1.1967年7月10日,黒毛和種めす2頭に,1頭あたり牧草種子1,150gを濃厚飼料1kgと混ぜて給与した。牧草種子の内訳けは,トールフェスキュ,ペレニアルライグラス,ダリスグラス,ローズグラス各200g,ブルーパニック150g,アルファルファ,アカクローバ各100gであった。うち1頭にかなりの残食がみられた。その後3日半にわたり,毎日午前9時と午後5時の2回,採糞秤量し,それからサンプルした糞の一部につき,含有種子数を数え,また雑草地に移置して6週間にわたる糞面出芽調査をした。移置に際して,自然のままの糞形区と蹄圧を擬しての扁圧形区とを設けた。2.採食された種子の糞中回収は採食後1日目前半にごく僅かながらみられ,2日目に総回収量の60%余というピーグが現われ,その後急減して4日目前半では3%の排出に止まった。草種別の回収率はブルーパニックの49%を最高に,以下ダリスグラス,ペレニアルライグラス+トールフェスキュが10%以上であるが,ローズグラス,アルファルファ,アカクローバは共に低く1%以下にすぎなかった。3.雑草地に置かれた糞からの出芽は,採食後の排糞日数でみると,全出芽数の21%が1日目の排糞から,62%が2日目分から,16%が3日目分から出現し,4日目の糞からの出芽は極めて少なく0%に近かった。移置後の経日的推移をみると,1週目から僅かながら出芽があり,次第に増加して4週目に最高に達し,その後減少を続けたが,6週目にもなお全出芽数の8%が出芽したことから,出芽期間は長期にわたるようであり,主として硬実や休眠種子からの遅延発芽によるものと思われる。さらに草種間でみると,採食種子10,000粒についての出芽数は,種子発芽率を90%に揃えると,ブルーパニックの約800,ペレニアルライグラスの約300,ダリスグラスの約140が多く,他の草種はいずれも100以下で,とくにトールフェスキュは0に近かった。4.草種間の出芽の多少は,採食種子の糞中回収率の高低に大きく支配され,回収された種子の糞面出芽の多少にはあまり影響されなかった。排糞播種効果の高いのはブルーパニック,ペレニアルライグラス,ダリスグラスの3種であるとみられる。
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