本研究は,動態的中心地モデルの理論化という課題に対するアプローチとして,明治前期から第二次世界大戦直後までの長野盆地の中心地システムの変容過程を明らかにすることを目的とした.中心地とそめ機能を抽出するために商業サービス業,行政機能,交通・流通機能,人口規模,工業を指標に設定した。これらの指標を用いて,相対的中心性指数流の算出,行政機関等の所在の得点化によって中心地の把握を行なった.また,明治前期から第二次世界大戦直後までの間に3つの復元時点を設定し,各時点における中心地の規模,機能,分布,補完領域の画定を行なった.これらをもとに中心地システムを復元した.その結果,長野,中野という複数の一次中心地をもつ中心地システムが,.大正期には,長野という優勢な一次中心地を頂点とするシステムに統合され,第二次世界大戦後までに,一次中心地長野への機能の集中に伴って,二次中心地以下の階層構造が不明瞭になっていくという,中心地システムの変容過程が明らかになった.
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