札幌(北緯43度)および友部(北緯36度22分)において,アカククローバ数品種を用いてその生育型発現および開花の状況を調査し,それに基づく若干の知見を得たが,それを要約すると次のとおりである。1.札幌においては,3月15日〜5月15日播種の場合,その生育型発現はほぼ類似していた。このことは花成刺戟誘起のためには積算日長は関係なく,限界日長が影響していることを示している。2.札幌における6月1日〜15日播種の場合には,早生種における茎伸長は中間的であり,生育型は0〜IV型にわたって幅の広い分布を示し,また7月15日播種の場合には早生種においても全く茎伸長はみられなかった。これらのことは日長に感応して花成刺戟を誘起するに必要な草令が存在することを示唆している。3.友部における本試験の供試品種の平均開花日は,札幌におけるそれに比べて,同じ4月15日播種の場合で15〜20日早く,また友部の4月15日播種は札幌の6月1日播種と生育型発現で類似性を示すが,その平均開花日は30〜40日早い。このことと両地における日長の状況から,供試品種のような早生種に対する花成刺戟誘起のために日長に感応する有効かつ必要な草令は札幌においては播種後約60日,また友部においてはそれより若干短かく,播種後約45日程度であろうと推定された。4.アカクローバ品種の採種のためには,該当場所の日長条件と花成刺戟誘起のために必要な有効草令を考慮して決めることが形質の変化,とくに早生化ならびにそれに伴う諸形質の変化を避ける意味から望ましい。たとえば北海道およびカナダにおいて育成され,比較的北方地域に適応する本試験の供試品種の場合には,最大可照時間15時間の場所(ほぼ北緯40度)より北で,しかもその15時間を示す最終月日からさかのぼって60日またはそれ以前に播種すべきであろう。このことはまた品種の特性検定に当たっても考慮すべきことと思われる。5.品種等の特性検定,とくに緯度を異にする若干の場所におけるその検定のためには,開花よりも生育型を標識にするほうがより容易であり,かつより合理的であると思われる。
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