寒地における放牧草地の省力的利用技術を確立するため,ケンタッキーブルーグラス-シロクローバ混播草地に乳用種育成牛(放牧開始時平均体重231 kg)の連続放牧を行い,家畜生産性を16年間調査した。余剰草を軽減するため,草丈約5 cm時点で早期入牧し,施肥はスプリングフラッシュ後に一括施肥した。放牧開始時の平均放牧強度は1,107 kg/haとし,個体の日増体量が放牧期間で0.8 kg/頭/日以上となるように放牧頭数を減らす連続放牧とした。固定放牧日数とヘクタールあたり増体量は草量と,個体当たり日増体量は牧草のCP含量と正の相関関係が認められた。ヘクタール当たり増体量560-1,000 kg/ha,448-592 CD(体重500 kg換算)の家畜生産が得られた。
北海道のケンタッキーブルーグラス(KB)-シロクローバ(WC)混播草地における草種構成および地上部生産量の長期的変動とその要因を明らかにする目的で,乳用種育成牛を連続放牧し,土壌化学性,草種構成,日乾物生産量を16年間調査した。土壌中施肥成分含量を基準範囲内に維持することで,KBの年平均乾物重割合は39-65%,WCのそれは9-39%の範囲で維持された。年平均日乾物生産量は2.1-5.3 g DM/m2の範囲で変動し,5-10月の合計降水量とシロクローバ年間平均乾物割合が多いほど増加した。これまでの成果を踏まえ,北海道のKB-WC混播草地は省力的放牧利用条件において,長期間にわたり安定的な草種構成のもと一定程度の地上部生産量を有すると結論した。
ソルゴー型ソルガムに分類される晩生品種「ターザン」の道北・道東における生産性を評価し,その播種適期を明らかにした。さらに,有効積算温度から「ターザン」の栽培適地の推定を行った。乾物収量や収穫時乾物率からみた播種適期は5月上旬から6月上旬と考えられた。「ターザン」の乾物生産量は,地域間差・年次間差が生じたが,その要因は6-8月の14°Cを基準とする有効積算温度の違いにあると推察された。「ターザン」の収穫時の乾物率が25%,30%に達する有効積算温度を有効温度12°Cで設定すると,それぞれ652°C,705°Cであった。算出した有効積算温度で作成した暦日マップから,収穫時の乾物率は道北の上川平坦部で30%に,道東の十勝中部で25%となることが可能であるため,これらの地域は,栽培適地となり得ると示された。