飼料作物の高位生産に関する試験研究の一環として,オーチャードグラスの品種をとりあげ,ラジノクローバとの混播条件下で施肥量,刈取り回数を変えて試験を行なったものである。供試品種は早生から3品種(那系1号,鳥取野生,北海道在来),中生種から3品種(アオナミ,S-143,Frode)晩生種から3品種(Latar,那系6号,Pennlate)の計9品種である。2ヵ年間の結果を概括すると以下のとおりである。1.2ヵ年間の生草収量は多肥7回刈り区で2,340kg/a(9品種の平均),標肥7回刈り区で2,150kg,多肥5回刈り区で2,160kgおよび標肥5回刈り区で2,070kgを示し,所期の目的である高位生産を達成した。風乾収量については多肥7回刈り区270kg/a,標肥7回刈り区253kg,多肥5回刈り区273kg,および標肥5回刈り区255kgであった。2.2ヵ年間の風乾収量について分散分析を行なった結果,肥料および品種に有意差が認められたが,刈取り回数,ブロック,1次および2次の交互作用には有意差がなかった。3.草型の差異と収量性については,早生および中生に属する採草型の品種群は多収であったが,晩生の品種は収量が低い。収量分布についても早生品種は1番草の収量が高く,しかも夏から秋の収量が高い特徴をもっている。4.ラジノクローバに対して競合能力をもつ品種が多収性を示し,採草型の品種と一致する。晩生で葉幅が狭く,中肋高の発達が劣り,匍匐型を示した品種群はラジノクローバに対抗できず草地がラジノ化した。5.オーチャードグラスの混在比率の高い品種は草地の生産力が高い。高位生産草地の問題はいかにして,オーチャードグラスを保護助長するかにかかっていると結論できる。6.多収性を示した品種を列挙すれば,鳥取野生,那系1号,Frodeがよく,これにういでアオナミをあげることができる。北海道在来は5回刈りの場合にかぎって収量が高い。Latarは利用年数がふえるにしたがって株形成が進み,比較的収量が高いが晩生で,かつ秋の生長が不良であるので,高位生産向き品種とは考えられなかった。晩生で草丈の低いPemnlate,那系6号,およびS-143は低収を示した。本試験の実施にあたり,供試品種の選定ならびに品種材料の収集に対して,指導と協力を賜わった草地部,宝示戸貞雄技官,北連の赤城望也氏に謹んで感謝の意を表する。
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