地理学評論 Ser. A
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71 巻, 7 号
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  • 米家 泰作
    1998 年 71 巻 7 号 p. 481-504
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    近世日本の山村は,幕藩体制に対して,山村の特質を踏まえた独自の論理を主張することがあった.その一例として,民俗学・文化地理学が指摘したような「自立的」な中世山村像を嘆願の論理として活用した近世大和国吉野川上流域の事例を検討する.18世紀の当該地域では,中世期に自立的な政治体制があったことを措定し,その「由緒」を主張することによって「諸役免許」特権の「回復」を嘆願する動きが見られた.嘆願活動はたびたび繰り返されたものの,結果としては失敗に終わった.しかし,村落結合を通じて,「諸役免許」が吉野郡という「郡の由緒」であり,それが中世に由来するものとする論理が,共有化されることになった.この論理を支える中世期の地域像は, 18~19世紀に盛んに作成・筆写された由緒書・旧記に,より詳しく描かれていく.そこでは金峰山寺・南朝と吉野郡との関わりが主題となりながらも,かつて金峰山寺領であった事実は記されていない.むしろ,無税にして武力を誇る政治体制が強調され,それが「由緒」としての「諸役免許」を説明する文脈となっていた.
  • 平野 勇二郎
    1998 年 71 巻 7 号 p. 505-514_2
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    GISなどの地理情報技術を用い,丹沢山塊の桧洞丸山頂付近におけるブナ林の衰退を空間的に把握し,その地形条件について検討した.まず,地形の凹凸による空中写真の歪みを細密DEMを用いて補正した.次に,空中写真の判読によりブナ林衰退の状況を把握し,GPSを用いた現地調査により,判読精度の検証と枯死木の樹種の確認を行った.さらにGISを用いた定量的評価と視覚的表現により,ブナ林衰退の状況と地形条件との関係を明確にした.ブナ林衰退は,山頂付近を中心として尾根沿いに分布し,標高の高い場所のみで生じており,緩傾斜地に比較的多く,南斜面に集中している.こうした地理情報技術の活用は非常に有効である.
  • 香川 貴志, 山下 博樹
    1998 年 71 巻 7 号 p. 515-526
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    北米のダウンタウンと郊外との中間地域において,古くから住宅地内に存在する在来型商業地は,これまで衰退傾向にあると理解されてきた.本研究では,衰退を免れた在来型商業地の例としてバンクーバー市のウェストブロードウェイを取り上げ,その店舗構成とフロア別用途利用を明らかにした上で,商業地の存続がいかなる環境によってもたらされているのかを検討した.その結果,周辺に分布する中上級の住宅地の存在,駐車スペースの確保,エスニック系店舗の存在,ショッピングセンターにはない個性的な店舗構成,若者に支持されやすい商業地の位置と空間構成,大型スーパと中小零細店舗の共存,以上の6種の環境がウェストブロードウェイの存続基盤になっていることが分かった.
  • 漆原 和子, 吉野 徳康, 上原 浩
    1998 年 71 巻 7 号 p. 527-536
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
    福島県あぶくま洞内の小気候調査から,入洞者の影響により生じるCO2濃度の変化について考察した.観測は1995年夏季と秋季の2回実施し,気温・CO2濃度・風速の測定を移動観測と定点観測によって行った.その結果,閉鎖的な上部洞を中心に高温域とCO2濃度の高濃度域が形成されており,その持続時間は長かった.一方,下部洞では,夏季に洞窟内大気の流出,秋季に外気の流入が生じている.それは,洞窟内外の気温差が季節や日変化によって生じるためである.また,上部洞の三山の樹林では,夏季・秋季とも累積入洞者数とCO2濃度との関係に高い相関があり,得られた関係式から,約1500人で鍾流乳石の再溶食が生じるとされる2400ppmに達し,約4800人で人体に有害とされる5000ppmに達することが分かった.
  • 1998 年 71 巻 7 号 p. 554-558
    発行日: 1998/07/01
    公開日: 2008/12/25
    ジャーナル フリー
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