北海道南部の函館付近には後期更新世に噴出したと考えられる数枚のテフラ層が分布し,別個のテフラ層として銭亀沢火砕流堆積物・女那川火山灰という名称が与えられていた.本稿は従来明らかでなかったこれらのテフラの対比を行なうとともに給源火山,分布,層序を解明することを目的とした.
まず層序,岩石記載的性質を調べた結果,上記の名称をもつテフラは,同一の給源火山から降下軽石の噴出に始まり火砕流の噴出で終わる一連の噴火によって堆積したことがわかった.この一連のテフラを銭亀一女那川テフラ(Z-M)と呼ぶ.このテフラ層の岩石記載的性質は垂直方向に顕著な変化を示す.これは分帯構造をもつマグマ溜りが存在していたことを示唆し,かつテフラの同定に役立った.次にその給源火口は,降下軽石と火砕流堆積物の層厚・粒径分布をもとに,函館東方の津軽海峡浅海底にある火口状凹地と推定された.またZ-Mのうち降下テフラは亀田半島から日高,十勝まで分布することがわかった.Z-Mテフラの噴出年代は,既存の
14C年代やテフラと河成段丘堆積物の層位関係などから総合して, 3.3万年前と 4.5万年前との間と考えられる.
抄録全体を表示