体の運動方程式としてナヴィエ・ストークス方程式を採用すると, この汎関数の時間的変化を記述する方程式が得られる. これにある種のフーリエ変換をほどこしたものがホップ方程式である. この方程式にいたる歴史的経緯, それから導かれる結果と将来の展望をのべる.
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