日高山脈北部に分布する周氷河性斜面堆積物は,各基盤岩質別に特徴的な粒度組成,礫径,礫の形態を示す.これらの岩質別の特徴は,Ta-d降下期(約9,000y. B. P.)以降の斜面物質移動に差異をもたらした.
花崗岩地域の斜面堆積物は大型の礫から構成され,マトリックスも凍上性が低い.そのためTa-d降下以降、顕著な物質移動が生じなかった.それに対して,ホルンフェルス,頁岩地域の斜面堆積物は構成礫が小型であり,マトリックスも凍上性が高いため,Ta-d降下以降より遅くまで周氷河性ソリフラクションによる物質移動が継続したと推定される.しかしTa-d降下以降斜面物質の移動速度の増加,もしくは非周氷河性の営力がこれら岩質域の斜面上で,多少関与した可能性がファブリック・ストレングスの経時変化より推定される.
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