1946-1985年の冬季 (12, 1, 2月)のユーラシア大陸上における半旬平均500mb面高度偏差に主成分分析を施すことにより,第1成分 (E1)より南北振動型 (ユーラシア大陸上の高緯度で正,中緯度で負),第2成分 (E2)よりいわゆるEUパターンと呼ばれる波列型 (ヨーロッパ付近で正,シベリアで負,日本付近で正)のテレコネクションパターンが得られた.そのE1,E2の成分スコアの符号と絶対値を考慮して, 4っの型 (E1
+,E1
-,E2
+,E2
-)の天候レジームを抽出した.
各型の天候レジームごとに,定常波とトランジェント波のふるまいを調べた.その結果,E2
+,E2
-では,ヨーロッパから日本付近へ至るような大きな定常波アクティビティの東方伝播が見られたのに対し,E1
+,E1
-では,ユーラシア大陸上における顕著な定常波アクティビティの伝播は見られなかった.またトランジェント波は,いずれのレジームも維持するように働いていることがわかった.
コンポジット解析等により,異なった天候レジーム間の遷移過程を調べた.その結果,E2
+,E2
-の出現に先行して,North Atlantic Oscillation (NAO)パターンが現われていることがわかった.しかし,NAOパターンが出現したからといって必ずE2
+,E2
-への連鎖が起こるわけではなく,その連鎖が起こるかどうかは,NAOパターンが出現した時のユーラシア大陸上における天候レジーム型に大きく依存していた.また,E2
+,E2
-の消滅のトリガーとしても,NAOパターンは重要な役割を果たしていることも明らかになった.
抄録全体を表示