フォッサマグナ西縁の糸魚川~静岡構造線(糸静線)に沿った長野県冨士見地域・山梨県白州地域の活断層の調査を行ない,新期断層変位地形を記載し,糸静線中部における第四紀後期の活動を考察した.その結果,富士見地:域(北部)と白州地域(南部)では,同じ糸静線活断層系に属しながら,断層変位様式がまったく異なることが明らかになった.
活断層は,西方の釜無山地・巨摩山地の走向と平行な北西~南東・北北西~南南東方向の走向を持つ.活断層は,位置・変位の方向・変位地形の形態的特徴から, Aタイプ:山麓線や糸静線に沿い西上りのもの,Bタイプ:逆向き(東上り)で断層線の形態が直線的なもの, Cタイプ:山麓線より数100m~数km東側に位置する西上りのもの,の3つに分類される. A・Cタイプは,地形面の擁曲や膨らみを伴うので逆断層,Bタイプは,変位地形が直線的に連続し,その横断面形が急傾斜なので,高角度の断層と考えられる.富士見地域には,A・Cタイプも分布するが, Bタイプが形成した逆向き断層崖と,その背後に続く小丘が顕著である.白州地域には, Bタイプはまったく分布せず,Aタイプが多い.
富士見地域北端の下蔦木において,1本の小河川が左横ずれするが,ほかでは河川の系統的屈曲のような左横ずれを示す地形は見られない.しかし,富士見地域には,Bタイプの断層と関連した杉の字雁行を示す小丘列が見られ,左横ずれを強く示唆する.富士見地域と白州地域北端の下蔦木の活断層は,中部日本の東西圧縮応力下で主圧縮軸と斜交する.このような条件のもとで,富士見地域の最北端ではA・Cタイプの断層が北に屈曲して収れんするため,A・Cタイプの断層での横ずれ変位が困難となる.その結果,地塊中,に歪が集中し,そこで左横ずれが発生し,Bタイプの断層によって形成された杉の字雁行の小丘列が現われる・J方,下蔦木より南方の白州地域の活断層は,東西方向の主圧縮応力軸とほぼ直交するため,Ru断応力が少なく,西上りの縦ずれ変位が顕著で,左横ずれは認められない.
抄録全体を表示