帯広でみられるオオイタドリおよびヨシ,ササの草地生態系におくる落葉の生産について,有機物・有機炭素・エネルギーの分解と蓄積の過程を理論的に究明してみた。まず,平衡状態にある自然草地では,年間生産量はきわめて大きいものであり,ササの群落では,落葉の生産量は平均128.73g/m^2であり,有機物は103.47g/m^2,有機炭素は162.81g/m^2,エネルギーが479.38kcal/m^2となっている。これに対して,ヨシ群落は,落葉の年生産量が594.47g/m^2であり,オオイタドリの615.66g/m^2より21.19g/m^2少なくなっている。このため,落葉における年生産量では,ササが最も少なく,ついでヨシ,オオイタドリの順となった。その他の有機物,有機炭素およびエネルギーについてはつぎのとおりである。[Table]さらに,群落内に積っている前年の落葉総量を分析して,分解恒数を測定した結果,オオイタドリでは0.461,ヨシが0.376,ササでは0.146となった。この結果,オオイタドリ,ヨシ,ササそれぞれの群落では,落葉量の50%が分解するには,オオイタドリがおおよそ1.5年,ヨシが1.8年,ササが4.7年かかることがわかった。また,95%分解するにはオオイタドリが6.5年,ヨシが7.9年,ササが20.5年要することも推定される。したがって,平衡状態になるにも最低以上の時間が必要となるわけである。
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