高温超伝導の研究は, 現在停留点にあるといわれている. 原因の一つは, 銅酸化物超伝導体系では電子相関が強く, フェルミ準位付近の電子状態がよく分からないため, モデルに依存していることにあろう. この状況を脱却するために, 強い電子相関の効果を考慮してクラスター計算が活発に行われるようになった. 最近筆者グループでは, 非経験的な第一原理の変分計算で, La-Sr-Cu-O系中のCuO
6クラスターとNd-Ce-Cu-O系中のCuO
4クラスターの基底状態を求める計算を行い, 両系の温度と濃度に関する相図の起源を探究するとともに, この計算結果に基づいてLa-Sr-Cu-O系の多電子状態を導いて, この系の常伝導相で観測された諸物性の振舞を説明することができた. クラスター近似の電子状態を出発点にしているという問題点はあるが, 多くの常伝導相の物性を統一的に説明できたこの時点で, これらの結果について本稿で紹介する.
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