泌乳最盛期(平均分娩後日数37日)のホルスタイン種泌乳牛12頭を供試して, 牧草サイレージの品質の差異が泌乳最盛期の乳量, 乳成分に及ぼす影響を検討し, その経済性を比較した。すなわち, チモシー単播草地(単播区)およびアカクローバ率30%のチモシー混播草地(混播区)から調製した予乾サイレージを粗飼料源として飽食させ, TDNおよび粗タンパク質(CP)要求量の不足分を濃厚飼料で補充し, 1期3週間の反転法で泌乳試験を行い, 飼料摂取量, 乳量, 乳成分を調査した。さらに, 牧草サイレージの生産費および濃厚飼料の購入費から, 牛乳生産に対する飼料費を試算した。その結果, 単播区, 混播区サイレージの水分含量は,それぞれ, 27.1, 22.5%で, 両区とも良好な発酵品質であった。CP含量は, 混播区は単播区に比べ高く(13.2 vs 8.7%), 繊維含量は低かった (NDF:69.6 vs 54.1%, ADF:43.1 vs 36.5%)。サイレージのTDN含量は, ヒツジを用いた消化試験より, 混播区が63.8%で, 単播区が58.6%であった。乳牛のサイレージ摂取量は混播区(11.7kg/日)が単播区(9.1kg/日)より有意に高かったが, 全飼料摂取量に差は認められなかった。実乳量, 4%FCM量および乳タンパク質量は混播区が単播区に比べ, 有意に高かった。乳脂肪, 乳タンパク質率には両区間に差は認められなかった。サイレージの生産費は混播区が17.2円/kgで, 単播区より5円安く, 1日1頭あたり飼料費は, 混播区は846円で, 単播区の996円より150円安く, 4%FCM1kgあたりの飼料費は単播区29円, 混播区24円と試算された。
抄録全体を表示