埋蔵時の空気混入率の差異にもとづくサイレージの品質差が,空気自体の直接的影響によるのか,あるいは単に埋蔵時の踏圧の強弱にもとづく汁液の浸出量の多少と関連する,いわば間接的影響によるのかを明らかにする目的で本試験を行なった。高水分で水溶性炭水化物含量の異なる2種のイタリアンライグラス生草および予乾草を用い,それぞれについて,細切後埋蔵時の空気混入率を(小)(41.6%),(中)(56.2%),(大)(70.8%)の3段階に調節して埋蔵密封する区(対照区),細切後さらに圧砕したのち同様の空気混入率で埋蔵密封する区(区砕区),対照区のおのおのを排気し,窒素で置換する区(窒素置換区),および圧砕区のおのおのを排気し,窒素で置換する区(圧砕窒素置換区)の4区を設け,約15℃の室内で35日間貯蔵した。サイレージの乳酸含量は,空気混入率(小)の場合を100とした指数で示すと,3材料の平均で,対照区空気混入率(小):(中):(大)=100:94:79,圧砕区100:99:88,窒素置換区100:95:90,圧砕窒素置換区100:98:93となり,対照区における差は,圧砕,窒素置換のいずれによっても小さくなり,両処理併用で最も小さくなった。また処理による乳酸含量の増減を,対照区を100とした指数で示すと,3材料の平均で,空気混入率(小)で対照:圧砕:窒素置換:圧砕窒素置換=100:101:95:99,(中)で100=107:96:104,(大)で100:112:109:118となり,圧砕ではいずれの空気混入率でも乳酸含量が増加したが,その程度は空気混入率(大)>(中)>(小)の順であり,窒素置換では空気混入率(小)および(中)では減少し,(大)でのみ増加した。この結果から,埋蔵時の空気混入率の影響には,空気自体の直接的影響と,踏圧の強弱による汁液の浸出程度にかかわるいわば間接的影響とのいずれもが関与しており,前者は空気混入率が大きすぎても,また小さすぎても,いずれも乳酸生成が抑制される傾向があるが,後者は空気混入率が小さいほど乳酸の生成が増加するものであり,空気混入率の影響は両者の相互作用の結果として表われるものと考えられた。
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