地理学評論 Ser. A
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63 巻, 2 号
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  • 岡 義記
    1990 年 63 巻 2 号 p. 55-73
    発行日: 1990/02/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    W. M. Davisの地形学は今世紀の前半に全盛時代を迎え,その影響力は今日にも及ぶ.しかし,その影響力ゆえに今日ほどDavisが酷評を受けている時代はない.Davis地形学の中心的概念であった侵食輪廻に焦点をあて,その意義を考え,その歴史的展開と日本の地形学の対応を歴史的に考察した.
    その結果,侵食輪廻説に含まれる空想とその前提にいくつかの矛盾があったために,それを放棄しなければならない歴史をたどったことを指摘した.また,日本では,その影響を強く受けていたが,侵食輪廻説の根底にある仮定にまでさかのぼる徹底した議論がみられなかったために,それに基づく古典的削剥年代学は温存される結果となったことなどを指摘することができた.
  • 丸山 浩明
    1990 年 63 巻 2 号 p. 74-99
    発行日: 1990/02/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,多様な自然条件に特徴づけられる火山山麓において,高度差に伴って生じる自然環境の差異を,農家がどのように活用して生産力の高い商業的農業を維持しているかを,浅間火山北麓に位置する群馬県嬬恋村大笹の自立型キャベツ栽培農家の分析を通じて実証的に解明したものである.1930年代に本地域に導入された商業的な野菜栽培は,未開墾の国有原野の存在や1960年以降の国家の政策的保護などを背景に急速に進展し,耕境も時代とともに大きく上昇した、その結果,農家は標高940~1,447mの火山山麓に圃場を垂直的に何カ所にも分散所有しており,各圃場の耕作環境にあわせて労働力を時期的に効率よく分配できるよう,本圃での定植日や収穫日をずらしている.また,本圃における定植日の時期的なずれにあわせて苗が入手できるように,標高が異なる何カ所かの低暖地への出作育苗を行なっており,栽培品種,播種日,育苗方法などをかえている。このように,農家が自ら時期的に移動することにより,複数の生態ゾーンにまたがる多様な農業地域の自然環境を空間的に統合して活用する営農形態は,とりわけ1960年以降の経営規模の拡大に伴う機械化の進展や,モータリゼーションに伴う農家の行動範囲の拡大を背景に生みだされたものといえよう.
  • 大森 博雄, 柳町 治
    1990 年 63 巻 2 号 p. 100-118
    発行日: 1990/02/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    東北山地を対象に主要な6樹種,ハイマツ,オオシラビソ,コメツガ,ダケカンバ,ミヤマナラ,および,ブナの上限,下限の温度領域を求め,各樹種の示す現在の温度領域が過去の気温を推定するための適切な基準値であるかどうかについて検討した.各樹種の上限,下限の温度領域は温量指数年平均気温,冬季平均気温,夏季平均気温のいずれによっても代表させることができるが,これらの中で,標準偏差がもっとも小さいという点で,夏季平均気温が優れている。東北山地は“偽高山帯”のあることが一つの特徴であるが,オオシラビソ林が欠落した場合,ハイマツはオオシラビソ林の占めるべき温度領域全域にわたって置き換わることができる.しかし,ミヤマナラは独自の温度領域をもち,オオシラビソ林の占めるべき高度範囲の下半部においてのみ置き換わり得る、上記の検討と各樹種の温度領域に対する山頂現象の影響の強・弱の検討とから,ブナ,ミヤマナラの上限,下限,および,ダケカンバ,オオシラビソ,コメツガの下限の温度領域が古気温推定の基準値として適用し得ると判断された.
  • 1990 年 63 巻 2 号 p. 119-123,126
    発行日: 1990/02/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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