本研究は,韓国の地方.市郊外地域の日本統治時代における空間的変容を,土地利用や土地所有状況の観点から分析した.地籍資料に加えて聞き取りを活用した分析の結果は,以下のように要約される.変化の大部分は,川沿いの低地や山沿いの緩斜面に展開した田畑に限定された.近隣居住の韓国人個人の所有が多かった農地は, 1920年代中頃にはインフラ用地として一部が朝鮮総督府所有などに,1930年代末からは都市部居住の韓国人個人所有の宅地に転換された.後者の時期に日本人地主は,郊外地域にまで居住しっっ農地や一部の山林をも所有するに至った.一方で,山林の中でもとくに稜線上は,一部「国有」林の払い下げのほかは,ほぼ特定氏族の墳墓を抱いた山林として顕著に残され,現在までも細長く農地や宅地を取り囲む景観を維持している.この稜線部に対する新規地主の土地獲得は,当時からの住民に対しより強い衝撃を与えており,特別な意識の存在が指摘された.
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