ソルガムを冬季に立毛貯蔵した場合,その飼料性におよぼす品種と立毛期間の影響について検討した。供試品種は,Sorghum bicolor Moench × Sorghum sudanese Stapf., "SSIV"(スイート),"C 7149 P"(グリーン),"P 988"(パイオニア)の3品種,Sorghum bicolor Moench, "FS 401 R"(雪印ハイブリッド),"P 931"(モウソウ),"P 956"(ハイカロ)の3品種,計6品種とした。1983年7月25日に播種して,10月23日から1984年1月17日までの計8回,個体乾物重量,器官別の構成割合と含水率,嗜好性,飼料成分,人工乾物消化率(IVDMD)を調査した。"SSIV","C 7149 P","P 988","P 956"は調査開始時に完熟期に,"FS 401 R"は開花期に,"P 931"は出穂期に達し,いずれも良好な生育を示した(7月25日〜11月20日の有効積算温度1349.2℃)。10月23日から11月20日までの間に,登熟後の品種も含めて全品種で,可溶性糖類の蓄積が進み,平均可溶性糖含有率が5.9%から13.9%に増加した。この間,IVDMDもわずかに高まった。その後,立毛期間中,それら可溶性糖類,細胞膜構成成分含有率やIVDMDに変化はなく,良好に維持された。しかし,粗蛋白質と粗脂肪含有率が,葉部の欠損等によって,わずかながら減少した。また,穀実の多いSSIV"(穀実割合27.6%),"C 7149 P"(20.8%),"P 988"(25.5%),"P 956"(44.1%)では,鳥害や脱粒のために穀実の損失が大きく,その結果,個体当りの乾物重量が平均35.5%も低下した。これらの品種では,立毛中の嗜好性の低下も著かった。一方,"FS 401 R"は,他の品種に比べて,収量性,可溶性糖含有率,IVDMD,嗜好性に優れ,同時に,未登熟で立毛貯蔵に入ったことでそれら有利な特性が立毛期間を通じて損なわれず,保たれていた。以上の結果,遅播きして立毛貯蔵したソルガムは,反すう家畜の有用な飼料源になりうると考えられる。とくに,"FS 401 R"は,その飼料性と利用期間の双方から,立毛用の品種として有用であると考えられる。また,穀実が多くなるような品種を使用する際には,立毛期間を早めて利用するなどの考慮も必要となろう。
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